20 / 73
声なき声を
被害者と傍観者1/4
しおりを挟む
今度はあの中島くんに話を聞きたいと思った。
侠山くんが前に言っていた。"カツアゲの時に、中島くんが『何か』を口に放り込んだ"と。もしそれが住宅街で売人によって、中島くんに売りつけられた"CRY"だったとしたら、あの身体が大きくなった反応が、薬の効果の可能性がある。
翌日の放課後、最初に出会ったコンビニ裏で集合することにし、その日は谷崎と解散した。
翌朝、僕は通常通りに学校へ来ていた。品川先輩を見かけたが、目が合うとバツの悪そうな顔をしてどこかへ逃げていった。実験台にしたのは少し悪かったかなと反省している。…一応。
教室に入ると、侠山くんの姿はなかった。「そうだよなぁ。」と思いつつも校内を探し始めてしまった…なんとなく、どこかに居る気がしたんだ。
トイレ・屋上に出れる階段・体育館の裏・体育準備倉庫…プラプラと探したけど、見当たらなかった。もう学校には現れないのかもしれないと思ったら…居た。屋外プールへ続く階段に座り込んでいる侠山くんを見つけた。
「そんなとこに居るんだ。」
「は?…なんだよ、またお前かよ。」
彼は僕を見てギョッとしていたけど、少しだけ嬉しそうにも見えた。
「もうこの学校で君に声をかけてくる人なんて、僕くらいしかいないよ。」
「…うるせぇよ。」
舌打ちをして立ち上がり、行ってしまった。
僕は後ろから声をかけた。
「お兄さんは、帰ってきた…?」
歩くのをぴたりと止め、僕に背を向けたまま、彼は聞いた。
「お前、なんか知ってるのか?」
「いや、何もわからないから調べてるところ。」
「…どういうことだ?」
「僕らと一緒にお兄さんを探す…?」
「…ふざけんな。」
唾を吐き捨てて、再び行ってしまった。
侠山くんは確かに1年生のボスだった。それは昨日の品川先輩の反応を見れば分かる。彼は上級生の不良にも一目を置かれる存在だった。だが、今までのしっぺ返しをくらって地位を一瞬で失った。今はその事実を受け止められず、どうしたらいいのかわからないんだろう。
放課後、あのコンビニの裏で谷崎と合流した。彼がまた情報を集めてきてくれて、現在中島くんがある病院に入院していることがわかった。
薬物反応もあったことから施設に入ることが決まっているらしい。ただ、どこの施設になるかまでは分からなかった。つまり、下手をすれば2度と彼から話を聞くことはできないってことだ。
「じゃあ、今日にでも、その病院に行くしかないね。」
「そう。…けどよ、どこの部屋かは簡単にはわからないぜ?」
「大丈夫。侠山くんの時は病院すら分からなかったけどなんとかなったし、ひとまず行ってみようよ。」
「クラブん時も思ったけど、ほんと空也は見た目と違って、向こう見ずっていうか…。」
「前向き?」
「…まぁ、そうとも言う。」
病院の受付や看護師のガードは固いけど、患者さんたちにはそもそもガードというものがない。"中学で事件を起こした患者"というレア情報はみんなが知っていた。すぐに病室がわかって忍び込めた。
中島くんはベットで上半身を起こして穏やかな表情で本を読んでいた。
侠山くんが前に言っていた。"カツアゲの時に、中島くんが『何か』を口に放り込んだ"と。もしそれが住宅街で売人によって、中島くんに売りつけられた"CRY"だったとしたら、あの身体が大きくなった反応が、薬の効果の可能性がある。
翌日の放課後、最初に出会ったコンビニ裏で集合することにし、その日は谷崎と解散した。
翌朝、僕は通常通りに学校へ来ていた。品川先輩を見かけたが、目が合うとバツの悪そうな顔をしてどこかへ逃げていった。実験台にしたのは少し悪かったかなと反省している。…一応。
教室に入ると、侠山くんの姿はなかった。「そうだよなぁ。」と思いつつも校内を探し始めてしまった…なんとなく、どこかに居る気がしたんだ。
トイレ・屋上に出れる階段・体育館の裏・体育準備倉庫…プラプラと探したけど、見当たらなかった。もう学校には現れないのかもしれないと思ったら…居た。屋外プールへ続く階段に座り込んでいる侠山くんを見つけた。
「そんなとこに居るんだ。」
「は?…なんだよ、またお前かよ。」
彼は僕を見てギョッとしていたけど、少しだけ嬉しそうにも見えた。
「もうこの学校で君に声をかけてくる人なんて、僕くらいしかいないよ。」
「…うるせぇよ。」
舌打ちをして立ち上がり、行ってしまった。
僕は後ろから声をかけた。
「お兄さんは、帰ってきた…?」
歩くのをぴたりと止め、僕に背を向けたまま、彼は聞いた。
「お前、なんか知ってるのか?」
「いや、何もわからないから調べてるところ。」
「…どういうことだ?」
「僕らと一緒にお兄さんを探す…?」
「…ふざけんな。」
唾を吐き捨てて、再び行ってしまった。
侠山くんは確かに1年生のボスだった。それは昨日の品川先輩の反応を見れば分かる。彼は上級生の不良にも一目を置かれる存在だった。だが、今までのしっぺ返しをくらって地位を一瞬で失った。今はその事実を受け止められず、どうしたらいいのかわからないんだろう。
放課後、あのコンビニの裏で谷崎と合流した。彼がまた情報を集めてきてくれて、現在中島くんがある病院に入院していることがわかった。
薬物反応もあったことから施設に入ることが決まっているらしい。ただ、どこの施設になるかまでは分からなかった。つまり、下手をすれば2度と彼から話を聞くことはできないってことだ。
「じゃあ、今日にでも、その病院に行くしかないね。」
「そう。…けどよ、どこの部屋かは簡単にはわからないぜ?」
「大丈夫。侠山くんの時は病院すら分からなかったけどなんとかなったし、ひとまず行ってみようよ。」
「クラブん時も思ったけど、ほんと空也は見た目と違って、向こう見ずっていうか…。」
「前向き?」
「…まぁ、そうとも言う。」
病院の受付や看護師のガードは固いけど、患者さんたちにはそもそもガードというものがない。"中学で事件を起こした患者"というレア情報はみんなが知っていた。すぐに病室がわかって忍び込めた。
中島くんはベットで上半身を起こして穏やかな表情で本を読んでいた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
何の変哲もない違和感
遊楽部八雲
ミステリー
日常に潜む違和感を多彩なジャンル、表現で描く恐怖の非日常!
日本SFのパイオニア、星新一を彷彿とさせる独特な言い回し、秀逸な結末でお送りする至高の傑作短編集!!
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる