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メシアの誕生
死んでいけ
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僕は侠山を地下室の椅子に座らせ、縛り付けた。
それから一日ずつ彼の身体をもいでいった。指1本ずつ、指がなくなったら手、そして腕…そんなかんじで。
最初は強気だった彼も自分の状況を把握し、絶望し、許しを乞う日が続いたが、右手が無くなったあたりで完全に諦めたようだった。
万が一自殺されては困るので猿轡で舌を噛み切らないようにしたり、出血多量で死なれても困るので止血や輸血をしっかり行い、消毒だって欠かさなかった。栄養として点滴も打っていた。
そう…彼は殺される為に生かされる日々を過ごしていたのだ。
侠山を拉致した翌日から、藤宮と佐川からの連絡が彼のスマホに何度も入っていたが、しばらくは放置していた。
彼のスマホには僕を痛ぶった動画が大量に保存されていた。
「ねぇ侠山くん…これをしている時。君はどんな気持ちだった?」
そう尋ねながら、一緒に動画を眺めた。全く同じことを、彼にはしてあげた。プールに落とすことはできなかったのはちょっと心残りではある…。
侠山の耳を削いだのも、謎の薬品複数種を右目に点眼したのも、確かその頃だ。彼が僕の辛かった気持ちを痛感すると同時に、彼の気持ちも少しだけ分かった気もした。
人は人をいじめている時、不思議と快感を感じる。彼も一種の病気だったのかもしれない。…まぁ、だからといって許されることは決してないけれど。
僕は侠山の拉致から数日してから、藤宮と佐川に連絡した。侠山の番号から電話がかかってきて出てみたら、相手が僕なんだから、さぞ驚いただろうね。
昼間に2人を近所の緑地公園へ呼び出した。
「高柳ぃ、どーなっとんだ?」
「なんでおめーが侠山のスマホ持ってんだこらぁ!」
2人ともやけに荒ぶっている。侠山がどのような状況にあるか分からないから怖いのだろうか。
「…ここじゃあ目立つし、公園の中に入らないかい?」
臨戦態勢の2人を緑地公園の中へ連れ込んだ。
かなり奥まで行って、よっぽど音や声が漏れないところまで進んだ。
「おい!どこまで行くつもりだ!…侠山はどこだなんだコラぁ!?」
しびれを切らして佐川が大声で捲し立てるが、僕は動じない。
「少ししたら…連れていくよ。」
「あ?」
「…僕は自分はどうなってもいいと思ってた。でも、君らは超えてはいけない一線を超えたんだ。」
「なに言ってんだてめ。」
佐川が殴りかかってきたので僕は一歩下がって避けた。
「償ってもらうよ。」
薬を取り出して僕は飲み込んだ…その瞬間だった。
『ド!』
鈍い音が僕の身体中に響いた。藤宮が素早い動きで僕の腹部に拳を入れたのだ。ただ、僕にはすでに効いていなかった。藤宮は僕の顔を見上げて"ありえない"という表情を浮かべた。
「た、倒れんのか…?」
「藤宮ぁ!なに力抜いてんだこらぁ!」
「…ぬ、抜いとる訳…ねぇだろ。」
怒号を飛ばす佐川とは対照的に、僕の変化に気づいた藤宮は曲がりなりにもボクサーだった。
「あぁ…抜いてないね。きっと誰でもダウンする拳打だったと思うよ、藤宮くん…おつかれさま。」
「え。」
『ドサっ。』
「!」
藤宮の右腕を手刀で切り落としてみせると、彼は悲鳴を上げだした。それを見て佐川は腰を抜かしてしまったようだった。僕は落とした腕を拾って2人に語りかけた。
「さぁ…自分たちが今まで、僕に何をしてきたかをよく思い出してね。そして…」
「おいどーなってんだよ、こいつ…!!」
2人はもう動けなかった。
「…死んでいけ。」
僕の言葉は聞こえていたんだろうか…あっという間に殺してしまった。反省する時間は、与えてあげられなかったかもしれない。
「…。」
僕は改めて現状を見渡した。
思ったよりもバラバラにしてしまったな。一度で持ち帰るのは無理だ。僕は拾える部分を持って一度帰宅した。
それから一日ずつ彼の身体をもいでいった。指1本ずつ、指がなくなったら手、そして腕…そんなかんじで。
最初は強気だった彼も自分の状況を把握し、絶望し、許しを乞う日が続いたが、右手が無くなったあたりで完全に諦めたようだった。
万が一自殺されては困るので猿轡で舌を噛み切らないようにしたり、出血多量で死なれても困るので止血や輸血をしっかり行い、消毒だって欠かさなかった。栄養として点滴も打っていた。
そう…彼は殺される為に生かされる日々を過ごしていたのだ。
侠山を拉致した翌日から、藤宮と佐川からの連絡が彼のスマホに何度も入っていたが、しばらくは放置していた。
彼のスマホには僕を痛ぶった動画が大量に保存されていた。
「ねぇ侠山くん…これをしている時。君はどんな気持ちだった?」
そう尋ねながら、一緒に動画を眺めた。全く同じことを、彼にはしてあげた。プールに落とすことはできなかったのはちょっと心残りではある…。
侠山の耳を削いだのも、謎の薬品複数種を右目に点眼したのも、確かその頃だ。彼が僕の辛かった気持ちを痛感すると同時に、彼の気持ちも少しだけ分かった気もした。
人は人をいじめている時、不思議と快感を感じる。彼も一種の病気だったのかもしれない。…まぁ、だからといって許されることは決してないけれど。
僕は侠山の拉致から数日してから、藤宮と佐川に連絡した。侠山の番号から電話がかかってきて出てみたら、相手が僕なんだから、さぞ驚いただろうね。
昼間に2人を近所の緑地公園へ呼び出した。
「高柳ぃ、どーなっとんだ?」
「なんでおめーが侠山のスマホ持ってんだこらぁ!」
2人ともやけに荒ぶっている。侠山がどのような状況にあるか分からないから怖いのだろうか。
「…ここじゃあ目立つし、公園の中に入らないかい?」
臨戦態勢の2人を緑地公園の中へ連れ込んだ。
かなり奥まで行って、よっぽど音や声が漏れないところまで進んだ。
「おい!どこまで行くつもりだ!…侠山はどこだなんだコラぁ!?」
しびれを切らして佐川が大声で捲し立てるが、僕は動じない。
「少ししたら…連れていくよ。」
「あ?」
「…僕は自分はどうなってもいいと思ってた。でも、君らは超えてはいけない一線を超えたんだ。」
「なに言ってんだてめ。」
佐川が殴りかかってきたので僕は一歩下がって避けた。
「償ってもらうよ。」
薬を取り出して僕は飲み込んだ…その瞬間だった。
『ド!』
鈍い音が僕の身体中に響いた。藤宮が素早い動きで僕の腹部に拳を入れたのだ。ただ、僕にはすでに効いていなかった。藤宮は僕の顔を見上げて"ありえない"という表情を浮かべた。
「た、倒れんのか…?」
「藤宮ぁ!なに力抜いてんだこらぁ!」
「…ぬ、抜いとる訳…ねぇだろ。」
怒号を飛ばす佐川とは対照的に、僕の変化に気づいた藤宮は曲がりなりにもボクサーだった。
「あぁ…抜いてないね。きっと誰でもダウンする拳打だったと思うよ、藤宮くん…おつかれさま。」
「え。」
『ドサっ。』
「!」
藤宮の右腕を手刀で切り落としてみせると、彼は悲鳴を上げだした。それを見て佐川は腰を抜かしてしまったようだった。僕は落とした腕を拾って2人に語りかけた。
「さぁ…自分たちが今まで、僕に何をしてきたかをよく思い出してね。そして…」
「おいどーなってんだよ、こいつ…!!」
2人はもう動けなかった。
「…死んでいけ。」
僕の言葉は聞こえていたんだろうか…あっという間に殺してしまった。反省する時間は、与えてあげられなかったかもしれない。
「…。」
僕は改めて現状を見渡した。
思ったよりもバラバラにしてしまったな。一度で持ち帰るのは無理だ。僕は拾える部分を持って一度帰宅した。
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