13 / 42
第壱拾参話
しおりを挟む
村の近くまで来てみると、どうやら何とか冬は乗り切ったみたいで、皆畑仕事に勤しんでいた。だけど誰一人として夜露の事を口にする奴はいなかった。まぁ村の連中からすれば夜露は厄介者だったんだろうけど。
(腹立つ。)
だが此処は堪えろ。流石にそんな個人的な理由で村人全員殺してみろ、何が起きるか分かったもんじゃない。
特に何がある訳でも無いから、俺は社に寄ってから家に帰る事にした。
森の中を歩いて社が見える場所まで行くと、社の前に誰かがいる事に気が付いた。
「夜露?」
其処にいたのは確かに夜露だった。
あいつあんな所で何やってんだろうと思い、木の陰から見ている事にした。あんまり疑いたくないが、荒らしか何かかと思ったが、まぁあいつの性格上そんな事がある訳が無く、夜露は社の掃除をしていた。
誰が建てたかも知らない、そんな社をあいつは一人で必死に掃除していた。
「おい。」
「はい!!」
声を掛けると相当驚いたのか夜露は飛び上がった。
「あ、えっと、暁光さん。」
「お前何やってんだよこんな所で。」
「えっと、お掃除です。」
いや、お前それは見て分かるっての。俺が聞きたいのは如何してお前が社の掃除をしてるのかって事だよ。
「其処掃除する必要無いからな。」
「いえ暁光さんは村の守り神で、そんな暁光さんのお社なら綺麗にしないといけませんから。」
「え。」
まさか、今までもずっとやってたのか?今まで何度か社に行った時、誰が掃除してんのかなって思った事があったけど、ずっと夜露が掃除していたのか?
本当に、如何してお前が嫌われなきゃいけないんだよ。
俺は夜露の手を引っ張った。
「え?」
「お前ずっと掃除してたのか?」
「うんと、一番最初は村の人に怒られて、その罰としてずっとお掃除してろと言われたんですが、やっている内に楽しくなって。それに神様の住んでいる場所ってちゃんと分かってからは、やっぱりちゃんとやらないと、とそう思えたんです。」
そう言う夜露のその言葉には一切の嘘偽りは無かった。
本当に純粋無垢で、優しくて、人の事ばかり考える、人間らしい一面がそんなに見受けられない奴。こんなに素敵な人間が他にいるだろうか。
「………………そんな毎日掃除しなくて良いからな。それに、今度から俺も呼んでくれ、お前一人に苦労掛けたくない。」
「え、でも申し訳無いですよ。それに暁光さんは神様で……………」
「良いから。俺にはそんなに気を使わなくて大丈夫だから。」
笑いながら俺がそう言うと、夜露は少し困惑していたが、それでも了承して笑ってくれた。
(腹立つ。)
だが此処は堪えろ。流石にそんな個人的な理由で村人全員殺してみろ、何が起きるか分かったもんじゃない。
特に何がある訳でも無いから、俺は社に寄ってから家に帰る事にした。
森の中を歩いて社が見える場所まで行くと、社の前に誰かがいる事に気が付いた。
「夜露?」
其処にいたのは確かに夜露だった。
あいつあんな所で何やってんだろうと思い、木の陰から見ている事にした。あんまり疑いたくないが、荒らしか何かかと思ったが、まぁあいつの性格上そんな事がある訳が無く、夜露は社の掃除をしていた。
誰が建てたかも知らない、そんな社をあいつは一人で必死に掃除していた。
「おい。」
「はい!!」
声を掛けると相当驚いたのか夜露は飛び上がった。
「あ、えっと、暁光さん。」
「お前何やってんだよこんな所で。」
「えっと、お掃除です。」
いや、お前それは見て分かるっての。俺が聞きたいのは如何してお前が社の掃除をしてるのかって事だよ。
「其処掃除する必要無いからな。」
「いえ暁光さんは村の守り神で、そんな暁光さんのお社なら綺麗にしないといけませんから。」
「え。」
まさか、今までもずっとやってたのか?今まで何度か社に行った時、誰が掃除してんのかなって思った事があったけど、ずっと夜露が掃除していたのか?
本当に、如何してお前が嫌われなきゃいけないんだよ。
俺は夜露の手を引っ張った。
「え?」
「お前ずっと掃除してたのか?」
「うんと、一番最初は村の人に怒られて、その罰としてずっとお掃除してろと言われたんですが、やっている内に楽しくなって。それに神様の住んでいる場所ってちゃんと分かってからは、やっぱりちゃんとやらないと、とそう思えたんです。」
そう言う夜露のその言葉には一切の嘘偽りは無かった。
本当に純粋無垢で、優しくて、人の事ばかり考える、人間らしい一面がそんなに見受けられない奴。こんなに素敵な人間が他にいるだろうか。
「………………そんな毎日掃除しなくて良いからな。それに、今度から俺も呼んでくれ、お前一人に苦労掛けたくない。」
「え、でも申し訳無いですよ。それに暁光さんは神様で……………」
「良いから。俺にはそんなに気を使わなくて大丈夫だから。」
笑いながら俺がそう言うと、夜露は少し困惑していたが、それでも了承して笑ってくれた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる