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内緒
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しおりを挟むクアリクは笑い始めた。
「ふふ。ふふ、ははは。」
そして下ろしていた銃口を再びゆっくり上げ、頭へとむけた。
同時に全員が身構えた。
「ははは! ……そうですか。ずっと引っかかっていたものが取れた気がします。」
ギラリと光る真っ赤な目が頭を見つめた。
「そりゃ良かった。こっちも”引っかかり"がお前のお陰で取れたからよ、お互い様だ。」
頭は銃を向けられても一歩も退かず、笑って見せた。
「今日まで僕は何人殺めて来たか知りませんが、僕は間違っていなかった。」
「さぁ? それはどーなんだろうな。お前にすりゃそうなのかも知んねーけど」
そこまで頭が言ったところで気づいた。
俺は頭のことを見ていたはずなのに、フと気づくと頭はクアリクの足元へ、飛び込みしゃがんでいた。
あまりのスピードに全員が目で追いかけられず、クアリクも驚き銃を下へ向けようとしたが間に合わない。
バシ!
両足を一気に伸ばし、腰を利かせ加速をつけた右手の掌底がクアリクの左腕に炸裂。銃は飛び、クアリクの左手も空を舞った。
「は、早……!」
「さっきの続きな……仲間やられてる俺からすりゃよっぽどお前、間違いだらけだ。」
バランスを崩したクアリクを頭は逃さない。
右足を後方に引き、腰を下げ左手は顔の前で止め、右腕を腰に引きつけ構えた。グッと拳を握った瞬間。
ド!
クアリクの腹に低い正拳突きが綺麗にめり込んだ。声も出さず、後ずさりし少量の吐血をした。
あの1撃で内臓のどこかがイカれたようだ。
「卑怯も、の、ガハ! オエっ。」
絞り出すようにクアリクは頭に言った。
「丸腰相手に銃突きつけてどの口が言ってんだよ。」
「はは、確かに、そうですね。ごほっ。でもあなたの今の顔、とてもいい表情ですよ。」
「……うるせぇよ。」
頭は眉間にシワを寄せて吐き捨てた。
「……久々に見たぜ。兄貴の拳法。」
「え? 喧嘩、久しぶりなんですか?」
隣で戦いを見守っていたユースケ兄さんが言った。俺は喧嘩自体が久々なんだと思ったけど、どうやら違うらしい。
「そうじゃない。兄貴の拳法の腕は並じゃねぇ。昔、大会で自分を止められなくなって対戦相手を殺しかけたことがあるんだ」
「そ、そうだったんですか。」
「あぁ。それからは本当に負けられない喧嘩にしか拳法は使わないんだ。」
「それって、つまり……?」
「そうだ。相手を殺しちまってもいいと判断した時だけってことだ。」
「……!」
頭の過去にも驚いたけど、拳法を使うのにそんな理由があったのか。
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