朱夏の日光に栄える森

琴里 美海

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第四話

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 最初の方は唯其の方向を見詰める人達だけだったけど、その場所へ近付くにつれ、逃げる人達が多くなった。
 人の流れに逆らい、時折建物の屋根の上に乗ったりしつつ、やっと辿り着いたその場所は、それは悲惨な光景だった。
 あちこちで黒い炎が燃えている。それでいてその炎は確かに人を燃やしている。だって、火はあちこちに移動しながら、苦しみの声をずっと発しているんだから。

「熱い!!!熱い!!!」
「助けて!!!お願い助けて!!!」

 これが世に言う地獄絵図に当て嵌まるんだろうか。
 そんな事を考えていたら瑞光を見付けた。先程までとは全く違う、恍惚な笑顔を浮かべながら人々に手を向けている。そんな瑞光の横には、随分と驚いた顔をして腰を抜かしている、みすぼらしい見た目の男性がいた。

「瑞光!!!」

 私は瑞光の前へ飛び降りて、彼の手を掴んだ。

「何をやっているんだ!!!」
「何って、見ての通りの殺しだ。こいつが願ったからな。」

 そう言って瑞光は隣にいる男性を見た。
 私は瑞光から手を離すと、その男性の前にしゃがんだ。

「君、一体何を願った。いや違うね、如何して殺しなんて願った。」

 問い掛けても男性は、唯目の前の光景が理解出来ていない様子で、そもそも私の声が届いていない。
 仕方が無いから、この男性の願いを瑞光から聞く事にした。

「瑞光、彼は一体如何言う理由で、殺しを願ったの。」

 瑞光はケラケラと笑って言った。

「面白いぜ?金持ちが憎かったんだって!!自分はこうなのに、何であいつ等は金持ちなんだって!!」
「それは、随分と身勝手だね。」

 少々苛立ちながら男性を見ると、男性はおぼつかない足取りで立ち上がると、瑞光の前で膝を突き、畏怖の念を抱いた瞳で瑞光を見た。

「お前、一体何者なんだ?」
「さぁ、好きな様に見てくれよ。」

 瑞光はそれだけ言うと、足下から突然黒い炎が吹き出し、瑞光は炎に包まれた。
 少しして炎が消えると、もう其処に瑞光の姿は無かった。一体何時の間にこんな技を会得していたのか。なんて、今はそんな事を考えている場合じゃなかった。
 私は瑞光を探しに空へと飛んだ。
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