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第六章
黒で殺す(3)
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そんなとき突然あらわれたのが、鈍条崎ルチカだ。
今年の入学式の日。
学校の正門前で、虹子は彼に出会った。
彼はお互いの存在を認識し合った瞬間からおかしなことを言い、虹子はそれを冷たくあしらった。
このとき、虹子は急いでいたのだ。見知らぬ人間にかまう余裕などなかったのである。
本来なら、二年生である虹子は、入学式の日は学校にいく必要はない。入学式という行事があるため、部活動もない。それなのに虹子が急いで学校にきた理由は、前日の部活動後、部室に置いてきた描きかけのカンヴァスが気になったからだ。部活の終了時間になっても絵の具が乾かなかったため、仕方なく置いていったものだった。
美術室にいき、イーゼルに置いたままの自分のカンヴァスを確認する。
案の定、感じ取っていた悪い予感が的中する。
製作途中の虹子のカンヴァスには、黒い絵の具で虹子の悪口が書かれていたのだ。
頭に血がのぼり、一度冷静になろうと水道で顔を洗った。
美術室のドアを閉め、万が一誰かにドアを開けられても、悪口の書かれたカンヴァスの表を見られないように、イーゼルの向きを変える。そして絵筆を握り、黒い絵の具で憎悪の根源を塗りつぶし始めた。
自分の描いていた絵は、落書きによって台無しになった。言わば、瀕死の状態だ。そんな惨い姿で放置するならば、いっそ自らの手で綺麗に葬ってやる。虹子は黒い絵の具という凶器で、絵を殺すことを選んだ。
無心で、筆を動かす。
もう少しで、カンヴァスが漆黒に染まるというとき、鈍条崎ルチカがやってきた。
殺害現場を見られた。
虹子は内心焦ったが、冷静なふりをした。
落ち着け。
おそらく、なにをしていたのかはばれてはいない。
しかし、自分の行動を不信に感じてはいないだろうか。
なにか悟られてしまってはいないだろうか。
実際、ルチカは虹子本人に夢中でなにも悟ってはいなかったが、虹子は焦っていたせいか、必要以上に疑ってしまった。
こいつとはもう、関わりたくない。
そう思った虹子は、美術室を出る。ついて来るルチカを振り切ろうと思った。だが、その途中で、鈍条崎ルチカという人間が真っ白であることに気がついた。
ルチカは、虹子の過去を知らない。現状も知らない。
虹子に関する悪い情報が、彼のなかでは真っ白なのだ。
そう気がついたのだが、光釘高校美術部で痛い目にあった前例がある。
やはり警戒すべきだと思い直そうとしたとき、彼は虹子を「特別」と称した。
久々に与えられたその言葉に、虹子の胸はふるえる。
ずっと求めていたのは、この快感だ。
虹子は彼に興味を持ち、話をまともに聞いてみることにした。
とは言え、出会ったばかりの他人にあっさり個人情報を流すのは危険だ。
とりあえず、本名を偽っておくことにする。そこで考えた偽名は「ミアデュール・ウラハロルド・二藍」。彼の苗字が「鈍条崎」というちょっと変わったものだったことに苛立ちを感じ、そのインパクトに負けたくない思いで、咄嗟に口走ってしまった語呂の悪い名前である。
ルチカは必死に、「涙の色が見える」という話を伝えてきた。生まれてからずっと、そのことにとらわれているらしい。
その話を信じた他人は、人生で虹子がはじめてで、だからあなたは僕にとって特別なのだとルチカは言った。
誰も信じなかった話を信じた理由を問われ、虹子は「あたしはバカじゃないから」と答えた。このとき虹子は、本当にそう感じたのだ。
自分は非凡な人生を歩んできた。
そのあたしが、非凡なものを否定するなんて馬鹿げている。有り得ない。
しかし素直に彼を非凡だと認めるのは癪にさわったので、彼のことはわざと「平凡」だと罵っておいた。
ルチカはそれを受け、「仲良くなりたい」と申し出てきた。
出会って間もないにも関わらず、彼はすっかり自分に陶酔している。
自分に対して悪意のないであろう人間と会話したのは、どのくらいぶりだろう。
ふいに、祖父の顔が浮かぶ。
虹子も、ルチカに惹かれ始めていた。
そして虹子は、彼との関係をとりあえず持続させるため、「助手になれば、白い涙を流した理由を教える」という約束を交わした。
泣いていた、と認めるのは屈辱的だったが、それを乗り越える快感を、きっと彼は与えてくれるという確信めいたものを感じたのだ。
翌日の朝、眠い目をこすりながら、虹子はスマホで光釘高校のホームページ内にある掲示板を見ていた。
この数週間前、女子の美術部員たちがあるインターネットサイトに虹子の悪口を書いているという話を偶然聞いてしまったことがあった。
虹子はすぐに、彼女たちの会話のなかにでてきたとあるサイトの掲示板を実際に調べた。するとそこには、「ニジゲンうざい」「ニジゲン消えろ」「ニジゲンいいかげん死ね」など、本名ではないものの、明らかに自分を標的とした悪口が本当に羅列されていたのだ。
それ以来、虹子には、朝起きたらすぐ、そのサイトをのぞく癖がついてしまっていた。
やがて、それだけではあきたらず、時折おかしな書き込みがあるという噂の、光釘高校のホームページにまで、念のため目をとおすようになっていたのである。
光高の掲示板に、自分の死を願う書き込みを見つけた虹子は、愕然とする。
犯人は、美術部のやつらに違いない。
わざわざ、学校の掲示板に書き込むなんて、陰険にもほどがある。
悪意のこもった書き込みに、もちろん腹は立ったが、いまの自分には鈍条崎ルチカがいる。
自分にとって希望のようなその存在は、虹子の重い気持ちをやわらげた。
学校へ向かい、ルチカに会うと、相変わらず自分を「特別」と呼び、慕ってくる。
虹子は満悦した。
同時に、絶対に彼には自分の本当の姿をさらしたくないという不安にかられる。
そこで虹子は話しの流れを利用して、助手ルールなるものを設け、自分の素顔を知られる可能性がありそうなことを禁じた。
助手は無駄話禁止。
助手は一方的に話すこと禁止。
東校舎出入り禁止。
美術部への入部禁止。
ウラハ(虹子)の情報、または居場所を探らない。
放課後以外は、ウラハ(虹子)に声をかけたり、つきまとったり、尾行したりしない。
ふたりの関係を他言しない。
ルチカはそのルールをのみ、ことは虹子の思いどおりに進んでいた。
だがその日の放課後、ルチカは意外なことを虹子に告げる。
自分は「ニジゲン」というあだ名を持っていて、光校の掲示板に悪口を書き込まれたと言ったのだ。
これには心底驚いた。
あだ名が同じ、だなんて、そんな偶然あるものか。
もしかしたら、あの書き込みは、自分の知らない誰かからルチカに向けれたものだったという可能性もあるということか。
虹子は一瞬そんなことを思ったが、ルチカの話を聞いているうちに、やはりあれは自分への悪意であると思い直した。
しかし、当然、真実を告白することなどできない。彼の話に乗ってしまった。
もし、本当のことをルチカに話すとなれば、虹子は自分がいじめを受けている事実を打ち明けなければならない。
いくら気が強くても、虹子も人間だ。
彼女にとって、辛い現状を自ら告白するのはとてつもなく勇気がいることだった。プライドが高いぶん、非常に困難なことだった。
結局、虹子は真実を隠したまま、自分の都合のいいように話を持っていき、そのあげくにルチカのスマートフォンまで取りあげることに成功する。
「こんなもん持ってるから、くだらない悪口なんか見つける羽目になるのよ。それに、ネットを連想させるこれがある限り、見る度に書き込みを思い出すことになる。凡人は大抵、一回見たんだから、また書き込まれてるんじゃないかって、気になって仕方がなくなるものだからね。あんたは、特にそういうタイプでしょ。そのうちほかのサイトだって気になって、ノイローゼになることだってあり得る。そんなことに振り回される人生を自分が歩んでいくなんて、あんた楽しいと思う?」
彼に言ったこの言葉は、他でもない虹子自身の経験談だった。
気にするなんてバカらしい。無視すればいい。
そうわかってはいても、見ずにはいられない。
虹子はそんな自分が情けなく、屈辱を感じていたのである。
ともかく、ルチカには真実を知られることもなく、誤魔化せた。不安要素であるインターネットも、完全にはっきりと禁じてやった。
虹子は安堵感を覚え、ほっとする。ルチカを犠牲にしたことは可哀そうだとは思ったが、そのぶん自分がフォローしていけばいいと勝手に思った。
そして虹子は、出会って二日目の夜にはもう、ルチカを手放したくないという思いにかられていた。
その後も頭をフル回転させ、自分の素顔を、現状を隠すことに必死になった。
共に行動し、彼が自分の言いなりになるたび、笑いが込みあげる。
自分とは関係のないところで、彼が孤独に陥るたび、笑いが込みあげる。
それはルチカをバカにしているせいでは、決してない。
嬉しくてたまらなかったのだ。
悪意なく自分に関わってくるルチカが、自分とよく似たルチカが、ここに存在していることが嬉しかった。彼といると、時折、昔の自分に――祖父がいたころの自分に戻れた気分になれたほどである。
孤独を極めた虹子にとって、ルチカの存在が唯一のぬくもりであり、救いとなっていく。
しかし一方で、一緒にいるがうえに、ルチカの嫌な部分も虹子は知ってしまった。
今年の入学式の日。
学校の正門前で、虹子は彼に出会った。
彼はお互いの存在を認識し合った瞬間からおかしなことを言い、虹子はそれを冷たくあしらった。
このとき、虹子は急いでいたのだ。見知らぬ人間にかまう余裕などなかったのである。
本来なら、二年生である虹子は、入学式の日は学校にいく必要はない。入学式という行事があるため、部活動もない。それなのに虹子が急いで学校にきた理由は、前日の部活動後、部室に置いてきた描きかけのカンヴァスが気になったからだ。部活の終了時間になっても絵の具が乾かなかったため、仕方なく置いていったものだった。
美術室にいき、イーゼルに置いたままの自分のカンヴァスを確認する。
案の定、感じ取っていた悪い予感が的中する。
製作途中の虹子のカンヴァスには、黒い絵の具で虹子の悪口が書かれていたのだ。
頭に血がのぼり、一度冷静になろうと水道で顔を洗った。
美術室のドアを閉め、万が一誰かにドアを開けられても、悪口の書かれたカンヴァスの表を見られないように、イーゼルの向きを変える。そして絵筆を握り、黒い絵の具で憎悪の根源を塗りつぶし始めた。
自分の描いていた絵は、落書きによって台無しになった。言わば、瀕死の状態だ。そんな惨い姿で放置するならば、いっそ自らの手で綺麗に葬ってやる。虹子は黒い絵の具という凶器で、絵を殺すことを選んだ。
無心で、筆を動かす。
もう少しで、カンヴァスが漆黒に染まるというとき、鈍条崎ルチカがやってきた。
殺害現場を見られた。
虹子は内心焦ったが、冷静なふりをした。
落ち着け。
おそらく、なにをしていたのかはばれてはいない。
しかし、自分の行動を不信に感じてはいないだろうか。
なにか悟られてしまってはいないだろうか。
実際、ルチカは虹子本人に夢中でなにも悟ってはいなかったが、虹子は焦っていたせいか、必要以上に疑ってしまった。
こいつとはもう、関わりたくない。
そう思った虹子は、美術室を出る。ついて来るルチカを振り切ろうと思った。だが、その途中で、鈍条崎ルチカという人間が真っ白であることに気がついた。
ルチカは、虹子の過去を知らない。現状も知らない。
虹子に関する悪い情報が、彼のなかでは真っ白なのだ。
そう気がついたのだが、光釘高校美術部で痛い目にあった前例がある。
やはり警戒すべきだと思い直そうとしたとき、彼は虹子を「特別」と称した。
久々に与えられたその言葉に、虹子の胸はふるえる。
ずっと求めていたのは、この快感だ。
虹子は彼に興味を持ち、話をまともに聞いてみることにした。
とは言え、出会ったばかりの他人にあっさり個人情報を流すのは危険だ。
とりあえず、本名を偽っておくことにする。そこで考えた偽名は「ミアデュール・ウラハロルド・二藍」。彼の苗字が「鈍条崎」というちょっと変わったものだったことに苛立ちを感じ、そのインパクトに負けたくない思いで、咄嗟に口走ってしまった語呂の悪い名前である。
ルチカは必死に、「涙の色が見える」という話を伝えてきた。生まれてからずっと、そのことにとらわれているらしい。
その話を信じた他人は、人生で虹子がはじめてで、だからあなたは僕にとって特別なのだとルチカは言った。
誰も信じなかった話を信じた理由を問われ、虹子は「あたしはバカじゃないから」と答えた。このとき虹子は、本当にそう感じたのだ。
自分は非凡な人生を歩んできた。
そのあたしが、非凡なものを否定するなんて馬鹿げている。有り得ない。
しかし素直に彼を非凡だと認めるのは癪にさわったので、彼のことはわざと「平凡」だと罵っておいた。
ルチカはそれを受け、「仲良くなりたい」と申し出てきた。
出会って間もないにも関わらず、彼はすっかり自分に陶酔している。
自分に対して悪意のないであろう人間と会話したのは、どのくらいぶりだろう。
ふいに、祖父の顔が浮かぶ。
虹子も、ルチカに惹かれ始めていた。
そして虹子は、彼との関係をとりあえず持続させるため、「助手になれば、白い涙を流した理由を教える」という約束を交わした。
泣いていた、と認めるのは屈辱的だったが、それを乗り越える快感を、きっと彼は与えてくれるという確信めいたものを感じたのだ。
翌日の朝、眠い目をこすりながら、虹子はスマホで光釘高校のホームページ内にある掲示板を見ていた。
この数週間前、女子の美術部員たちがあるインターネットサイトに虹子の悪口を書いているという話を偶然聞いてしまったことがあった。
虹子はすぐに、彼女たちの会話のなかにでてきたとあるサイトの掲示板を実際に調べた。するとそこには、「ニジゲンうざい」「ニジゲン消えろ」「ニジゲンいいかげん死ね」など、本名ではないものの、明らかに自分を標的とした悪口が本当に羅列されていたのだ。
それ以来、虹子には、朝起きたらすぐ、そのサイトをのぞく癖がついてしまっていた。
やがて、それだけではあきたらず、時折おかしな書き込みがあるという噂の、光釘高校のホームページにまで、念のため目をとおすようになっていたのである。
光高の掲示板に、自分の死を願う書き込みを見つけた虹子は、愕然とする。
犯人は、美術部のやつらに違いない。
わざわざ、学校の掲示板に書き込むなんて、陰険にもほどがある。
悪意のこもった書き込みに、もちろん腹は立ったが、いまの自分には鈍条崎ルチカがいる。
自分にとって希望のようなその存在は、虹子の重い気持ちをやわらげた。
学校へ向かい、ルチカに会うと、相変わらず自分を「特別」と呼び、慕ってくる。
虹子は満悦した。
同時に、絶対に彼には自分の本当の姿をさらしたくないという不安にかられる。
そこで虹子は話しの流れを利用して、助手ルールなるものを設け、自分の素顔を知られる可能性がありそうなことを禁じた。
助手は無駄話禁止。
助手は一方的に話すこと禁止。
東校舎出入り禁止。
美術部への入部禁止。
ウラハ(虹子)の情報、または居場所を探らない。
放課後以外は、ウラハ(虹子)に声をかけたり、つきまとったり、尾行したりしない。
ふたりの関係を他言しない。
ルチカはそのルールをのみ、ことは虹子の思いどおりに進んでいた。
だがその日の放課後、ルチカは意外なことを虹子に告げる。
自分は「ニジゲン」というあだ名を持っていて、光校の掲示板に悪口を書き込まれたと言ったのだ。
これには心底驚いた。
あだ名が同じ、だなんて、そんな偶然あるものか。
もしかしたら、あの書き込みは、自分の知らない誰かからルチカに向けれたものだったという可能性もあるということか。
虹子は一瞬そんなことを思ったが、ルチカの話を聞いているうちに、やはりあれは自分への悪意であると思い直した。
しかし、当然、真実を告白することなどできない。彼の話に乗ってしまった。
もし、本当のことをルチカに話すとなれば、虹子は自分がいじめを受けている事実を打ち明けなければならない。
いくら気が強くても、虹子も人間だ。
彼女にとって、辛い現状を自ら告白するのはとてつもなく勇気がいることだった。プライドが高いぶん、非常に困難なことだった。
結局、虹子は真実を隠したまま、自分の都合のいいように話を持っていき、そのあげくにルチカのスマートフォンまで取りあげることに成功する。
「こんなもん持ってるから、くだらない悪口なんか見つける羽目になるのよ。それに、ネットを連想させるこれがある限り、見る度に書き込みを思い出すことになる。凡人は大抵、一回見たんだから、また書き込まれてるんじゃないかって、気になって仕方がなくなるものだからね。あんたは、特にそういうタイプでしょ。そのうちほかのサイトだって気になって、ノイローゼになることだってあり得る。そんなことに振り回される人生を自分が歩んでいくなんて、あんた楽しいと思う?」
彼に言ったこの言葉は、他でもない虹子自身の経験談だった。
気にするなんてバカらしい。無視すればいい。
そうわかってはいても、見ずにはいられない。
虹子はそんな自分が情けなく、屈辱を感じていたのである。
ともかく、ルチカには真実を知られることもなく、誤魔化せた。不安要素であるインターネットも、完全にはっきりと禁じてやった。
虹子は安堵感を覚え、ほっとする。ルチカを犠牲にしたことは可哀そうだとは思ったが、そのぶん自分がフォローしていけばいいと勝手に思った。
そして虹子は、出会って二日目の夜にはもう、ルチカを手放したくないという思いにかられていた。
その後も頭をフル回転させ、自分の素顔を、現状を隠すことに必死になった。
共に行動し、彼が自分の言いなりになるたび、笑いが込みあげる。
自分とは関係のないところで、彼が孤独に陥るたび、笑いが込みあげる。
それはルチカをバカにしているせいでは、決してない。
嬉しくてたまらなかったのだ。
悪意なく自分に関わってくるルチカが、自分とよく似たルチカが、ここに存在していることが嬉しかった。彼といると、時折、昔の自分に――祖父がいたころの自分に戻れた気分になれたほどである。
孤独を極めた虹子にとって、ルチカの存在が唯一のぬくもりであり、救いとなっていく。
しかし一方で、一緒にいるがうえに、ルチカの嫌な部分も虹子は知ってしまった。
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