ブラッシング!!

コトハナリユキ

文字の大きさ
上 下
37 / 48
内緒

しおりを挟む
 
 クアリクは笑い始めた。
 「ふふ。ふふ、ははは。」
 そして下ろしていた銃口を再びゆっくり上げ、ヘッドへとむけた。
 同時に全員が身構えた。

 「ははは! ……そうですか。ずっと引っかかっていたものが取れた気がします。」
 ギラリと光る真っ赤な目が頭を見つめた。
 「そりゃ良かった。こっちも”引っかかり"がお前のお陰で取れたからよ、お互い様だ。」
 頭は銃を向けられても一歩も退かず、笑って見せた。
 
 「今日まで僕は何人あやめて来たか知りませんが、僕は間違っていなかった。」
 「さぁ? それはどーなんだろうな。お前にすりゃそうなのかも知んねーけど」
 
 そこまで頭が言ったところで気づいた。
 俺は頭のことを見ていたはずなのに、フと気づくと頭はクアリクの足元へ、飛び込みしゃがんでいた。
 あまりのスピードに全員が目で追いかけられず、クアリクも驚き銃を下へ向けようとしたが間に合わない。

 バシ!

 両足を一気に伸ばし、腰を利かせ加速をつけた右手の掌底しょうていがクアリクの左腕に炸裂。銃は飛び、クアリクの左手も空を舞った。
 「は、早……!」
 「さっきの続きな……仲間やられてる俺からすりゃよっぽどお前、間違いだらけだ。」

 バランスを崩したクアリクを頭は逃さない。
 右足を後方に引き、腰を下げ左手は顔の前で止め、右腕を腰に引きつけ構えた。グッと拳を握った瞬間。

 ド!
 
 クアリクの腹に低い正拳突きが綺麗にめり込んだ。声も出さず、後ずさりし少量の吐血をした。
 あの1撃で内臓のどこかがイカれたようだ。
  
 「卑怯も、の、ガハ! オエっ。」
 絞り出すようにクアリクは頭に言った。
 「丸腰相手に銃突きつけてどの口が言ってんだよ。」
 「はは、確かに、そうですね。ごほっ。でもあなたの今の顔、とてもいい表情ですよ。」
 「……うるせぇよ。」
 頭は眉間にシワを寄せて吐き捨てた。

 「……久々に見たぜ。兄貴の拳法。」
 「え? 喧嘩、久しぶりなんですか?」
 隣で戦いを見守っていたユースケ兄さんが言った。俺は喧嘩自体が久々なんだと思ったけど、どうやら違うらしい。
 「そうじゃない。兄貴の拳法の腕は並じゃねぇ。昔、大会で自分を止められなくなって対戦相手を殺しかけたことがあるんだ」
 「そ、そうだったんですか。」
 「あぁ。それからは本当に負けられない喧嘩にしか拳法は使わないんだ。」
 「それって、つまり……?」
 「そうだ。相手を殺しちまってもいいと判断した時だけってことだ。」
 「……!」

 頭の過去にも驚いたけど、拳法を使うのにそんな理由があったのか。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

処理中です...