この指灯せ

コトハナリユキ

文字の大きさ
上 下
37 / 73
追いかける先に

まずいコーヒー

しおりを挟む
 署の自販機で買うカップコーヒーは好きじゃない。だが気づくと買ってしまっている。困ったもんだ。

雉子本きじもとさん、またそこのコーヒー飲んでるんすか。好きっすねぇ。」
「…好きじゃねぇよ。気づいたら手元にあんだよ。」
「それ完全に中毒っすよ。」

 今日もテンション低く犬窯田いぬかまだは俺に絡んでくる。

「うるせーなぁ。…で、用件はなんだ?」
「はい。またランプです。」
「あぁ…ついに3件目か。」

 コーヒーを一気に飲み干した。…うーん、まずい。
 俺は月見つきみ署で刑事をやっている。ランプと言われてもピンと来ないかもしれないから、少し現状を説明させてくれ。…え?大体わかってるって?…そんな訳あるかよ。これはマスコミに報道規制をかけている凶悪事件だぞ。よく聞けよ?

 ここ最近、中高生の荒れ方がひどい。今までは事件が起きたとしても不良集団の喧嘩くらいで、可愛いもんだった。しかし最近は様子がおかしい。中学なんかでは、いじめられていた生徒がキレて、いじめの主犯格である生徒に襲いかかる事件が多発している。もちろんいじめを肯定するつもりは毛頭ない。しかし、死人まで出る始末だ。刺しちまった生徒からの情報によれば、どうやら妙な薬が絡んでいるとか、いないとか…。
 まぁこれは序の口で、最も問題なのはこっちだ。
 素行の悪い高校生が忽然と姿を消す。俺たちも最初はただの家出だと思っていた。しばらく待っていればフラっと帰ってくるとみんなが思っていた。
 しかし、その消えた生徒の家に帰って来たのは本人でなく、本人の"指のみ"だった。1件目が発生してすぐにDNA鑑定が行われ、本人の指だということがわかり、その後には無惨な状態の死体が、全く関係のない場所で見つかった。
 発見された死体は損傷がひどく、なにか器械などを使用して死体を破損させているかと思われたが、人力で死体は引き裂かれていることが判明し、異常事態であることがわかった。
 当然、捜査本部が立ち上げられ、本格的に捜査が開始されたばかりだ。俺たちは本部の運転だのなんだのを手伝う傍ら、近隣を聞き込みしているが成果もなくイライラさせられていた。
 ちなみに言っておくが、報道規制がかかっているとはいえ、世間に話は漏れている。そこでは警察は本腰を入れてないとか書かれているが、そんな訳あるか!人命が失われてんだぞ。やる気とかそんな話じゃねぇんだよ。…ったく。

「あら、お疲れ様。またイライラしてるの?」
「おお~神無咲かんなざきぃ、別にイライラなんてしてねぇ~よ。考え事してただけだ。」

 この女は神無咲といって、薬を扱う部署、いわゆる"マトリ"の刑事だ。黒髪ロングが綺麗な色気のある女で、個人的にはお気に入りだ。

「神無咲さん、お疲れ様っす。雉子本さんはずっとイライラしてますよ。」
「うるせぇぞ犬窯田てめぇ。」
「まー仕方ないわよねぇ。だって変な事件が連続で起きてるんでしょ?」
「ふん、ランプの指事件とか言ってるが、これはれっきとした連続殺人事件だ。」

 2件目も同じ手口で犯行は行われ、バラバラにされた死体が見つかっている。「3件目」と俺はさっき言ったが、2件目が発生した後で頭だけが弾けた死体が発見されているんだ。どうやら鑑識の話では発見が遅れただけで1件目が起きる前に殺害されていたという。
 この指が届く事件と別だと考える者も居るが、俺は同じ犯人だと思っている。なんでかって…?刑事の勘に決まってんだろう。…なんだ、なんか文句あんのか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い男1人、人間4人、ギタリスト5人

正君
ミステリー
20人くらいの男と女と人間が出てきます 女性向けってのに設定してるけど偏見無く読んでくれたら嬉しく思う。 小説家になろう、カクヨム、ギャレリアでも投稿しています。

しかばね先生の小説教室

島崎町
ミステリー
書かないと殺される!! 地獄の編集者に命を狙われる高校1年生の僕は、いつも死にそうにしてる<しかばね先生>に助けを求めるが、こんなときに限って先生は死んでいた! 死んだ先生に小説を書き方を教わる創作ミステリーホラー! これを読むだけで書き方がわかるはず!?

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

ダブルネーム

しまおか
ミステリー
有名人となった藤子の弟が謎の死を遂げ、真相を探る内に事態が急変する! 四十五歳でうつ病により会社を退職した藤子は、五十歳で純文学の新人賞を獲得し白井真琴の筆名で芥山賞まで受賞し、人生が一気に変わる。容姿や珍しい経歴もあり、世間から注目を浴びテレビ出演した際、渡部亮と名乗る男の死についてコメント。それが後に別名義を使っていた弟の雄太と知らされ、騒動に巻き込まれる。さらに本人名義の土地建物を含めた多額の遺産は全て藤子にとの遺書も発見され、いくつもの謎を残して死んだ彼の過去を探り始めた。相続を巡り兄夫婦との確執が産まれる中、かつて雄太の同僚だったと名乗る同性愛者の女性が現れ、警察は事故と処理したが殺されたのではと言い出す。さらに刑事を紹介され裏で捜査すると告げられる。そうして真相を解明しようと動き出した藤子を待っていたのは、予想をはるかに超える事態だった。登場人物のそれぞれにおける人生や、藤子自身の過去を振り返りながら謎を解き明かす、どんでん返しありのミステリー&サスペンス&ヒューマンドラマ。

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する

黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。 だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。 どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど?? ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に── 家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。 何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。 しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。 友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。 ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。 表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、 ©2020黄札

✖✖✖Sケープゴート

itti(イッチ)
ミステリー
病気を患っていた母が亡くなり、初めて出会った母の弟から手紙を見せられた祐二。 亡くなる前に弟に向けて書かれた手紙には、意味不明な言葉が。祐二の知らない母の秘密とは。 過去の出来事がひとつづつ解き明かされ、祐二は母の生まれた場所に引き寄せられる。 母の過去と、お地蔵さまにまつわる謎を祐二は解き明かせるのでしょうか。

処理中です...