この指灯せ

コトハナリユキ

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声なき声を

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 放課後のコンビニ裏。
 当然かのように、僕らの溜まり場になりつつあるコンビニの裏。ニヤニヤしながら谷崎が僕の腫れた顔を覗き込む。

「なにお前、仲間にするっつって…侠山にボコられて来たの?」
「いや、まぁ…なんていうか、そうなるかな…あはは。」

 谷崎は間違ってはいない。現状僕は笑うしかない。

「あははって。…で?肝心な侠山は?」
「んー、なんとなく来ると思ったんだけど…来ないねぇ。」

 そういえば、ちゃんとした時間指定もしてない…。放課後って何時から何時のことなんだろうか。
 集まってからもう20分は座り込んで彼を待っている。

「なんだよ!殴られただけかよ!」

 爆笑する谷崎を見て少しムッとしたけど、現状僕は笑われるしかない。

「けどさぁ、殴られると…めっちゃ痛いね。」
「…いや、当たり前だろ。おもしれー顔しやがって。」

 そりゃごもっともな意見だ。するとコンビニの表の方からどすどすと荒い足音が聞こえた。

「おい紅原!裏なら裏って言えや!」
「あ、侠山くん…。」

 凄くイラついた侠山くんが現れた。彼はコンビニの表に居たらしい。…まぁコンビニに集合って言われたら普通は表だよね。ごめんよ。

「きょ、侠山…。わ、ほんもんだ。」
「来てくれたんだ。」

 谷崎は静かに嬉しそうな声をあげ、僕も嬉しくなって彼を見上げた。

「ち、おめーが言うから来たんだからな…。」

 少し照れ臭そうな侠山くんはなんだか少しかわいらしい。

「紅原ぁ…誰だ?こいつ。」
「に、睨むなよ侠山…。」

 侠山くんが谷崎に気づき、睨みを効かせる。

「あ、そうか。2人は初めてだもんね。」

 僕らは立ち上がり、侠山くんに谷崎を紹介し、これまでの経緯を説明した。

「殺されたって…藤くんと、佐川くんが…?」

 やはりお兄さんの友人2人のことを彼も知っていた。かなりのショックを受けると同時に、自分のお兄さんが自宅に戻っていないことに、相当の危機感を感じたようだった。

「…んで、中島に"CRY"を渡したそのミロクって奴をまず見つけ出すってことか。」
「そう。その人を探す延長線上に、お兄さんの失踪も絡むかもしれない。だから声をかけたんだよ。」
「…そうか。」

 チラッと僕の顔を見る侠山くん。

「さっきは…」
「ん、どうしたの?」
「るせっ…!なんでもねぇよ!」

 頭をガシガシ掻く侠山くん。
 なんだぁ…?
 
「はい今日は!そこに絡む"やべぇネタ"を仕入れてきた。」

 ここで谷崎がぐっと前のめりに話し始めた。

「…なんだよ谷。」
「谷って…侠山お前、いきなり距離ちけーな。…別にいいけど。」

 もともと不良好きな谷崎にとっては、隣の中学のスターに会ったような感覚なのかもしれない。なんだか話題にそぐわずウキウキして見える。

「ただし、侠山にとってはちとキツい話になるかもしれねぇ。だから、覚悟して聞いてくれ。」
「あぁ…分かった。」

 そう前置きして谷崎は話し始めた。
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