この指灯せ

コトハナリユキ

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声なき声を

被害者と傍観者2/4

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「中島くん。」
「…え。べ、紅原…くん?」
「あはは…やぁ。」

 僕らがいきなり現れて、中島くんは静かに驚いて、少し怯えた様子だった。

「ごめんね。急に来て。」
「いや、ぜんぜん…びっくりは…したけど。」

 まぁ、なにひとつ接点のなかった"曰く付きのクラスメイト"が突然現れたら、それは驚くよね。

「おれは鍋中の谷崎だ。よろしくな!」
「あ、中島です。よろしく…。」

 谷崎は自分から自己紹介してくれたが、見た目も少々やんちゃだから気さくに話しかけても、中島くんはまだ気負いしている様子だった。
 僕らは勝手に椅子に腰かけさせてもらった。中島くんにさして興味はなかったけど、核心に入る前に少しずつ違う部分から聞いてみることにした。

「気分はどう?…もう落ち着いた?」
「あぁ、うん。僕はもう大丈夫。でも、とんでもないことをしちゃったよ。」

 一瞬僕のことを見て、少し俯いて中島くんは続けた。

「侠山くんにも、紅原くんにもひどいことをした。…ごめんなさい。」
「…。」

 僕は、それは違うと思った。

「謝らないで。僕は勝手に首を突っ込んだし、無傷だった。それに今回の件はそもそも侠山くんが悪いんだ。君は何も悪くないよ。」

 僕は事実を伝え、自分の考えを伝えた。

「でもナイフで襲うなんて、とんでもないことだよ。」

 首を小さく左右に振りながら中島くんは応えた。彼は自分を許せないみたいだった。

「あれは、自分を守る為にやった"正当防衛"ってやつじゃないか。」
「…そうなのかもしれないけど。」

 僕は少し乗り出して聞いた。

「中島くん。あの時なにがあったのか教えて欲しい。」
「え。」
「侠山くんが言ってたんだ。あの時、君は"何か"を飲み込んだって。」
「…。」
「勇気の出る薬…。」

 少し戸惑った様子だったけど、中島くんは語り始めた。

「勇気?」
「…そう。僕はある人に、あの薬を渡されたんだ。」

 中島くんはずっと誰にも言えなかった、という話を僕らにしてくれた。
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