ようこそ!追放令嬢様!

谷絵 ちぐり

文字の大きさ
上 下
7 / 19

何事もタイミング

しおりを挟む

んっ・・・

シェリルは目が覚めるとぼやけた視界がはっきりするまで動けなかった。

何か衝撃的なことを聞いたような気がする。
さて、それはなんだったか。
なにが?全部が?
自分は何に衝撃を受けたのだろうか。
この天井を見るのは2回目になるような・・・
ふと、隣を見るとアンナが寝息をたてていて・・・
それで、こちら側にはサイドテーブルが・・・

「起きた?」
「ヒィイイィィイィッッ・・・」
「え?酷くない?」

アンナと逆方向を向いたシェリルの目に入ったのはニヤリと笑うマルティナ悪魔だった。
しかもこの悪魔、自分も同じようにベットに入りシェリルにぴったり寄り添っている。
鼻息のかかる距離で見つめられて悲鳴を上げない令嬢がいるだろうか。
もう一度気絶しなかったシェリルを褒めてやりたい。

「おい、こら、離れろ、ばかマル!」

男の低い声が聞こえたと思うと、マルティナの頭を大きな手が掴みそのまま持ち上げていった。
その持ち上がった先にそろそろと視線を移すシェリル。
そこには茶髪茶目の青年がマルティナの頭を持ち上げ今にも頭突きする所であった。
ゴドン、という鈍い音と目の前で曲りなりにも女が男に暴力を振るわれたことに対してシェリルはまたしても倒れこんだ。

んっ・・・

シェリルは目を覚ました。
この天井はもう知ってる。
アンナを見るとまだ寝息をたてている。
そして恐る恐る反対側を見る。
誰もいない。ホッとしたシェリルはふと足元が重いことに気づいた。
ゆっくり目線を下げると悪魔がうつ伏せになっている。

「・・・っ!死っ」
「死んでねーから」

少し聞き覚えのあるような、と思いながらシェリルが声のする方を向くとそこには頭突き青年が立っていた。

「は、犯」
「だから死んでねーから」
「ごごごごごめんな、、さい」
「おう」

頭突き青年はくるりと背中を向けてソファセットに向かう。
そちらに目をやると新たな女が二人座っていた。
女二人は二人とも濃紺のワンピースに白いエプロン。
メイドのようだが、なぜ座ってお菓子(っぽいなにか)を食べているのだろう、シェリルは疑問に思う。

紹介するな、と頭突き青年が言う。

「これがルナ」
「よっ、よろひふら」
と向かって右側の漆黒の髪を耳の下で切りそろえた女が口をもぐもぐさせながら手を振った。
「んで、こっちがカーラ。俺の女」
「ども、俺の女のカーラです」
と向かって左側の巨乳の女がぺこりと頭を下げた。
「で、俺がニーサン。よろしくシェリル」
と、頭突き青年改めニーサンが白い歯を出して笑う。

「シェ、シェリルです。よ、よろしくお願いします」

知ってる、と頷いてニーサンは伏しているマルティナに向かう。

「起きてんだろ、ばかマル」

ピクリとマルティナが反応する。

「シェリルに言ったのか?明日から学校の先生やってもらうって」

動かないマルティナ。

「言ってねーんだな。お前今日何してたんだよ」

バシッとマルティナの尻を叩くニーサン。
動かないマルティナの尻を二度三度と叩く。
それでもマルティナは動かない。
あのなシェリル、と頭をガシガシかきながらニーサンが振り向く。
シェリルは微笑んでニーサンを見ている。

「明日から、そこのアンナと一緒に学校で先生やってほしいンだわ。本土で教育受けてたろ?マナーとかそんなんを教えてやってほしいの」

シェリルは微笑んでいる。

「・・・聞いてる?」
「ニーサン、それ意識飛ばしてんじゃない?」
「は?いつ?」
「貴族のお嬢様にスパンキングは刺激強い」

マジかー、と座り込み顔を覆うニーサン。

ジョバンニの言ってた通りだね、とお茶をゴクゴク飲みながら笑うルナであった。


※『貴族の女はやたら倒れる、なんで?』
      ジョバンニ語録第一巻16頁収録
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

婚約破棄されてしまった件ですが……

星天
恋愛
アリア・エルドラドは日々、王家に嫁ぐため、教育を受けていたが、婚約破棄を言い渡されてしまう。 はたして、彼女の運命とは……

【完】婚約破棄ですか? これが普通ですよね

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
王国の夜会で第一王子のフィリップからアマーリエ公爵令嬢に婚約破棄を言い渡された。よくある婚約破棄の一場面です。ゆるっとふわっと仕様です。 Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

虚偽の罪で婚約破棄をされそうになったので、真正面から潰す

千葉シュウ
恋愛
王立学院の卒業式にて、突如第一王子ローラス・フェルグラントから婚約破棄を受けたティアラ・ローゼンブルグ。彼女は国家の存亡に関わるレベルの悪事を働いたとして、弾劾されそうになる。 しかし彼女はなぜだか妙に強気な態度で……? 貴族の令嬢にも関わらず次々と王子の私兵を薙ぎ倒していく彼女の正体とは一体。 ショートショートなのですぐ完結します。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」 侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。 「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」 そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。

魔法が使えなかった令嬢は、婚約破棄によって魔法が使えるようになりました

天宮有
恋愛
 魔力のある人は15歳になって魔法学園に入学し、16歳までに魔法が使えるようになるらしい。  伯爵令嬢の私ルーナは魔力を期待されて、侯爵令息ラドンは私を婚約者にする。  私は16歳になっても魔法が使えず、ラドンに婚約破棄言い渡されてしまう。  その後――ラドンの婚約破棄した後の行動による怒りによって、私は魔法が使えるようになっていた。

その悪役令嬢、問題児につき

ニコ
恋愛
 婚約破棄された悪役令嬢がストッパーが無くなり暴走するお話。 ※結構ぶっ飛んでます。もうご都合主義の塊です。難しく考えたら負け!

処理中です...