72 / 73
いっこずつ
信じること
しおりを挟む
「はは…奴らが…変われる訳ないじゃないか…。」
そう言いながらも高柳さんの涙は止まらない。そして手がまた大きく震えている。
「じゃあ…なんで泣くんですか。高柳さん、あの3人のこと…彼らのことでさえ、本当は信じたかったんじゃないですか?」
「なに…?」
「高柳さん…あなたは"いつかは彼らも変わってくれる"って信じたかったんじゃないんですか?」
「ちがう。そんなはずない…!」
「なら、どうして僕らに話をしたんですか?本当は、高柳さん…殺人を止めて欲しかったし、わかって欲しかったんじゃないんですか?」
「ちがう…ちがう…」
高柳さんは後ずさりし、息もさらに小刻みになっていく。
「あの古本屋で見せた笑顔が、本当の高柳さんのものなら…あなたは本当は優しくて、人を信じれる人だったんでしょう!?」
「それ以上…言うな!…もう言うな!」
悲鳴を上げるように彼は僕の言葉を止めようと叫ぶ。
「僕は…高柳さんのことを優しい人だって信じてます。僕らを殺せる瞬間なんていくらでもあった…でもあなたは…。」
「やめろぉ!…もう…もう全部が遅いんだよ…!僕は」
部屋中に響く絶叫とともに、高柳さんは持っていた薬をすべて飲み込んだ。
「逃げよう空也!もうあいつどーなるか分かんないって!やばいって…!」
谷崎が侠山くんを背負って走ってきた。
「いや…ダメだ。」
「なんでだよ…おい!」
薬の効果で高柳さんの体は大きく大きく膨らんでいった。僕らはそれをただ眺めていた。限界まで大きくなった時点で高柳さんは悲しそうな表情で僕を見た。
「…。」
無言の数秒だった。
そして一気に体が収縮し、元の体のサイズよりも、さらに細く、骨と皮だけの身体になった姿が残った。
「げほぉっ!」
大量に血を吐き、ガクンと膝から崩れ落ちたが、それでも彼は僕を見つめていた。
ヒューヒューと呼吸音がかすかに聞こえる。
「…高柳さん。」
「空也くん…僕は…。」
高柳さんが笑った瞬間、彼の体は一瞬で膨張し、風船が弾けるように吹き飛んだ。
"CRY"の過剰摂取による超反応に身体がついていかなかったんだろう。
僕らは彼の血を浴び、声が出せなかった。
"なんで…。"
その言葉だけが、心の中で何度も何度も出ては消えていった。
そう言いながらも高柳さんの涙は止まらない。そして手がまた大きく震えている。
「じゃあ…なんで泣くんですか。高柳さん、あの3人のこと…彼らのことでさえ、本当は信じたかったんじゃないですか?」
「なに…?」
「高柳さん…あなたは"いつかは彼らも変わってくれる"って信じたかったんじゃないんですか?」
「ちがう。そんなはずない…!」
「なら、どうして僕らに話をしたんですか?本当は、高柳さん…殺人を止めて欲しかったし、わかって欲しかったんじゃないんですか?」
「ちがう…ちがう…」
高柳さんは後ずさりし、息もさらに小刻みになっていく。
「あの古本屋で見せた笑顔が、本当の高柳さんのものなら…あなたは本当は優しくて、人を信じれる人だったんでしょう!?」
「それ以上…言うな!…もう言うな!」
悲鳴を上げるように彼は僕の言葉を止めようと叫ぶ。
「僕は…高柳さんのことを優しい人だって信じてます。僕らを殺せる瞬間なんていくらでもあった…でもあなたは…。」
「やめろぉ!…もう…もう全部が遅いんだよ…!僕は」
部屋中に響く絶叫とともに、高柳さんは持っていた薬をすべて飲み込んだ。
「逃げよう空也!もうあいつどーなるか分かんないって!やばいって…!」
谷崎が侠山くんを背負って走ってきた。
「いや…ダメだ。」
「なんでだよ…おい!」
薬の効果で高柳さんの体は大きく大きく膨らんでいった。僕らはそれをただ眺めていた。限界まで大きくなった時点で高柳さんは悲しそうな表情で僕を見た。
「…。」
無言の数秒だった。
そして一気に体が収縮し、元の体のサイズよりも、さらに細く、骨と皮だけの身体になった姿が残った。
「げほぉっ!」
大量に血を吐き、ガクンと膝から崩れ落ちたが、それでも彼は僕を見つめていた。
ヒューヒューと呼吸音がかすかに聞こえる。
「…高柳さん。」
「空也くん…僕は…。」
高柳さんが笑った瞬間、彼の体は一瞬で膨張し、風船が弾けるように吹き飛んだ。
"CRY"の過剰摂取による超反応に身体がついていかなかったんだろう。
僕らは彼の血を浴び、声が出せなかった。
"なんで…。"
その言葉だけが、心の中で何度も何度も出ては消えていった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
女子高生探偵:千影&柚葉
naomikoryo
ミステリー
【★◆毎朝6時更新◆★】名門・天野家の令嬢であり、剣道と合気道の達人——天野千影。
彼女が会長を務める「ミステリー研究会」は、単なる学園のクラブ活動では終わらなかった。
ある日、母の失踪に隠された謎を追う少女・相原美咲が、
不審な取引、隠された地下施設、そして国家規模の陰謀へとつながる"闇"を暴き出す。
次々と立ちはだかる謎と敵対者たち。
そして、それをすべて見下ろすように動く謎の存在——「先生」。
これは、千影が仲間とともに"答え"を求め、剣を抜く物語。
学園ミステリー×クライムサスペンス×アクションが交錯する、極上の戦いが今、始まる——。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

怪奇事件捜査File2 ドッペルゲンガーと謎の電話編
揚惇命
ミステリー
首なしライダー事件を解決して3ヶ月経った夏の暑さの厳しい中、出雲美和の新たな事件が幕を開ける。今度の怪異はドッペルゲンガー、それにえっメリーさん。浮かび上がる死のメッセージの数々、突然出られなくなる温泉宿。外との連絡も途絶え。首なしライダー事件で世話になった鈴宮楓と山南宇宙、閉鎖された温泉宿に取り残された人達と共にこの温泉宿から無事に脱出することはできるのか。怪異ドッペルゲンガーの正体とは。怪異メリーさんとの関係は。謎が謎を呼ぶ。迫り来る死の恐怖の数々に出雲美和は立ち向かうことができるのか。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
マクデブルクの半球
ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。
高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。
電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう───
「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」
自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。
virtual lover
空川億里
ミステリー
人気アイドルグループの不人気メンバーのユメカのファンが集まるオフ会に今年30歳になる名願愛斗(みょうがん まなと)が参加する。
が、その会を通じて知り合った人物が殺され、警察はユメカを逮捕する。
主人公達はユメカの無実を信じ、真犯人を捕まえようとするのだが……。
月夜のさや
蓮恭
ミステリー
いじめられっ子で喘息持ちの妹の療養の為、父の実家がある田舎へと引っ越した主人公「天野桐人(あまのきりと)」。
夏休み前に引っ越してきた桐人は、ある夜父親と喧嘩をして家出をする。向かう先は近くにある祖母の家。
近道をしようと林の中を通った際に転んでしまった桐人を助けてくれたのは、髪の長い綺麗な顔をした女の子だった。
夏休み中、何度もその女の子に会う為に夜になると林を見張る桐人は、一度だけ女の子と話す機会が持てたのだった。話してみればお互いが孤独な子どもなのだと分かり、親近感を持った桐人は女の子に名前を尋ねた。
彼女の名前は「さや」。
夏休み明けに早速転校生として村の学校で紹介された桐人。さやをクラスで見つけて話しかけるが、桐人に対してまるで初対面のように接する。
さやには『さや』と『紗陽』二つの人格があるのだと気づく桐人。日によって性格も、桐人に対する態度も全く変わるのだった。
その後に起こる事件と、村のおかしな神事……。
さやと紗陽、二人の秘密とは……?
※ こちらは【イヤミス】ジャンルの要素があります。どんでん返し好きな方へ。
「小説家になろう」にも掲載中。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる