ブラッシング!!

コトハナリユキ

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 ナイフをつきつけられても平然としている様子から、かなり自分に自信があるのと余裕があるのを感じた。
 「あなたが今の罵苦乱バクランのおかしらさんですか。はじめまして。」
 「あ? あぁ、俺がタクローだ。」
 今の言葉に違和感があったけど、気にせず話を続けた。
 「俺の仲間にずいぶんなことしてくれるじゃねーか。」
 クアリクは笑みを浮かべ「あぁ、アレですか。」とボソッと呟いた。俺は奥歯だけを食いしばって気持ちを抑えた。
 「アレ呼ばわりか。……まぁいいさ、噂の"赤目のクアリク"らしくねんじゃねーか?」
 え。と、クアリクの顔に疑問が浮かぶ。
 「3人とも生きてたぜ。」
 俺はニヤリと口元を歪めて言った。
 「……へぇ。凄いですね。」
 明らかに目には困惑の色が見えたが、すぐに元に戻してクアリクは下を向いて言う。
 「驚きましたよ。目を見張る生命力ですね。……まるでゴキブリだ。」
 「てめぇ!!」
 「ユースケよせ。」
 クアリクの言葉に反応してユースケがナイフをグッと喉に押し当てたが制止した。

 「俺達はこのままお前の喉を切り裂く為にここにノコノコ来た訳じゃねーんだよ。俺はお前みたいに卑怯なマネはしねぇ。」
 まっすぐにクアリクを睨み付けたがクアリクは少し下を向いたまま「へぇ。」と言葉を落とした。

 「俺は正々堂々、素手でのタイマンを張れって言いに来たんだよ。」
 「ぶふっ!!」
 クアリクは噴出し笑い出した。
 「てめぇ笑ってんじゃねーよ!」
 ユースケもこのミズエの提案には不安を抱いてたけど、今は少し恥ずかしそうだ。
 「あーあぁ。すみません。いいですよ、やりましょうよタイマン。」
 「……おし。」
 もし応じなかったらこの場所でやり合うだけだった。
 どこから見てるのか分からないけど、ミズエのキラキラした視線が背中に痛い。

 「とりあえずあいつらも居る2階でケリつけよう。行くぞ。」
 「分かりました。ではもう両手も下ろしていいですか?」
 「あぁ、かまわねぇ。」
 「ありがとうございます。」
 タイマン承諾で俺もユースケも気が緩んだんだろう。ユースケはナイフを下ろして、俺はクアリクに背を向けてしまった。
 あまりに迂闊だった。
 パン! パン!
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