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第四話
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薄っすらと意識が戻って来た時、何だか騒がしい声が聞こえて来た。
私はゆっくりと瞼を開き、辺りを見た。如何やら私は今、外に居るらしく、紫色の空が真っ先に目に入った。
ゆっくりと体を起こすと、私の前には沢山の人が居て、私の方を見ていた。
何が起きているのか、私にはすぐに察しがついた。何故なら去年の私は見る側だったから。強い憧れの念を抱いてみていたから。
「今年の主菜が目を覚ましたぞ!」
何処からか聞こえた男性の声で確信した。
今私が居るのは、主菜お披露目の祭壇の上だと。
楽しそうな声と、羨ましがる声。他にも沢山の声が聞こえて来る。
ふと、自分の格好が、さっきまでの服と違い、とてもきれいな服になっている事に気が付いた。この服は確か、さっきの白装束の人が持って来た服だ。
祭壇の前に白装束の人が立つと、慣習に向けて言い放った。
「今宵、神殿に手妖魔王様の晩餐の主菜となる少女だ!皆の者も来年は選ばれるよう、日々精進せよ!」
そんな言葉を聞いた人達は大きな声で、各々返事をしていた。
私はと言うと、何だかまだ実感が持てなくて、嬉しいのは確かなのに、言葉では言い表せない重い感情が、胸の中に渦巻いていた。
「これより彼女はその実を清める為、夜まで神殿に籠る。面会したい者がいるなら、今の内にせよ。」
白装束の人がそう言うと、真っ先に私の前へやって来たのは、お父さんと、覚束ない足取りでお父さんに肩を貸してもらっているお母さんだった。
「星河!」
「お母さん!!」
私は咄嗟に祭壇から降りると、お母さんはお父さんから離れ、倒れる様に私の前に膝を突いた。
私はすぐにしゃがんでお母さんの腕を掴んだ。
「お母さん寝てないと駄目だよ!」
「大切な娘の晴れ姿を見ないで寝ているなんて、そんな罰当たりな事出来るものですか。」
そう言ってお母さんは私を抱き締めた。相変わらずの、冷たくて震えた手。
「お前が主菜に選ばれたって話したら、母さんが見に行くって言って聞かなくてな。」
お父さんがそう私に教えてくれると、私は嬉しくて、段々と鼻の奥が暑くなって、目頭に涙が溜まるのが分かった。
「その少女の両親か。」
隣に居た白装束の人がそう言って入って来た。
「えぇ、この子の父です。」
「後で謝礼として金を渡そう。夜の妖魔王様の食事前の宴会の時に呼び出す故、その時を待っていろ。さて主菜殿、そろそろ参りますぞ。」
白装束の人がそう言うと、お母さんはゆっくりと私を離し、そして優しく頭を撫でてくれた。その後お父さんも頭を撫でてくれると、私は立ち上がって、白装束の人に案内されて神殿の中に入った。
入る直前に見た二人の顔が、嬉しそうで、でも悲しそうだったのがとても印象的だった。
私はゆっくりと瞼を開き、辺りを見た。如何やら私は今、外に居るらしく、紫色の空が真っ先に目に入った。
ゆっくりと体を起こすと、私の前には沢山の人が居て、私の方を見ていた。
何が起きているのか、私にはすぐに察しがついた。何故なら去年の私は見る側だったから。強い憧れの念を抱いてみていたから。
「今年の主菜が目を覚ましたぞ!」
何処からか聞こえた男性の声で確信した。
今私が居るのは、主菜お披露目の祭壇の上だと。
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ふと、自分の格好が、さっきまでの服と違い、とてもきれいな服になっている事に気が付いた。この服は確か、さっきの白装束の人が持って来た服だ。
祭壇の前に白装束の人が立つと、慣習に向けて言い放った。
「今宵、神殿に手妖魔王様の晩餐の主菜となる少女だ!皆の者も来年は選ばれるよう、日々精進せよ!」
そんな言葉を聞いた人達は大きな声で、各々返事をしていた。
私はと言うと、何だかまだ実感が持てなくて、嬉しいのは確かなのに、言葉では言い表せない重い感情が、胸の中に渦巻いていた。
「これより彼女はその実を清める為、夜まで神殿に籠る。面会したい者がいるなら、今の内にせよ。」
白装束の人がそう言うと、真っ先に私の前へやって来たのは、お父さんと、覚束ない足取りでお父さんに肩を貸してもらっているお母さんだった。
「星河!」
「お母さん!!」
私は咄嗟に祭壇から降りると、お母さんはお父さんから離れ、倒れる様に私の前に膝を突いた。
私はすぐにしゃがんでお母さんの腕を掴んだ。
「お母さん寝てないと駄目だよ!」
「大切な娘の晴れ姿を見ないで寝ているなんて、そんな罰当たりな事出来るものですか。」
そう言ってお母さんは私を抱き締めた。相変わらずの、冷たくて震えた手。
「お前が主菜に選ばれたって話したら、母さんが見に行くって言って聞かなくてな。」
お父さんがそう私に教えてくれると、私は嬉しくて、段々と鼻の奥が暑くなって、目頭に涙が溜まるのが分かった。
「その少女の両親か。」
隣に居た白装束の人がそう言って入って来た。
「えぇ、この子の父です。」
「後で謝礼として金を渡そう。夜の妖魔王様の食事前の宴会の時に呼び出す故、その時を待っていろ。さて主菜殿、そろそろ参りますぞ。」
白装束の人がそう言うと、お母さんはゆっくりと私を離し、そして優しく頭を撫でてくれた。その後お父さんも頭を撫でてくれると、私は立ち上がって、白装束の人に案内されて神殿の中に入った。
入る直前に見た二人の顔が、嬉しそうで、でも悲しそうだったのがとても印象的だった。
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