ブラッシング!!

コトハナリユキ

文字の大きさ
上 下
29 / 48
彼女の力

5

しおりを挟む
 俺は結構冷静に答えた。
 「いや、ダメだろ。」
 言い終わるのと同時に言い分をミズエが被せてきた。
 「違うの。前にあたしが出たらあいつは手が出せないんでしょう? だったら、そうやって動きを止めてから武器も全部出させちゃってさ、それからタイマンって流れにしちゃえばいいのよ!」
 ミズエはさっきの作戦失敗をまだ気にしているのか今度は成功させるっといった感じで退かない。「ダメだ。危険だ。」と続ける俺との押し問答になってしまった。
 イライラして部屋の中をくるくると歩いてミズエは両手を広げた。
 「大丈夫だよ! だってあたしは……!」
 それはたった1つの扉を背にした瞬間だった。
 
 ドン! ドン! 

 さっき聞いたばかりの銃声が轟いた。
 俺達その音に反応することしかできなかった。
 「ミズエ!!」
 バタンと倒れ込んだミズエの両手の平からは血が流れ出していて、扉の向こうにクアリクがニヤニヤしながら現れた。
 「クアリクてめぇ!」
 俺は顔面に血管が浮かび上がるのを感じた。俺の後ろではユースケが3人を制止してくれていた。正しい判断だ。今、ボロボロのあいつらが飛び出しても足手まといにしかならないし、銃口は俺を向いている。ターゲットは俺ってことだ。
 
 「いやー。おかしらさん、驚きましたよ。まさか水組と繋がりがあったなんて。」
 クアリクは銃口を俺に向けているものの視線は倒れ込んだミズエに注いでいる。
 「罵維菌族ばいきんぞくと水組が手を組まれたんじゃ僕ら殺菌族さっきんぞくは、たまったもんじゃありません。」
 「オメー、何が言いたいんだよ。」
 俺はクアリクを睨みつけたまま拳を握りしめた。
 「その水組の子もあなた達も、全員殺します。それで繋がり自体を無かったことにします。」
 冷たい声だった。でも、怖いとかそんなことは思わなかった。ムカついて仕方なかったからだ。
 「全員殺すって……? お前それ、本心で言ってんのか?」
 「ぇ……!」
 俺は聞き返しただけのつもりだったのに、クアリクがやけに動揺した。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

処理中です...