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信じたくない
兄貴
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また少し時間を戻すぞ。
俺が刺される数日前のことだ。…刺されてんだ、誰だかわかるだろ?そうだ、侠山だ。
「うーす。」
学校から帰り、居間でテレビを見ていると玄関から聞き慣れた声がした。俺は玄関に顔を出した。
「兄貴、おかえりー。」
「お、帰ってたのか優。」
「うん。あ…藤くん、佐川くん、久しぶりぃ。」
玄関には兄貴とそのツレの2人も居た。遊びに来たらしい。
「おぉジュニア!久々やのぉ!」
"だのぉ"とか"やのぉ"が口癖で、首に"champion"とタトゥーを入れている藤宮くん。俺のことは侠山の弟ということでジュニアと呼ぶ。
「元気そうだなぁ~!」
ロングモヒカンの佐川くんは兄貴肌で、もう1人の兄貴みたいな存在だ。
「おぉ…俺の部屋行くぞ。」
兄貴は2人を連れてタバコ臭い自分の部屋へ入っていった。こんな感じで兄貴はよくツレを家に呼ぶ。学校の連中を家に連れてきたりしない俺からすると、すこし羨ましい…。混ぜてもらいたいけど、兄貴の機嫌が良くないと追い出されちまう。
「…。」
俺はテレビをまた見ることにした。
…ちょっとだけ、身の上話をしとく。
うちに母親はいない。昔からいない。父親はトラックの長距離運転手で家に居ないことの方が多い。稼ぎが良くて、金には困ったことはないけど、兄貴も中学にあがってからは家に帰ってくることも減って、俺は家で1人で過ごす時間が増えた。いつもどことなく、孤独感を感じていた。だから学校だけが俺の居場所だった。…そんな気がする。
「ジュニアー、じゃあのー。」
2人が帰るらしく、藤くんが居間の俺に声をかけてくれた。
「あ、またね藤くんっ。」
「おーまた来るでのぉー。」
見送ろうと玄関まで顔を出すと兄貴が見送りをしていた。
「じゃー次、どーすっか考えとくわ。…あの長ぇ髪をなんかしてやりてぇなぁー。」
「兄貴、なんの話?」
「あぁ…クラスのおもちゃだよ。」
俺が尋ねると兄貴は無表情で答えた。
「髪の長い奴が居るんだけどよー、どうもこいつは気に入らんらしくてなー!」
「うるせーな佐川~おらっ帰れ帰れ!」
「ははは!またなー!」
佐川くんは僕に手を振って出ていった。
兄貴も俺と同じで、クラスにおもちゃがあるんだな。その時はそれ位にしか思っていなかった。
部屋に戻ろうとする兄貴に声をかける。
「兄貴、晩飯だけど…」
「あー俺はいい。少ししたら出っから。」
「…そう。」
テレビもスマホも飽きて、床でごろりと寝転ぶとそのまま寝てしまった。
「…あ。」
目を覚ますと窓の外はとっぷり暗くて、兄貴は当然もういなかった。でも学ランをかけてくれていた。
「兄貴、明日は家で飯食うかなぁ。」
チンしたレトルトカレーを食べながらテーブルの向こう側を眺めた。
でも、もう兄貴が家に帰って来ることはなかった。
俺が刺される数日前のことだ。…刺されてんだ、誰だかわかるだろ?そうだ、侠山だ。
「うーす。」
学校から帰り、居間でテレビを見ていると玄関から聞き慣れた声がした。俺は玄関に顔を出した。
「兄貴、おかえりー。」
「お、帰ってたのか優。」
「うん。あ…藤くん、佐川くん、久しぶりぃ。」
玄関には兄貴とそのツレの2人も居た。遊びに来たらしい。
「おぉジュニア!久々やのぉ!」
"だのぉ"とか"やのぉ"が口癖で、首に"champion"とタトゥーを入れている藤宮くん。俺のことは侠山の弟ということでジュニアと呼ぶ。
「元気そうだなぁ~!」
ロングモヒカンの佐川くんは兄貴肌で、もう1人の兄貴みたいな存在だ。
「おぉ…俺の部屋行くぞ。」
兄貴は2人を連れてタバコ臭い自分の部屋へ入っていった。こんな感じで兄貴はよくツレを家に呼ぶ。学校の連中を家に連れてきたりしない俺からすると、すこし羨ましい…。混ぜてもらいたいけど、兄貴の機嫌が良くないと追い出されちまう。
「…。」
俺はテレビをまた見ることにした。
…ちょっとだけ、身の上話をしとく。
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「ジュニアー、じゃあのー。」
2人が帰るらしく、藤くんが居間の俺に声をかけてくれた。
「あ、またね藤くんっ。」
「おーまた来るでのぉー。」
見送ろうと玄関まで顔を出すと兄貴が見送りをしていた。
「じゃー次、どーすっか考えとくわ。…あの長ぇ髪をなんかしてやりてぇなぁー。」
「兄貴、なんの話?」
「あぁ…クラスのおもちゃだよ。」
俺が尋ねると兄貴は無表情で答えた。
「髪の長い奴が居るんだけどよー、どうもこいつは気に入らんらしくてなー!」
「うるせーな佐川~おらっ帰れ帰れ!」
「ははは!またなー!」
佐川くんは僕に手を振って出ていった。
兄貴も俺と同じで、クラスにおもちゃがあるんだな。その時はそれ位にしか思っていなかった。
部屋に戻ろうとする兄貴に声をかける。
「兄貴、晩飯だけど…」
「あー俺はいい。少ししたら出っから。」
「…そう。」
テレビもスマホも飽きて、床でごろりと寝転ぶとそのまま寝てしまった。
「…あ。」
目を覚ますと窓の外はとっぷり暗くて、兄貴は当然もういなかった。でも学ランをかけてくれていた。
「兄貴、明日は家で飯食うかなぁ。」
チンしたレトルトカレーを食べながらテーブルの向こう側を眺めた。
でも、もう兄貴が家に帰って来ることはなかった。
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