この指灯せ

追いかける先に２

CRYの真実

　そして、中学で起きているいじめへの報復もすべて"CRY"が絡んでいる…。となれば、同じことが高校でも起きていいはずだが、高校は失踪事件から連続殺人事件へと発展している。同じ現象が起きたっていいはずだ。
　俺は効能が書かれたメモに目をうつした。

「効能は…？」

　"CRY"は気分がハイになるただのドラッグではない。元々は某国が精神異常をもった囚人に使用し、軍で使える人間兵器に改造する為、開発された特殊な薬だった。しかし、研究は頓挫。
　一部の薬品を持ち出した研究者がアウトサイダーに殺害され、裏社会へその薬は流れていってしまった。その中で効能は変化させられ、当初の効能からは違う形となったが、根本は変わっていない。
　人間の誰もが持っている"ネガティブな心"に反応する。そのネガティブの大きさに比例してハイになり凶暴性が増す。
　そして、すさまじいドーピング効果もある。同様にネガティブの大きさに比例し、筋力が一時的に増強される。ただし、強い依存性があり、初回こそ強くないという特徴があるが、２回目以降は強い依存状態に見舞われる。
　…つまり、心が弱い人間に強く効く特殊な覚醒剤で、筋力増強剤ってことか。

「なるほど、それで"勇気が出る薬"って訳か。」

　課長が俺に「首をつっこむな」って言ってきたのは、上…それもかなりの上からの命令。もしかしたら警察組織ではとどまらない話なのかもしれない。
　報道規制がかかったのも、事件の内容が残忍すぎるからってだけじゃねーな。

　「これは…やばいヤマに首突っ込んだもんだ。」

　だが、ここで引き下がるわけにはいかない。もう管轄内ではこんな大きな事件になっているんだ。…考えるんだ。

「落ち着け…。ふー。」

　そもそもの話はわかった。今回、銃殺されたミロクの件と、ランプの指事件は恐らく直接は関係ない。殺害のされ方が全く違うからだ。
　ミロク殺害は恐らくアウトサイダーか、もしくは俺たちの中に…？

「…。」

　俺はひとまず身元が分かった黒野弥勒の報告をしようと現場へ戻った。