この指灯せ

コトハナリユキ

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信じたくない

ブロッコリーヘッド

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「三木堂はどうだった?」

 谷が俺の顔を覗き込む。俺たちは最初に会ったコンビニ裏を拠点にしていた。
 今日はミロクと接触してちょうど一週間が経つ。報告会として放課後に集まっていた。

「あぁ、案外高校に入っていっても、情報のレベルとしちゃぁSNSと大差がねぇ。」
「そっかぁー。ちなみに情報としてはどんなのがあったの?」

 紅原も俺のことを覗いてくる。

「直接関係があるかはわからねーけど、前に兄貴が"おもちゃ"って言ってた生徒がいるって話をしただろ?」
「あぁ最悪だなって俺が言ってたやつか。」

 ちょっと谷が嫌味っぽく言うのは、性格なんだよ。悪気はねーのよ。

「ちっ…そーだよ。その生徒の名前が高柳っていうらしい。」
「え?」

 紅原の表情が変わった。

「なんだよ空也。そいつ知ってんのか?」
「…うん、知ってる。」
「は?なんで紅原が知ってんだよ。三木堂の生徒だぞ?」
「谷崎と初めて会った日、あのあと、古本屋で声をかけられたんだ。髪の長い人で…。」

 長髪…間違いない、三木堂の高柳だ。

「ど、どんな感じだった?…そいつは、今はもう学校に来てないって聞いた。」
「どんなって…うーん、すごく穏やかで、笑顔で、賢そうで…。」
「ふぅん…賢そうねぇ…いじめられる要素はその辺りかねぇ。」

 …谷、俺を見るな。

「…んで紅原、他になんかあったかよ。」
「あとは僕と同じで、シリアルキラーとか、サイコパスとかに興味があるみたいだった。」
「空也…そんなんが好きなのか。」

 こいつ、そんなんが好きだったのか…。

「ま、まぁね。でも、もし…その考えを持ってる高柳さんが"CRY"を手にしていたら…。」
「…しかも、侠山の兄貴たちを恨んでたとしたら…。」
「…。」

 おい待てよお前ら…マジかよ。兄貴の失踪には関係ないだろうと決めつけていた高柳が一気に近づいてきた気がした。

「待て待て…。じゃあ高柳のことをミロクが知ってるかどうか、今日聞こうぜ。」
「そうだな!現場も見たって言ってたし、少ししたらミロクさん、来るはずだし…。」

 だがミロクは約束の時間になっても現れることはなかった。

「おい!来ねーじゃねぇか、ミロクの野郎!」
「おかしーなぁ…。空也ぁちょっと連絡してみてくれよ。」
「うん、わかったよ。」
「ったくよぉ…。」

 紅原がミロクに電話をかけているがコールだけで繋がらないらしい。

「なんだよ!お前ら、俺が知らない間に約束したんだろうが!」
「したよ!したけど、来ねんだから仕方ねぇじゃねえか!」

 俺の態度に谷もヒートアップしてきた。

「あぁ!?」
「なんだこらぁ!」
「とっととブッロコリーヘッド連れてこいやぁ!あの売人野郎~!!」

 俺たちは掴み合いになったが、そこで道路側から声が聞こえた。

「おーい!なんだ君たち、喧嘩かぁ?…今、売人とか言ってなかったか?」

 ギョッとした表情で紅原が「あの人たちケーサツだよ!」と耳打ちしてきた。

「は?…散れ!散れ!」

 俺たちはコンビニから散り散りに走り出した。

「あ!おい逃げるな、待てぇ!」
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