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できてる二人
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ダーリンの熱い演説を前に酒場が一気に静まり返った。
そんなもんだから、ポロッとこぼした一言が思いの外響いてしまった。
「ジュン!!」
そらまぁ気づくわな、だいぶ酔ってるからかダーリンの目がなんだか怖い。
とてもとてもギラついている。
それに合わせて酒場の全ての視線が自分に注がれていた。
えっと、こんな時どうすればいいかって?
笑えばいいんだよ、天使と戦ってた少年がそう言ってただろ?
「ダーリン」
見よ、この渾身のちょっぴり引きつった笑顔を!
ジュン、ジュンと名前を呼びながら人波をかきわけるダーリンに波が引いていく。
「俺はっ、俺は間違っていた!」
背骨が折れる勢いで抱きすくめられて、ガハッと白目を剥いた。
「俺がしようとしてたことは間違ってた!もっともっと簡単なことだったんだ」
なにか返してやりたいが声が出ない、物理的に。
あらァ?あらあら、とあらあら姉さんの声が聞こえる。
「ダフ、白目剥いてるぞ」
「そうだ、離してやれ。というか離れろ、死ぬぞ」
ありがとう誰か知らん人、君はオレの命の恩人だ。
事故を起こした時にも見なかった走馬灯の片鱗が見えた。
「あれ?君は副団長が連れてきた子じゃないか?」
暴れるダーリンを羽交い締めにした体格の良いこれまたイケメンにまじまじと見つめられた。
なんなの、ほんとイケメンしかいないの?この世界。
「よ、よし、吉野、潤です」
肺いっぱいに酸素を取り込んで、今度は取り込み過ぎて咳き込んでしまった。
あらあら姉さんが背中をさすってくれて、ありがとうと見やると瞳の中に憐れみの色が浮かんでいた。
なんで?
「その、名前は・・・それだけ?」
「はぁ、そうですけど」
あのイケおじもそんなこと言ってたけどなんなの?
「君のご両親は君が悪魔に拐われると思わなかったのか?」
「へ?」
「悪魔避けの名は親から贈られる最大の愛情だぞ?」
あ、この世界の名前が長ったらしいのは悪魔に名を呼ばれないようにだった、と思い出した。
なるほど、だからあのイケおじも驚いていた。
もしかして、両親から疎まれているとかそんな感じで思われたんじゃなかろうか。
だからヨシヨシと頭を撫でてくれたし、菓子もくれた。
きっと童顔マジックでえらく幼く思われたのかもしれない。
うーん、違う世界から来たって言ってもいいものか。
羽交い締めにされたダーリンを見ると、ぶんぶんと首を横に振っている。
だからって妙案が浮かぶでもなし、どうしようかと思った時あらあら姉さんが口を開いた。
「あらァ?あんた達、人の事情に軽々しく口を挟むのは良くないと思うわよ?」
見ればあらあら姉さんが睨みつけていた。
二人はバツが悪そうにむむむと口を閉ざす。
自分よりでかい男に対峙する姉さん、惚れそう。
「ジュン!」
その隙をみて男二人を振り払ったダーリンにまた抱きしめられた。
今度は優しく包み込むようなものだったが如何せんとても酒臭い、思わずおえっとえずいてしまったのも仕方ない。
「ジュン、俺だけだ」
「ん?」
「俺だけ見て」
これは、一瞬姉さんに惚れそうになったのがバレている。
熱っぽい瞳に見つめられて頬にするりと伸びてくる手のひらも熱い。
はぁはぁと零す吐息も熱くて、それがどんどんと近づいてくる。
あっと思った時には唇を奪われて、熱くて厚い舌ががぬるりと入ってきた。
ひえっと縮こまった舌をひっぱり出されて吸われて、内頬を擽られ歯列を舐められる。
ダーリンとの初めてのディープキスがこんな公衆の面前とかなんなの?と思っているとバターンとダーリンが倒れた。
ゴン、と派手な音がしたからきっと後頭部を打ち付けたに違いない、痛そう。
「ダーリン!」
揺さぶってもダーリンは目を覚まさない、完全に目を回している。
しんと静まり返った酒場、オレのダーリン!と呼ぶ声だけが響く。
「えっと、君たちできてんの?」
何日ぶり二度目のできてる発言。
ここはきっとこう言うのが正解だ。
「はい」
あの時のダーリンのようにとてもいい笑顔で言えたかどうかは自信がない。
※エールありがとうございます!
めちゃんこ嬉しいです(//∇//)
そんなもんだから、ポロッとこぼした一言が思いの外響いてしまった。
「ジュン!!」
そらまぁ気づくわな、だいぶ酔ってるからかダーリンの目がなんだか怖い。
とてもとてもギラついている。
それに合わせて酒場の全ての視線が自分に注がれていた。
えっと、こんな時どうすればいいかって?
笑えばいいんだよ、天使と戦ってた少年がそう言ってただろ?
「ダーリン」
見よ、この渾身のちょっぴり引きつった笑顔を!
ジュン、ジュンと名前を呼びながら人波をかきわけるダーリンに波が引いていく。
「俺はっ、俺は間違っていた!」
背骨が折れる勢いで抱きすくめられて、ガハッと白目を剥いた。
「俺がしようとしてたことは間違ってた!もっともっと簡単なことだったんだ」
なにか返してやりたいが声が出ない、物理的に。
あらァ?あらあら、とあらあら姉さんの声が聞こえる。
「ダフ、白目剥いてるぞ」
「そうだ、離してやれ。というか離れろ、死ぬぞ」
ありがとう誰か知らん人、君はオレの命の恩人だ。
事故を起こした時にも見なかった走馬灯の片鱗が見えた。
「あれ?君は副団長が連れてきた子じゃないか?」
暴れるダーリンを羽交い締めにした体格の良いこれまたイケメンにまじまじと見つめられた。
なんなの、ほんとイケメンしかいないの?この世界。
「よ、よし、吉野、潤です」
肺いっぱいに酸素を取り込んで、今度は取り込み過ぎて咳き込んでしまった。
あらあら姉さんが背中をさすってくれて、ありがとうと見やると瞳の中に憐れみの色が浮かんでいた。
なんで?
「その、名前は・・・それだけ?」
「はぁ、そうですけど」
あのイケおじもそんなこと言ってたけどなんなの?
「君のご両親は君が悪魔に拐われると思わなかったのか?」
「へ?」
「悪魔避けの名は親から贈られる最大の愛情だぞ?」
あ、この世界の名前が長ったらしいのは悪魔に名を呼ばれないようにだった、と思い出した。
なるほど、だからあのイケおじも驚いていた。
もしかして、両親から疎まれているとかそんな感じで思われたんじゃなかろうか。
だからヨシヨシと頭を撫でてくれたし、菓子もくれた。
きっと童顔マジックでえらく幼く思われたのかもしれない。
うーん、違う世界から来たって言ってもいいものか。
羽交い締めにされたダーリンを見ると、ぶんぶんと首を横に振っている。
だからって妙案が浮かぶでもなし、どうしようかと思った時あらあら姉さんが口を開いた。
「あらァ?あんた達、人の事情に軽々しく口を挟むのは良くないと思うわよ?」
見ればあらあら姉さんが睨みつけていた。
二人はバツが悪そうにむむむと口を閉ざす。
自分よりでかい男に対峙する姉さん、惚れそう。
「ジュン!」
その隙をみて男二人を振り払ったダーリンにまた抱きしめられた。
今度は優しく包み込むようなものだったが如何せんとても酒臭い、思わずおえっとえずいてしまったのも仕方ない。
「ジュン、俺だけだ」
「ん?」
「俺だけ見て」
これは、一瞬姉さんに惚れそうになったのがバレている。
熱っぽい瞳に見つめられて頬にするりと伸びてくる手のひらも熱い。
はぁはぁと零す吐息も熱くて、それがどんどんと近づいてくる。
あっと思った時には唇を奪われて、熱くて厚い舌ががぬるりと入ってきた。
ひえっと縮こまった舌をひっぱり出されて吸われて、内頬を擽られ歯列を舐められる。
ダーリンとの初めてのディープキスがこんな公衆の面前とかなんなの?と思っているとバターンとダーリンが倒れた。
ゴン、と派手な音がしたからきっと後頭部を打ち付けたに違いない、痛そう。
「ダーリン!」
揺さぶってもダーリンは目を覚まさない、完全に目を回している。
しんと静まり返った酒場、オレのダーリン!と呼ぶ声だけが響く。
「えっと、君たちできてんの?」
何日ぶり二度目のできてる発言。
ここはきっとこう言うのが正解だ。
「はい」
あの時のダーリンのようにとてもいい笑顔で言えたかどうかは自信がない。
※エールありがとうございます!
めちゃんこ嬉しいです(//∇//)
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