この指灯せ

コトハナリユキ

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メシアの誕生

刻まれる痛み

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「はい、どーん。」
「!」

『ばしゃーん…。』

 僕は校内の野外プールに裸で突き落とされた。まだ清掃がされておらず水は黄緑色になっていて汚いし虫の死骸だらけだった。

「はい高柳くーん、顔を出して口を開けてくださーい。」
「?」

 僕は言う通りに口を開ける。

「よしお前ら小便かけろ。」
「「え。」」
「いいか高柳、全部飲めよ。おら出してやれ。」

 そう言って侠山は僕が彼らの小便を飲むのをスマホで動画撮影をして笑っていた。
 ある日は学生食堂。食堂には電子レンジがあり、買ってこいと言われたレトルトカレーを袋が爆発するまで温めさせられた。

「おっけー。藤宮、こいつ羽交い締めして。佐川、こいつが口閉じないようにおさえて。」

 僕はそのカレーを口に無理矢理ねじ込まれ、口の中をおおやけどさせられた。
 彼らが厄介だったのは、金銭要求が一切なく、金で解決することができなかったことだ。彼らはお金に興味がない。ただ退屈を凌ぐことについて"僕"を使って追求していたんだ。
 次第に行為はエスカレートしていくことは目に見えていた…。

「高柳。校内のトイレを回って見つけた虫全部とって来て。」

 ゴキブリ、ハエ、蛾、、、その日の僕のランチは収集してきたソレだった。

「高柳。これ一気飲み。できなかったら右腕に根性焼き3つ。」

 そう言って渡されたのは2Lの炭酸水だった。できるはずがない…。僕の腕にはいくつも根性焼きの跡がある。

「高柳。この辺の薬品が、目に良いらしいぞ。」

 理科準備室でそう笑いながら「どの薬品が良いかなー」とぶつぶつ言っている侠山に僕は本物の恐怖を感じた。
 この人はおかしい…。
 その後で僕は、いくつかの薬品を点眼され、右目の視力を失った。あまりの激痛に初めて大声をあげた。

「お…。なんだよ、そんな声出せるのかよ。…そうかそうか。」

 今までで一番楽しそうな顔をする侠山の表情に"死"を感じた瞬間だった。

「お前が中学でいじめにあってたのは、なんとなくわかってた。だって何しても新鮮なリアクションもねーし、虫だって嫌そうな顔はしてたが諦めた面で食いやがって。それが気に入らなかったんだよな。」
「僕が…。」
「あぁ…?」
「僕が何したって…いう…」
「黙ってろや、このインキャ野郎。気持ち悪ぃーんだよ。」
「…。」

 初めて僕が彼らに楯突いたのはこの時だった。そして最初で最後だった。

「ははは。…そうだ、いいこと思いついたぜ。また明日な。」

 侠山は笑いながら理科準備室を出て行き、藤宮、佐川も続いて出て行った。

「う…うぅ…。」

 僕は右目をただ押さえていた。
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