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音が聞こえた
死んだの?
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窓が割れたというか、誰かが割ったんだろう。女生徒の悲鳴もいくつか一緒に聞こえる。トイレ前の廊下かな?と予想しながら教室を出てみた。
そういえば、考え事をしてる間に2人目の小動物もとい…中島くんが連れ出されたんだっけ。ついさっき教室内で起きていたできごとが頭の中をよぎる。
トイレの出入口辺りが野次馬でごった返しているのが見える。しかし漂う空気が妙だ。
僕は少し早足になりながらトイレへと向かった。僕が向かって来ているのに気づいた男子生徒達はギョッとしてスムーズに道を開けてくれた。
野次馬の前に出た僕は絵面を見て驚いた。"小動物1匹対ライオン6頭"という小動物の圧倒的に不利な状況だったはずだ。でもそこに居たのはライオン1頭が倒れている。小動物に目をやると、彼が握り締めていたのは果物ナイフ。血が滴っている。
恐らく果物ナイフは危険を察知した小動物の最終兵器だったんだろう。その小さな蹄にライオンはやられてしまったんだ。その威力に気づかず追い詰めたバカ猫は、どこの誰だと窓側に目をやった。
なんと、ライオン達のボスである侠山くんだった。うつ伏せで倒れている彼は、腹部を両手で押さえて
「うぅうぅ…。」
そんなくぐもった声で呻いている。血溜まりが小さくできている。
立ち位置から予想すると、恐らくトイレの中で侠山くんは不意を突かれ、中島くんに突進された。そして刺されたまま外に追いやられ、トイレの向かいにあった窓に突っ込み、ガラス窓を割ったのだろう。
突然のことだったからなのか、仲間のライオン達はトイレの前で口をだらしなく開けて立ち尽くしている。どうしたらいいのか分からないのかもしれないが、誰1人刺されているボスに近寄ろうとしない。
中島くんは、肩を小さくカタカタと震わせている。この状況になり驚いているのか、刺してしまったことに怯えているのか、分からないが彼は震えている。しかし、細身でひょろりとして気弱そうな彼がとんだ武器を隠し持っていたものだ。でもなんだ、この違和感は…?
周りからはまだ教師がやって来る雰囲気はなかったので、僕はひとまず中島くんを視界から外さないように侠山くんに近づいた。僕が動くと同時に野次馬の中からは
「中島やべぇ。」
「侠山、死んだの?」
「ざまぁみろ。」
などと、虫の鳴くような声が漏れ始めた。そして写真を撮る音や、動画を回す音がして、それが気に入らなかった。僕は彼らを一瞬眺めてみるとすぐに口をつむんだようだった。
倒れている彼の隣まで来ると中島くんと向き合うようにしてしゃがみ込んで声をかけた。
「死んだの?侠山くん。」
「…んな訳ねぇだろ。」
死に損ないに悪態をつかれるとは。まぁ、これなら大丈夫かな。
「でも君が死んだら喜ぶ人も多いみたいだよ。可哀想に。」
「…よく喋る野郎だったんだな、おま…ごほ!」
僕が話しかけたばかりに負荷をかけてしまった。侠山くんは咳き込んで苦しそうにゴロリと仰向けになった。学ランのボタンは全て開けていて、カッターシャツが真っ赤に染まっているのが分かった。早く病院に運んだ方がいいと誰もが判断しただろう。
その時僕は急激に気温が上がったような感覚に陥った。まるで服を着たままサウナに放り込まれた様な感覚だ。ドッと汗が吹き出たのだ。そして今度は北極を目の前にした様な寒気がやってきた。
ん…目の前…?
そういえば、考え事をしてる間に2人目の小動物もとい…中島くんが連れ出されたんだっけ。ついさっき教室内で起きていたできごとが頭の中をよぎる。
トイレの出入口辺りが野次馬でごった返しているのが見える。しかし漂う空気が妙だ。
僕は少し早足になりながらトイレへと向かった。僕が向かって来ているのに気づいた男子生徒達はギョッとしてスムーズに道を開けてくれた。
野次馬の前に出た僕は絵面を見て驚いた。"小動物1匹対ライオン6頭"という小動物の圧倒的に不利な状況だったはずだ。でもそこに居たのはライオン1頭が倒れている。小動物に目をやると、彼が握り締めていたのは果物ナイフ。血が滴っている。
恐らく果物ナイフは危険を察知した小動物の最終兵器だったんだろう。その小さな蹄にライオンはやられてしまったんだ。その威力に気づかず追い詰めたバカ猫は、どこの誰だと窓側に目をやった。
なんと、ライオン達のボスである侠山くんだった。うつ伏せで倒れている彼は、腹部を両手で押さえて
「うぅうぅ…。」
そんなくぐもった声で呻いている。血溜まりが小さくできている。
立ち位置から予想すると、恐らくトイレの中で侠山くんは不意を突かれ、中島くんに突進された。そして刺されたまま外に追いやられ、トイレの向かいにあった窓に突っ込み、ガラス窓を割ったのだろう。
突然のことだったからなのか、仲間のライオン達はトイレの前で口をだらしなく開けて立ち尽くしている。どうしたらいいのか分からないのかもしれないが、誰1人刺されているボスに近寄ろうとしない。
中島くんは、肩を小さくカタカタと震わせている。この状況になり驚いているのか、刺してしまったことに怯えているのか、分からないが彼は震えている。しかし、細身でひょろりとして気弱そうな彼がとんだ武器を隠し持っていたものだ。でもなんだ、この違和感は…?
周りからはまだ教師がやって来る雰囲気はなかったので、僕はひとまず中島くんを視界から外さないように侠山くんに近づいた。僕が動くと同時に野次馬の中からは
「中島やべぇ。」
「侠山、死んだの?」
「ざまぁみろ。」
などと、虫の鳴くような声が漏れ始めた。そして写真を撮る音や、動画を回す音がして、それが気に入らなかった。僕は彼らを一瞬眺めてみるとすぐに口をつむんだようだった。
倒れている彼の隣まで来ると中島くんと向き合うようにしてしゃがみ込んで声をかけた。
「死んだの?侠山くん。」
「…んな訳ねぇだろ。」
死に損ないに悪態をつかれるとは。まぁ、これなら大丈夫かな。
「でも君が死んだら喜ぶ人も多いみたいだよ。可哀想に。」
「…よく喋る野郎だったんだな、おま…ごほ!」
僕が話しかけたばかりに負荷をかけてしまった。侠山くんは咳き込んで苦しそうにゴロリと仰向けになった。学ランのボタンは全て開けていて、カッターシャツが真っ赤に染まっているのが分かった。早く病院に運んだ方がいいと誰もが判断しただろう。
その時僕は急激に気温が上がったような感覚に陥った。まるで服を着たままサウナに放り込まれた様な感覚だ。ドッと汗が吹き出たのだ。そして今度は北極を目の前にした様な寒気がやってきた。
ん…目の前…?
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