ブラッシング!!

コトハナリユキ

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ナワバリ

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 もう1発銃声が響き、トシキの右手から血が飛び散った。
 「トシキ!!」
 「っぇ!」
 「大丈夫か!?」
 「平気やかすっただけや。それよりミヤシゲ頼むでタカマツ。」
 後ろの俺に撃ち抜かれた右手を見せないように隠した。
 「左手もいっちゃえば、もう何もできないですよね。素手な訳で」
 「あほ。こんなもん屁でもないわ。」
 クアリクの言葉を遮ってトシキは前へ足を踏み出した。出血する右手をギュッと握り締めた瞬間、トシキが視界から消えた。

 「……!」
 ガッ! ドッ! 鈍い音が2発耳に飛び込んで来た。クアリクの懐に踏み込んで顎と腹にパンチを1発ずつ喰らわしたんだ。
 「どうや、銃弾喰らった拳は効いたか?」
 「はは、凄いですね。顎は少し効きました。……足、速いんですね。」

 左膝からガクリと折れて、クアリクは両膝をつき、銃を持ってない手で身体を支える体勢になっていた。顎への衝撃で脳が揺れたんだろう。

 「そうやろそうやろ~」とトシキは銃を持っている手を蹴り飛ばした。カラカラと銃は床を走り、止まった。
 「俺はな、ナイフとか角材とか、それこそあーゆー銃とか使つこーて”自分は強い”とか思ってる奴が大嫌いなんじゃ。ほれ、あれないだけで、もうなんもでけへん」
 「……あぁ、そういうのなら僕も分かります。」
 「あぁ?」
 顔を覗き込もうとかがむトシキ。クアリクは顔をあげないままだ。

 「今この廃ビルナワバリに来てる殺菌族は僕だけです。1人で来てるのは、自分が”武器を使って強くなった”とか、思ってるからじゃありません。」 
 「……何が言いたいんや」
 顔を少しあげてクアリクは続ける。
 「群れることで、強くなったと勘違いしてる思い上がりのクズチームなんかは、僕1人で潰せると思ってるからですよ。」
 「なんやとこらぁ!!」
 トシキの怒号が廊下に響き渡るが、顔色一つ変えずクアリクはトシキの顔を一瞬だけ上目遣いで見て、すぐに戻した。
 「それに、誰が銃一丁しか持ってないって言いましたか?」
 クアリクの両袖からナイフが光るのが見えた。その瞬間両腕を交差させて素早く斜め上へと広げた。
 「なんや……!?」
 目の前の突然の動きに驚いてトシキは一歩下がって構えた。
 「さっきはあんなに速かったのに、今度は随分遅かったですね。足。」 

 クアリクがそう言い終えると、トシキの身体から噴水の様に血が噴き出した。交差するナイフに身体を切り裂かれたんだ。
 「あ゛ぁぁ……!! なに……」
 「トシキぃ!」
 ミヤシゲを置いてトシキの元へ駆け出そうと身体に力を入れると、ミヤシゲの身体が軽くなるのを感じた。
 「え?」



 
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