この指灯せ

コトハナリユキ

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追いかける先に

いつもの席

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「中学の事件全てにだと?…そこまでの話、聞いてないぞ。」
「そうね。まだそれについて上は全体に情報を出してないの。」
「なんでだ?」
「さぁ?それは私にも分からないけど。」
「…。」
 神無咲の声のトーンは上がっていた。

「まぁ、またその中学でもCRYが関わったっていうくらいの情報なら、ここまでね…じゃあ。」
「あ、おい…というかなんで…」

 電話は一方的に切られてしまった。
 
"…なんでお前はそのオープンになっていない情報を知ってんだよ。"

「ま~た一方的に切られたんすか?」

 犬窯田は横からぶつぶつ言う。

「…まぁな。」
「雉子本さんいっつもソレされてるじゃないすか。ほんとに使える情報流してくれてんすかね、あの人。」
「知らねーよ。おら、いくぞ。」

『トゥルルル…』

「あ、すいません電話です。雉子本さん先に車、乗っててください。」
「おう。」

 先に車に乗り込み考えた。
 高校生の殺人事件は失踪事件から始まるうえに、あとから見つかる死体からは証拠が出ない。DNAが出てもデータとして該当者はいなかった。
 一方で中学生の一連の事件に関連があると仮定するのなら、いったんこの"CRY"を捌いてる売人を探してみるか。
 1分ほどで犬窯田も乗り込んできた。

「なんだった?」
「交番勤務の同期からでした。」

 "パイプ作っとけ"とは言ったが、どこまで情報流れてくるパイプ作ってんだこいつは。

「んで?」
「この近くで工事現場から聞こえるような大きな音が数回聞こえたと通報があったらしいです。」
「…なんだそりゃ。」
「いやぁよく分かんないっすけど。」
「それはスルーでいいだろ。いったんクラブBEAST方面へ向かってくれ。」
「え…あぁ、了解っす。薬を探るってことっすね。」
「そうだ。」

 市街地にあるクラブBEASTへと俺たちは車を走らせた。
 実際にBEASTに入る訳じゃなく、俺がたまに使う情報屋に会う為だ。情報屋も情報屋で、いろんな専門家がいる。実際にBEASTは薬に関してこの辺りじゃ有名だ。だからその近辺にはそういう情報屋が居る。
 犬窯田を車に残し、俺はBEASTから少し離れたパチンコ屋へ入った。

「久々だからなぁ…居りゃーいいけど…お。」

 奥から2列目の隅のいつもの席。そこに情報屋は居た。キャップを被った50代くらいの男だ。名前は知らない。
 俺は手前から順番に台をチェックして、さもそこにあたりをつけたかのように隣に座り、プレイを始め、情報屋の顔も見ず話しかけた。

「よぉ、出てるか?」
「まぁまぁだなー!…へぇ、珍しいお客さんじゃねぇですか。」

 情報屋もこちらを見ずに答えた。

「"CRY"っていう薬の効果と出どころ、それがどこで捌かれているか…あと可能なら、扱ってる売人の情報も知りたい。」
「はいよー。5日後の12:00、駅のロッカーに情報一式、入れておきます。番号は20924。」

 俺は金を情報屋に渡して、しばらく台を回してから店を出た。
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