この指灯せ

コトハナリユキ

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音が聞こえた

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「…お兄さんが居たんだね。」

 僕は嫌な予感がして固まったが、谷崎は話し始めた勢いが止まらず続ける。

「このグループの佐川さんはさ、おれの中学の先輩なんだ。」

"その人なら昨日死んだよ。"…そう思ったが、言えない。

「なんか、昨日から行方が分からないらしいんだよってか…侠山はもう少し前から、そんで同じく藤宮も昨日からかな。グループ3人揃って行方しれずになってるらしいんだよなぁ。」
「え!侠山くんのお兄さんも!?」
「お?…おぅ。」

 自分が思った以上のリアクションをとってしまって、谷崎に不審がられてしまった。
 侠山くん…今日病院で会った時は、そんなこと一言も…まぁ僕に言うわけないか。

「…空也。こんなタイミングで、あの3人のことを知りたいってさ…もしかして、なんか知ってんのか?」
「…。」

 僕も情報、もらったしな…。ちょっと迷ったけど、話してみることにした。

「先に言っとくけど、僕はこういう冗談、言わないから…。」
「ん?…おぉ。」

 そう前置きをしてから、昨日撮影した写真を谷崎に見せ、そして起きたできごとを話した。
 最初は「吹かしてんじゃねーよ。」と笑った谷崎だったが、写真の位置情報や日時を確認し、本物だと理解して凍りついていた。

「…じゃあ、あの佐川さんが殺されたってのか。それに藤宮も…?」
「うん。」
「ケーサツには?」
「写真見たでしょ?もう証拠が残ってない。」
「…どうなってるんだ、それ。死体が消えるとか…。」

 「そういえば…」と現場に落ちていた残りの錠剤を谷崎に見せてみた。

「薬か?」
「うん、なんの薬かは分かんないけど現場で見つけたんだ。」

 錠剤の真ん中に掘られた▼マークを見て、谷崎は何か思い出したようだった。

「…これ確か、最近流行ってるドラッグじゃね?」
「え、そうなの?」
「うん、なんかこんなんだった気がする。…そうだ!"CRY"って薬だ。どっかのクラブで捌かれてるとかって…。」

 市街にあるクラブ「BEAST」の近くで見たことがあると谷崎は言った。
 そのクラブへ行けば、なにかしらのヒントが得られるかもしれない。

「じゃあさ…空也、明日の夜、空いてるか?」
「うん、空いてる。」
「BEAST、行ってみるか。」
「…分かった。」
「しばらくは俺たちだけで調べてみようぜ。佐川さんがマジで殺されてたとしたら…。」
「そうだね。やろう。」

 僕たちは翌日、クラブBEASTの最寄駅で落ち合うことにして別れた。
 初めて会った人にあんなに自分のことを話したのは初めてだったかもしれない。自分の中の妄想の谷崎とは印象は違ったけれど、危ない物に対して好奇心旺盛だったり、行動力があったり、自分と波長が合う友人ができたような、そんな嬉しい気持ちもあった。
 しかし、話が一気に進んだせいかクラクラする。頭の中を整理したい。
 自宅に戻る前に一息つこうと、近くの古本屋に入った。




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