この指灯せ

コトハナリユキ

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いっこずつ

おしまい。

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 その後、雉子本刑事が駆けつけ事件は公となった。
 いじめ問題が新たに大きく報道されたが、またすぐに内容が内容なだけに報道規制が入った。
 そして、神無咲刑事と"CRY"の元締との繋がりが明らかになり、依頼を受けた神無咲刑事がミロクさんを銃殺したことを自供した。
 しかし、彼女が搬送される際に、元締めが送り込んだと思われる鉄砲玉に神無咲刑事は刺殺され"CRY"に関する捜査もこれ以上、進むことはなかった。
 
 高柳さんが最後に見せたあの笑顔を、僕はきっと一生忘れないだろう。

 いじめは子供の間でも大人の間でも完全になくなることはないと思う。だってそういう生き物だから。僕らも結局動物と大差ないんだ。猿山の大将が弱い猿に酷い扱いをするのと同じで、人間の心の歪みがある限り"いじめ問題"とは永遠に僕らは向き合っていかないといけないだろう。
 
 僕はあの時、高柳さんに"人は人を信じることはできる""人は変わることができる"と、そんなことを伝えた。僕はあの言葉を侠山くんが、ちゃんと聞いていてくれたんだなと思っている。
 
 あれから1年。谷崎と侠山くんと僕は、変わらず一緒に居る。
 いつものコンビニ裏で今日も谷崎がやって来るのを2人で待っていた。

「もうあれから…1年だね、侠山くん。」
「あー…そうだなぁ。」

 侠山くんはぽーっとエナジードリンクを飲んでいる。

「あれは、大変な1ヶ月だったね。」
「そうだよなぁ…。」

 僕らには日常が戻っていた。
 侠山くんはあれからしばらく学校に来なかったけれど、ある日学校に戻ってきた。当時リーダー格になっていた望月は、侠山くんに喧嘩を仕掛けたが秒速でのされてしまった。そして、再度ボスに返り咲いた侠山くんだった。
 周りはまたあの頃のような暗黒時代が到来することを恐れていたが、それに反して彼には、以前のような凶暴さは無く、逆に不良生徒たちをまとめるリーダーとして、現在は釜鍋中学2年をシメている。

 僕は彼のことを信じてみてよかった。変われない人も居れば、変われる人もいる。これもまた真実だ。
 

「あ、谷崎来たね。」
「ん?…おぉ。」

 谷崎が走ってくる姿が見えた。

「おいおい!また事件だぞ!!」
「また?」
「どーせ誰かがどっかで喧嘩したとか、そんなんだろ?」

 ゼーゼーと息を切らす谷崎を僕らは笑っていた。それを「いや、お前ら聞け。」と制止して谷崎は言う。

「また不良が失踪してるらしい。」
「「…マジか。」」







おしまい。
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