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音が聞こえた
恐怖か興奮か
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「え…?」
現場へ戻ってみて驚いた。死体が消えている。周りを探してみるが、やはり見当たらない。大量の血痕は残っていてるし、現場はここで間違いなかった。
僕はスマホを片手に震えた。
「運んだ…?」
もちろんやったのは犯人に決まっている。驚いたのは僕が戻ってくるまでのたった数分で、あの死体2つを持ち去ったことだ。車輪の跡もないし…不気味だった。僕自身の震えは恐怖だったのか、それとも興奮だったのか、何の震えだったのかはよく分からなかった。
でも、死体が無いのでは警察へ通報しても仕方がないし、面倒くさくなりそうだと考えて、そのまま現場を立ち去ろうとした。その時、風邪薬の錠剤の様なものが3錠落ちているのを見つけた。▼マークが刻まれている。タトゥーの入った死体が倒れていた辺りの位置だろう。なんの薬か分からなかったが、興味本位でポケットに押し込んだ。そして、何枚か血溜まりの写真を撮って帰宅し、公園で起こった事を頭の中で整理することにした。
・再び聞こえた殴打の音。
・発信源は消えたあの2人。もしくはその他の人物(犯人)
・被害者その1、両肘から先の無いウチの中学の卒業生。"champion"とタトゥーが入っていた。
・被害者その2、顔が潰れ、内臓が飛び出た不良生徒。右腕がもがれ、仰向けで倒れていた。
・2人の共通点は"同じ学校の生徒"だということ。
・1度離れて僕が戻るまでの数分間で死体が消えた。
・2人は確実に絶命していた。つまり、誰かが死体を持ち去ったことになる。2つの死体を運ぶのは、容易ではない。時間も限られていることを踏まえると恐らく複数犯でないと難しい。
・死体を隠す必要があったなら、それを目撃してしまった僕って…結構、やばいのかもしれない。
SNSでも死んでいた2人の情報を探してみようと思ったが、名前もあだ名もわからないのでは検索の仕様がない。どうしようもないので"やばい時"が来たら考えよう。というところに落とし込み、自分を落ち着かせた。
その晩に寝付けなかったのは、恐怖もあったかもしれないが、この刺激の足りない「今」を埋めてくれる「何か」が僕の身の回りで起き始めていると気づき、興奮していたのかもしれない…。
翌日。"不良のことは不良に聞こう。"ということで中島くんのことと、死んでいた2人について侠山くんに聞く為に、学校へ行かずに病院へとやってきた。
どこへ彼が搬送されたか分からなかったから、ひとまず学校から一番近い病院に来てみた。平日の午前中に登場した学ランを着た中学生は、受付スタッフに不審な目で見られ、「そんな患者は居ませんよ。」と遇らわれてしまった。
しかし、彼が入院しているのが302号室だと、他の看護師が話している声が聞こえてきて分かった。「態度の悪い金髪のクソガキ」と言っていたので、まず間違いない。
病室の間に到着し『ガラっ』と開けてみると、6人部屋の1番奥のベッドに侠山くんの姿を見つけた。他のベッドは全てカーテンが閉められていた。侠山君は上半身を起こし、窓の外を眺めていた。
早速近づいて呼びかけてみた。
「やぁ。」
「……お前かよ。」
眉間に皺を寄せて彼は僕を見たが、すぐに皺は消えた。
学校では逆立っている前髪も下りていて、印象が若干優しくなっている。
「最初の見舞人がお前かぁ。…俺のツレはまだ誰も来てくれてねぇよ。」
「誰も君がこの病院に入院してるなんて、知らないんじゃないの?学校じゃ知らされていないと思うし…まぁ悪かったね、一番手が僕で。純粋に大丈夫かなって思ってね。」
純粋に嘘をついてみた。
「ふん、嘘つけよ。…で、なんだよ。」
僕は嘘をつく才能がないらしく、すぐにバレてしまった。仕方がないので正直に話すことにした。
「はは、バレたかぁ。実はね、中島くんが君を刺す前って、どんな感じだったのかなっていうのが気になってさ、それを聞きたかったんだ。」
「そういうことか…。」
彼は頭をかいて、刺された腹部のあたりに手を当てた。
少しだけ間があったが「あん時……。」と語り始めた。
現場へ戻ってみて驚いた。死体が消えている。周りを探してみるが、やはり見当たらない。大量の血痕は残っていてるし、現場はここで間違いなかった。
僕はスマホを片手に震えた。
「運んだ…?」
もちろんやったのは犯人に決まっている。驚いたのは僕が戻ってくるまでのたった数分で、あの死体2つを持ち去ったことだ。車輪の跡もないし…不気味だった。僕自身の震えは恐怖だったのか、それとも興奮だったのか、何の震えだったのかはよく分からなかった。
でも、死体が無いのでは警察へ通報しても仕方がないし、面倒くさくなりそうだと考えて、そのまま現場を立ち去ろうとした。その時、風邪薬の錠剤の様なものが3錠落ちているのを見つけた。▼マークが刻まれている。タトゥーの入った死体が倒れていた辺りの位置だろう。なんの薬か分からなかったが、興味本位でポケットに押し込んだ。そして、何枚か血溜まりの写真を撮って帰宅し、公園で起こった事を頭の中で整理することにした。
・再び聞こえた殴打の音。
・発信源は消えたあの2人。もしくはその他の人物(犯人)
・被害者その1、両肘から先の無いウチの中学の卒業生。"champion"とタトゥーが入っていた。
・被害者その2、顔が潰れ、内臓が飛び出た不良生徒。右腕がもがれ、仰向けで倒れていた。
・2人の共通点は"同じ学校の生徒"だということ。
・1度離れて僕が戻るまでの数分間で死体が消えた。
・2人は確実に絶命していた。つまり、誰かが死体を持ち去ったことになる。2つの死体を運ぶのは、容易ではない。時間も限られていることを踏まえると恐らく複数犯でないと難しい。
・死体を隠す必要があったなら、それを目撃してしまった僕って…結構、やばいのかもしれない。
SNSでも死んでいた2人の情報を探してみようと思ったが、名前もあだ名もわからないのでは検索の仕様がない。どうしようもないので"やばい時"が来たら考えよう。というところに落とし込み、自分を落ち着かせた。
その晩に寝付けなかったのは、恐怖もあったかもしれないが、この刺激の足りない「今」を埋めてくれる「何か」が僕の身の回りで起き始めていると気づき、興奮していたのかもしれない…。
翌日。"不良のことは不良に聞こう。"ということで中島くんのことと、死んでいた2人について侠山くんに聞く為に、学校へ行かずに病院へとやってきた。
どこへ彼が搬送されたか分からなかったから、ひとまず学校から一番近い病院に来てみた。平日の午前中に登場した学ランを着た中学生は、受付スタッフに不審な目で見られ、「そんな患者は居ませんよ。」と遇らわれてしまった。
しかし、彼が入院しているのが302号室だと、他の看護師が話している声が聞こえてきて分かった。「態度の悪い金髪のクソガキ」と言っていたので、まず間違いない。
病室の間に到着し『ガラっ』と開けてみると、6人部屋の1番奥のベッドに侠山くんの姿を見つけた。他のベッドは全てカーテンが閉められていた。侠山君は上半身を起こし、窓の外を眺めていた。
早速近づいて呼びかけてみた。
「やぁ。」
「……お前かよ。」
眉間に皺を寄せて彼は僕を見たが、すぐに皺は消えた。
学校では逆立っている前髪も下りていて、印象が若干優しくなっている。
「最初の見舞人がお前かぁ。…俺のツレはまだ誰も来てくれてねぇよ。」
「誰も君がこの病院に入院してるなんて、知らないんじゃないの?学校じゃ知らされていないと思うし…まぁ悪かったね、一番手が僕で。純粋に大丈夫かなって思ってね。」
純粋に嘘をついてみた。
「ふん、嘘つけよ。…で、なんだよ。」
僕は嘘をつく才能がないらしく、すぐにバレてしまった。仕方がないので正直に話すことにした。
「はは、バレたかぁ。実はね、中島くんが君を刺す前って、どんな感じだったのかなっていうのが気になってさ、それを聞きたかったんだ。」
「そういうことか…。」
彼は頭をかいて、刺された腹部のあたりに手を当てた。
少しだけ間があったが「あん時……。」と語り始めた。
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