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哀れ
拾われた電話
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侠山くんが僕らの集まりに顔を出さなくなって何日か経っていた。ところが、昼過ぎに侠山くんから僕に電話があった。出てみるとなんと、聞こえてきた声は高柳さんだった。
「あれ、高柳さん…?これ、侠山くんのケータイじゃ…?」
「うん。そうなんだ。なんでか…家の前で拾ったんだ。」
…拾った?
「そ、そうなんですか。」
「うん、それでね。悪い気はしたんだけど、誰のケータイか確かめないとと思って、中を見てみると登録の中に君の名前を見つけたんだよ。それで連絡したんだ。」
「あ、そういうことだったんですね。」
なんだ?いつもと声の感じが違う…。なんだか嫌な空気だ。
「どこからか、かかってくるかなって思ったんだけど、本人からの連絡はなくてさ、よかったら空也くん、友達の代わりに、うちに取りに来てもらえないかな?」
「家に…ですか?」
「そう…今日はずっと家に居るからさ。」
「あ…わかりました。じゃあどこかで取りに行きます。」
「あぁ、ありがとう。待ってるよ。」
なんだか以前会った時と何かが違う。
僕はすぐに谷崎にコールしながら校内でプール横に向かってみた。
「おう!どうした空也、電話とか、珍しいな。」
「うん、ちょっとね。…あのさ、今、高柳さんから連絡があって…」
「え?なんで?」
僕はことの経緯と、自分が感じた空気感を谷崎に説明した。プール横の階段に侠山くんの姿を確認しに来たけど、やっぱり居なかった。
「なんかそれ、色々…妙だよな。」
「やっぱりそう思うよね。…一応探してみたけど、侠山くんは学校にはいない。」
「うーん。なんだろ、嫌な予感がする。空也…放課後と言わず、すぐに行かないか?」
「そうだね、わかった。じゃコンビニで…うん。」
僕らはいったん、いつものコンビニへ集合して高柳家へ向かうことにした。学校を出てすぐだから、先にコンビニに着いて谷崎を待っていた。
少し考えてみよう。
侠山くんは疑いのある高柳さんを「自分で調べる」と言って単独で動いた。三木堂高校での情報収集は、彼の話を聞く限りでは上手くはいかなかったんだろう。唯一わかったことは、自分のお兄さんが"おもちゃ"と称し、いじめていた相手が高柳さんだったことだ。
高柳さんが学校に来なくなってから、いじめていたその3人が姿を消し、そのうちの2人は惨殺され、その2人の自宅にはかねてから起きていた連続殺人事件と同様に害者のものと見られる指が届いた。
侠山くんのお兄さんは依然として行方不明のまま。今のところ指は届いてはいない。
「どこ行ったんだ侠山くん。」
残されたのはケータイだけ。それを侠山くんが調べるはずだった高柳さんがなぜか、持っている。
侠山くんは、感情で衝動的に相手にすぐに掴みかかるような癖がある。もしかして、接触したのか…?
「…。」
"シリアルキラーやサイコパスの気持ちって、それぞれだけど人によっては"分かる"って思っちゃうよね。"
初めて高柳さんに会った日。心に引っかかった言葉が僕の頭の中で響く。あの時はなんとも思わなかったけど、一瞬俯いた高柳さんの表情は、悲しみと怒りが滲んでいたようにも…今となっては思える。
「はは、やっぱり、考えすぎかな…。ただ落としただけかも…」
「空也ぁー!」
「あ。谷崎。」
谷崎がコンビニに到着した。
「よし、向かおう。」
「あれ、高柳さん…?これ、侠山くんのケータイじゃ…?」
「うん。そうなんだ。なんでか…家の前で拾ったんだ。」
…拾った?
「そ、そうなんですか。」
「うん、それでね。悪い気はしたんだけど、誰のケータイか確かめないとと思って、中を見てみると登録の中に君の名前を見つけたんだよ。それで連絡したんだ。」
「あ、そういうことだったんですね。」
なんだ?いつもと声の感じが違う…。なんだか嫌な空気だ。
「どこからか、かかってくるかなって思ったんだけど、本人からの連絡はなくてさ、よかったら空也くん、友達の代わりに、うちに取りに来てもらえないかな?」
「家に…ですか?」
「そう…今日はずっと家に居るからさ。」
「あ…わかりました。じゃあどこかで取りに行きます。」
「あぁ、ありがとう。待ってるよ。」
なんだか以前会った時と何かが違う。
僕はすぐに谷崎にコールしながら校内でプール横に向かってみた。
「おう!どうした空也、電話とか、珍しいな。」
「うん、ちょっとね。…あのさ、今、高柳さんから連絡があって…」
「え?なんで?」
僕はことの経緯と、自分が感じた空気感を谷崎に説明した。プール横の階段に侠山くんの姿を確認しに来たけど、やっぱり居なかった。
「なんかそれ、色々…妙だよな。」
「やっぱりそう思うよね。…一応探してみたけど、侠山くんは学校にはいない。」
「うーん。なんだろ、嫌な予感がする。空也…放課後と言わず、すぐに行かないか?」
「そうだね、わかった。じゃコンビニで…うん。」
僕らはいったん、いつものコンビニへ集合して高柳家へ向かうことにした。学校を出てすぐだから、先にコンビニに着いて谷崎を待っていた。
少し考えてみよう。
侠山くんは疑いのある高柳さんを「自分で調べる」と言って単独で動いた。三木堂高校での情報収集は、彼の話を聞く限りでは上手くはいかなかったんだろう。唯一わかったことは、自分のお兄さんが"おもちゃ"と称し、いじめていた相手が高柳さんだったことだ。
高柳さんが学校に来なくなってから、いじめていたその3人が姿を消し、そのうちの2人は惨殺され、その2人の自宅にはかねてから起きていた連続殺人事件と同様に害者のものと見られる指が届いた。
侠山くんのお兄さんは依然として行方不明のまま。今のところ指は届いてはいない。
「どこ行ったんだ侠山くん。」
残されたのはケータイだけ。それを侠山くんが調べるはずだった高柳さんがなぜか、持っている。
侠山くんは、感情で衝動的に相手にすぐに掴みかかるような癖がある。もしかして、接触したのか…?
「…。」
"シリアルキラーやサイコパスの気持ちって、それぞれだけど人によっては"分かる"って思っちゃうよね。"
初めて高柳さんに会った日。心に引っかかった言葉が僕の頭の中で響く。あの時はなんとも思わなかったけど、一瞬俯いた高柳さんの表情は、悲しみと怒りが滲んでいたようにも…今となっては思える。
「はは、やっぱり、考えすぎかな…。ただ落としただけかも…」
「空也ぁー!」
「あ。谷崎。」
谷崎がコンビニに到着した。
「よし、向かおう。」
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