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哀れ
地下室
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コンビニから高柳さんの家へ2人で向かった。
「侠山はどこ行ったんだ?」
「わからない。スマホを高柳さんが持ってるから、彼と連絡はとれないよ。」
「落とすか…?」
「んー、ふつーに落とす人も居るっちゃ居るしなぁ。」
そう言いながら僕は自分のスマホを取り出すと電池が切れていた。…こんな時に限って。
「いったん高柳さんに連絡したかったけど、充電切れちゃったから…このまま行こう。」
「おっけぃ。」
「…。」
「…。」
僕たちは本当は色々話したかったんだと思う。一切が具体的になっていない嫌な予感…それが現実のものになってしまう気がして、言葉が出てこなかったんじゃないかなって、今は思う。
…奇妙な薬"CRY"、それをばら撒く売人、いじめの復讐をされた中学生、消えた大学生の売人、失踪していく高校生、惨殺される死体、自宅に届く指ランプ、シリアルキラーの気持ちが分かるという少年、行方がわからない友人、家の前で拾われたスマホ…。
僕たちは、嫌な予感だけを背負いながらも、高柳さんの家へ向かうしかなかった。
『ピンポーン。』
高柳さんの家の呼び鈴を鳴らすと、すぐに高柳さんは玄関から出てきた。まるで扉の前で待っていたかのようだ。
「やぁ、早かったね。…あれ、友達も一緒かい。」
前に会った時と同じような笑顔が、一瞬曇ったように見えた。
「あ、はい。彼は谷崎って言います。」
「…どーもっす。」
谷崎は僕の隣で高柳さんに挨拶した。
「…はじめまして。僕は高柳、さぁ上がって。」
「あ、いえ…侠山くんのケータイを受け取りに来ただけなんでお構いなく…。」
「この時間だ。午後の授業をサボって来たんでしょう?…なら時間もあるよね?」
「あ…まぁ、そうですけど。」
あれ?
「ならいいじゃないか。お茶でも飲んでいって欲しいなぁ。」
「じゃ…じゃあお邪魔します。」
なんだか、変だ。
招き入れられ、ドアの鍵はかけられた。
「今の時間、両親はともに仕事で居ないから、気楽にしてね。」
「…はい。」
中はいたって普通で、清潔にされている家だった。玄関も良い香りがする。
「僕の部屋へ案内するよ。地下にあるんだ。」
「え…地下があるんすか。」
屋根裏部屋がある家はそこそこあれど、地下に部屋がある家は多くはなく、僕も谷崎も少し驚いた。
「もともとは父親が書斎として使っていたんだけど、その部屋を僕にくれたんだよ。」
「へぇ。」
そう言うと高柳さんは奥の階段を指さした。
「あの階段を降りたら一部屋しかないから、先に入っててくれるかな?…僕はお茶を入れてくるよ。」
「わかりました。」
そう応えると高柳さんは別の部屋へと消えていった。
「ど、どーするよ。」
「…どーするって、見た感じめちゃめちゃ普通の家だし、侠山くんも居なさそうだから、お茶飲んで、スマホもらって帰ろう。」
「そ、そだな。」
階段を降りていくと奥に部屋の扉が見えた。"立入禁止"と赤いスプレーで書いてある。それを見て谷崎は明らかに引いていた。
「…こ、ここか?」
「まぁこれくらいは…書いたりするんじゃない?年頃っていうかさ。」
「そうかな…。」
『ギィ…。』
僕がドアを半分くらい開けた辺りで、谷崎がうしろから言った。
「なんつーかさ…どんな気分なんだろうな。」
「…どういうこと?」
「自分を虐めていた奴の弟の友達に、お茶を出すってのはさ…。」
「谷崎さぁ…」
僕が回答に困り、後ろを振り返ると、笑顔の高柳さんが谷崎の背後に立っていた。
「どんな気分かって?…最高の気分に決まってるじゃないか。」
「侠山はどこ行ったんだ?」
「わからない。スマホを高柳さんが持ってるから、彼と連絡はとれないよ。」
「落とすか…?」
「んー、ふつーに落とす人も居るっちゃ居るしなぁ。」
そう言いながら僕は自分のスマホを取り出すと電池が切れていた。…こんな時に限って。
「いったん高柳さんに連絡したかったけど、充電切れちゃったから…このまま行こう。」
「おっけぃ。」
「…。」
「…。」
僕たちは本当は色々話したかったんだと思う。一切が具体的になっていない嫌な予感…それが現実のものになってしまう気がして、言葉が出てこなかったんじゃないかなって、今は思う。
…奇妙な薬"CRY"、それをばら撒く売人、いじめの復讐をされた中学生、消えた大学生の売人、失踪していく高校生、惨殺される死体、自宅に届く指ランプ、シリアルキラーの気持ちが分かるという少年、行方がわからない友人、家の前で拾われたスマホ…。
僕たちは、嫌な予感だけを背負いながらも、高柳さんの家へ向かうしかなかった。
『ピンポーン。』
高柳さんの家の呼び鈴を鳴らすと、すぐに高柳さんは玄関から出てきた。まるで扉の前で待っていたかのようだ。
「やぁ、早かったね。…あれ、友達も一緒かい。」
前に会った時と同じような笑顔が、一瞬曇ったように見えた。
「あ、はい。彼は谷崎って言います。」
「…どーもっす。」
谷崎は僕の隣で高柳さんに挨拶した。
「…はじめまして。僕は高柳、さぁ上がって。」
「あ、いえ…侠山くんのケータイを受け取りに来ただけなんでお構いなく…。」
「この時間だ。午後の授業をサボって来たんでしょう?…なら時間もあるよね?」
「あ…まぁ、そうですけど。」
あれ?
「ならいいじゃないか。お茶でも飲んでいって欲しいなぁ。」
「じゃ…じゃあお邪魔します。」
なんだか、変だ。
招き入れられ、ドアの鍵はかけられた。
「今の時間、両親はともに仕事で居ないから、気楽にしてね。」
「…はい。」
中はいたって普通で、清潔にされている家だった。玄関も良い香りがする。
「僕の部屋へ案内するよ。地下にあるんだ。」
「え…地下があるんすか。」
屋根裏部屋がある家はそこそこあれど、地下に部屋がある家は多くはなく、僕も谷崎も少し驚いた。
「もともとは父親が書斎として使っていたんだけど、その部屋を僕にくれたんだよ。」
「へぇ。」
そう言うと高柳さんは奥の階段を指さした。
「あの階段を降りたら一部屋しかないから、先に入っててくれるかな?…僕はお茶を入れてくるよ。」
「わかりました。」
そう応えると高柳さんは別の部屋へと消えていった。
「ど、どーするよ。」
「…どーするって、見た感じめちゃめちゃ普通の家だし、侠山くんも居なさそうだから、お茶飲んで、スマホもらって帰ろう。」
「そ、そだな。」
階段を降りていくと奥に部屋の扉が見えた。"立入禁止"と赤いスプレーで書いてある。それを見て谷崎は明らかに引いていた。
「…こ、ここか?」
「まぁこれくらいは…書いたりするんじゃない?年頃っていうかさ。」
「そうかな…。」
『ギィ…。』
僕がドアを半分くらい開けた辺りで、谷崎がうしろから言った。
「なんつーかさ…どんな気分なんだろうな。」
「…どういうこと?」
「自分を虐めていた奴の弟の友達に、お茶を出すってのはさ…。」
「谷崎さぁ…」
僕が回答に困り、後ろを振り返ると、笑顔の高柳さんが谷崎の背後に立っていた。
「どんな気分かって?…最高の気分に決まってるじゃないか。」
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