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第四拾話
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お昼過ぎに鶴さんが来てくれました。
「変わりは無い様で安心したぞ。」
そう言って鶴さんは私が入れたお茶を啜った。
何かお茶菓子等を鶴さんに出したいけど、今家にはこれと言った物が無いせいで出す事が出来なかった。
「まぁ今日は様子を見に来ただけじゃから、そろそろ妾は帰るとするかのう。」
「もう帰るずらか?」
「うむ。明日も来るでのう。」
「大したお構いも出来ずに済みません。」
「良い良い、そなたは己が身を案じよ。そなたは妖かしに狙われやすいからのう。」
そう言って鶴さんは私の頭を撫でた。
鶴さんが立ち上がると私は玄関先まで見送る為に一緒に立ち上がった。
外へ出ると私は曇天を見上げた。雪は今は止んでいるけれど、やっぱり雲が出ていて日差しが入って来ない。
「それではのう。」
「はい、また来て下さいね。」
鶴さんは鳥の姿になると何処かへと飛んで行ってしまった。
私は如何しようかな。このまま家へ帰っても正直やる事が無い。せめて何か食べられる物でも探してこよう。冬でも食べられる物が全く無いって訳じゃないから、多分大丈夫です。
私は行ってきますと呟いてから森の中を歩き始めた。
基本的に真っ白な道を足跡を付けながら歩いていた。
(服、大きいの着てくれば良かったかもしれない。)
小さいから寒い。
「……………………暁光さん。」
会いたいです。
涙が滲んでくると私はすぐに目を擦った。
駄目です、これ以上の我が儘は許されません。兎に角今は食べ物を採って帰りましょう。
暫く歩いていると雪で見えなかった木の根に足が引っ掛かると、見事に転んでしまった。昔にもこんな事があった。あの時は本当に幼くて、毎日辛い事ばっかりで何時も泣いていたっけ。
(あれ………………)
雪だけど冷たくない。
さっきまでの寒さが嘘みたいに寒くない。
(ちょっとだけ寝たい。)
大丈夫です、流石に此処で寝るなんてしません。そんな事をしたら死んじゃいますし。
だけどこうしていると暁光さんを思い出す。暁光さんは雪の中眠る私を見付けてくれたから、今回も見付けてくれるんじゃないかなって、そう考えてしまう。
私は眠くて仕方が無くて目を瞑った。
「変わりは無い様で安心したぞ。」
そう言って鶴さんは私が入れたお茶を啜った。
何かお茶菓子等を鶴さんに出したいけど、今家にはこれと言った物が無いせいで出す事が出来なかった。
「まぁ今日は様子を見に来ただけじゃから、そろそろ妾は帰るとするかのう。」
「もう帰るずらか?」
「うむ。明日も来るでのう。」
「大したお構いも出来ずに済みません。」
「良い良い、そなたは己が身を案じよ。そなたは妖かしに狙われやすいからのう。」
そう言って鶴さんは私の頭を撫でた。
鶴さんが立ち上がると私は玄関先まで見送る為に一緒に立ち上がった。
外へ出ると私は曇天を見上げた。雪は今は止んでいるけれど、やっぱり雲が出ていて日差しが入って来ない。
「それではのう。」
「はい、また来て下さいね。」
鶴さんは鳥の姿になると何処かへと飛んで行ってしまった。
私は如何しようかな。このまま家へ帰っても正直やる事が無い。せめて何か食べられる物でも探してこよう。冬でも食べられる物が全く無いって訳じゃないから、多分大丈夫です。
私は行ってきますと呟いてから森の中を歩き始めた。
基本的に真っ白な道を足跡を付けながら歩いていた。
(服、大きいの着てくれば良かったかもしれない。)
小さいから寒い。
「……………………暁光さん。」
会いたいです。
涙が滲んでくると私はすぐに目を擦った。
駄目です、これ以上の我が儘は許されません。兎に角今は食べ物を採って帰りましょう。
暫く歩いていると雪で見えなかった木の根に足が引っ掛かると、見事に転んでしまった。昔にもこんな事があった。あの時は本当に幼くて、毎日辛い事ばっかりで何時も泣いていたっけ。
(あれ………………)
雪だけど冷たくない。
さっきまでの寒さが嘘みたいに寒くない。
(ちょっとだけ寝たい。)
大丈夫です、流石に此処で寝るなんてしません。そんな事をしたら死んじゃいますし。
だけどこうしていると暁光さんを思い出す。暁光さんは雪の中眠る私を見付けてくれたから、今回も見付けてくれるんじゃないかなって、そう考えてしまう。
私は眠くて仕方が無くて目を瞑った。
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