この指灯せ

コトハナリユキ

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メシアの誕生

不敵な笑み

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 いつもの暴力タイムの時に川出が耳元で囁いた。

「俺は三木堂高校へ行く。お前も来い。これは命令だ。来ないとお前の家族を殺す。」

 僕の計画は崩れた。奴がこんなことを言い出すとは思わなかった。
 今思えば、殺人だなんて…そんなことを川出程度の男ができるはずがなかった。でも僕は2年生までの期間で洗脳されてしまったんだ。僕は意図的にまた成績を下げていくことになる。
 両親は僕の成績がみるみる落ちていくのを見て

"信じられない"
"どうしてかしら"

 と不思議そうだったが、やはり責めはしなかった。
 "僕の学生時代はもう終わったな。"そう思いながら"悪の吹き溜まり"の三木堂高校へと入学した。そしてそれと同時に、いかに川出の不良としてのレベルが低かったかを知らしめられた。
 あれは入学した日だった。また川出は同じクラス…。

「なんだてめぇコラぁ!」

『がっしゃあん!!』

 入学式の前に教室の後ろから、大きな音がした。"もう喧嘩か…。"と振り向くとあの川出が誰かにボコボコにされていた。…衝撃だった。
 僕のことを中学3年間ずっと、いじめ続けた不良のリーダーだった男が、いとも簡単に掴まれ殴られ蹴られしていた。川出がしきりに謝っている姿を見て僕は…無性に悲しかった。

 僕はあんな男に3年間を…。

「2度と俺のこと見んじゃねーぞおらぁ!!返事しろぉ!!」
「はいぃ!!」

 川出をボコボコにした男こそが、侠山だった。最後のひと蹴りを入れると侠山は教室をジロリと見渡した。その瞬間に全員が目を逸らした。しかし僕は衝撃が強すぎて目を逸らすことができなかった。教室は無音。僕と侠山だけが見合っている状況になってしまった。

「ふーん。」

 侠山はニヤリとして、そのまま教室から出ていった。

「…あ。」

 …しまった。僕はやらかしたことに気づくと、びっしょりと冷や汗をかいていた。ただただ危機感を感じた。
 川出はそのまま入院。全治一ヶ月と聞いた。だが騒ぎにもならず、処分もなかった。そういうことが日常茶飯事の学校だということだ。
 僕はそれからしばらくは穏やかな日々を過ごしていた。不良しかいない学校だから、僕と友達になろうとする人は居なかった。だけど、僕も友達を作るつもりもなかった。だから静かに過ごせていた。
 勉強は、自分からする必要がないほどにレベルが低くて、逆にどうしようかと思っていた。
 入学した日の1件で、クラスのボスになった侠山も教室では静かにしていた。すでに初日に自分のクラスではボスになっていた為、パフォーマンスをする必要がなかったからだろう。ただ別のクラスの生徒とはよく揉めているという話だけは常に耳に入ってきていた。藤宮と、佐川の3人組で喧嘩をしているという。僕には関係ない話だったが、あの日のニヤリと笑った侠山の顔だけが脳裏に焼き付いていた。

 あの強く感じられた恐怖感は、なんだったのだろう…?
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