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第二章
協力関係
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フレデリック達に与えられた二階建ての一棟、その二階の一番奥の部屋をミシェルはこっそりと窺い見て肩を落とした。
護衛騎士が三人も部屋の外にいる。
室内にもいるに違いない、階段の一段に座り込みミシェルは顔を覆った。
リディアル一人逃がしたところではなんにもならない。
二人一緒でなくては意味がない、子には親が必要だ。
どうしたものか、自分とレオンハルトにはなにも接点がないので近づくことができない。
「・・・どうしよ」
「なにがです?」
突如かけられた声に、ミシェルは驚いて立ち上がったと同時に足を踏み外した。
落ちる、と思った瞬間ふわりと体が浮いた。
「あ、マルセルさま・・・」
「驚かせてしまったようですまない」
腕を引かれて元いた場所に戻されるとミシェルは、跳ねる心臓を抑えて深く長い息を吐いた。
「で、こんなところでどうした?」
あぁ、いや、うん、その、と視線を彷徨わせうろうろと考えるミシェルをマルセルはじっと待った。
リディアルの兄なんだから計画のことを言ってしまってもいいだろうか、それとも騎士として国に仕えるのならば言わない方がいいだろうか。
うんうんと頭を悩ませるミシェルに焦れてマルセルから声をかけた。
「リディの話し相手になったと聞いたが」
「えっ・・・誰から」
「リディの部屋付きのロベルトからだ。眠っていると言われて今日はまだ会えてないんだが」
「あ、あぁ、あの人・・・」
「リディの様子はどうだった?」
リディアルのことを尋ねるその表情は心配げで、心から心配しているのだとミシェルは思った。
信用してもいいんだろうか、もちろん全てがリディアルの為にというわけではない。
リディアルさえいなければという打算も含まれている。
それに一番はフレデリックに非道な真似をしてほしくない。
「あのっ、マルセイユさまはリディアルさまをどう思ってるんですか?このまま国へ帰っても・・・」
「ちょ、待て待て」
マルセルはミシェルの腕を引っ張り、階段を足早に下りた。
そのまま棟を出て、裏側の人気の無い場所へと向かう。
棟の影になったその場所でマルセルは振り向いて胡乱げにミシェルを見やった。
「ミシェル様、リディからなにか聞いたのか?」
「え、いや・・・」
歯切れの悪いミシェル、リディアルをなんとかして助けたいと思っているマルセルはその様子をじっと観察した。
聡いリディアルが目の前のこの頼りなさそうな男に自分のことを言うはずはない、そうは思うがではなぜ探りを入れるようなことを言ったのか。
殿下になにか言われたのだろうか、市井あがりの男一人くらい捻り潰そうと思えば如何様にもできるが殿下の婚約者候補というその一点だけでそれはできない。
どうしたものか、とマルセルもまた思案した。
「あのっ、マルセルさま!僕はリディアルさまとお腹の子を助けたい・・・です」
意を決したように言うミシェルに嘘はないように見えた、いやそもそも嘘をつけるような器ではないとマルセルはじっとミシェルを見下ろした。
「それは本心か?リディがこのまま何らかの罰を受けた方がそちらには都合がいいのでは?候補ではなく、本当の婚約者になれるかもしれない」
「そう、かもしれません。でも、僕はフレデリックさまに手を汚してほしくないんです。そうなれば、フレデリックさまの心にはリディアルさまが根付いてしまう。だから、また姿を消してもらう方が・・・」
「都合が良いというわけか」
こくりと頷いたミシェル、綺麗事ばかりではなく自分の下心をも吐露する姿に信用できるかもしれないとマルセルもまた決心した。
「俺はリディをここから逃がす」
パッと顔をあげたミシェルの丸く大きな目が開かれ、良かったと安堵の溜息を吐いた。
「で、どうやって逃がそうとしたんだ?」
「その前にひとつ、レオンハルト殿下も一緒に逃がしたいのです。子には両親がいてほしいと僕は思ってます」
「だから、あの場にいたのか」
「・・・はい、でも警備が厳重でどうしたらいいのかなって」
視線を落としてほりほりと頬をかくミシェル、あどけなく素直なその様子は好感が持てた。
フレデリックが傍においているのもわかったような気がする。
表の顔と裏の顔を使い分ける貴族間において、ミシェルの素直さはきっと心地よいのだ。
「どうやって逃がすつもりだったのだ?」
「明日の朝にはここを発つので、今夜にでもこっそり・・・」
あまりの計画性の無さにマルセルは唖然とし、ミシェルはこてと首を傾げてバツが悪そうな笑みを浮かべてさっと目を逸らした。
痛む頭を抑えながらマルセルは自分の計画をミシェルに話した。
※予約できてませんでした。すみません。
護衛騎士が三人も部屋の外にいる。
室内にもいるに違いない、階段の一段に座り込みミシェルは顔を覆った。
リディアル一人逃がしたところではなんにもならない。
二人一緒でなくては意味がない、子には親が必要だ。
どうしたものか、自分とレオンハルトにはなにも接点がないので近づくことができない。
「・・・どうしよ」
「なにがです?」
突如かけられた声に、ミシェルは驚いて立ち上がったと同時に足を踏み外した。
落ちる、と思った瞬間ふわりと体が浮いた。
「あ、マルセルさま・・・」
「驚かせてしまったようですまない」
腕を引かれて元いた場所に戻されるとミシェルは、跳ねる心臓を抑えて深く長い息を吐いた。
「で、こんなところでどうした?」
あぁ、いや、うん、その、と視線を彷徨わせうろうろと考えるミシェルをマルセルはじっと待った。
リディアルの兄なんだから計画のことを言ってしまってもいいだろうか、それとも騎士として国に仕えるのならば言わない方がいいだろうか。
うんうんと頭を悩ませるミシェルに焦れてマルセルから声をかけた。
「リディの話し相手になったと聞いたが」
「えっ・・・誰から」
「リディの部屋付きのロベルトからだ。眠っていると言われて今日はまだ会えてないんだが」
「あ、あぁ、あの人・・・」
「リディの様子はどうだった?」
リディアルのことを尋ねるその表情は心配げで、心から心配しているのだとミシェルは思った。
信用してもいいんだろうか、もちろん全てがリディアルの為にというわけではない。
リディアルさえいなければという打算も含まれている。
それに一番はフレデリックに非道な真似をしてほしくない。
「あのっ、マルセイユさまはリディアルさまをどう思ってるんですか?このまま国へ帰っても・・・」
「ちょ、待て待て」
マルセルはミシェルの腕を引っ張り、階段を足早に下りた。
そのまま棟を出て、裏側の人気の無い場所へと向かう。
棟の影になったその場所でマルセルは振り向いて胡乱げにミシェルを見やった。
「ミシェル様、リディからなにか聞いたのか?」
「え、いや・・・」
歯切れの悪いミシェル、リディアルをなんとかして助けたいと思っているマルセルはその様子をじっと観察した。
聡いリディアルが目の前のこの頼りなさそうな男に自分のことを言うはずはない、そうは思うがではなぜ探りを入れるようなことを言ったのか。
殿下になにか言われたのだろうか、市井あがりの男一人くらい捻り潰そうと思えば如何様にもできるが殿下の婚約者候補というその一点だけでそれはできない。
どうしたものか、とマルセルもまた思案した。
「あのっ、マルセルさま!僕はリディアルさまとお腹の子を助けたい・・・です」
意を決したように言うミシェルに嘘はないように見えた、いやそもそも嘘をつけるような器ではないとマルセルはじっとミシェルを見下ろした。
「それは本心か?リディがこのまま何らかの罰を受けた方がそちらには都合がいいのでは?候補ではなく、本当の婚約者になれるかもしれない」
「そう、かもしれません。でも、僕はフレデリックさまに手を汚してほしくないんです。そうなれば、フレデリックさまの心にはリディアルさまが根付いてしまう。だから、また姿を消してもらう方が・・・」
「都合が良いというわけか」
こくりと頷いたミシェル、綺麗事ばかりではなく自分の下心をも吐露する姿に信用できるかもしれないとマルセルもまた決心した。
「俺はリディをここから逃がす」
パッと顔をあげたミシェルの丸く大きな目が開かれ、良かったと安堵の溜息を吐いた。
「で、どうやって逃がそうとしたんだ?」
「その前にひとつ、レオンハルト殿下も一緒に逃がしたいのです。子には両親がいてほしいと僕は思ってます」
「だから、あの場にいたのか」
「・・・はい、でも警備が厳重でどうしたらいいのかなって」
視線を落としてほりほりと頬をかくミシェル、あどけなく素直なその様子は好感が持てた。
フレデリックが傍においているのもわかったような気がする。
表の顔と裏の顔を使い分ける貴族間において、ミシェルの素直さはきっと心地よいのだ。
「どうやって逃がすつもりだったのだ?」
「明日の朝にはここを発つので、今夜にでもこっそり・・・」
あまりの計画性の無さにマルセルは唖然とし、ミシェルはこてと首を傾げてバツが悪そうな笑みを浮かべてさっと目を逸らした。
痛む頭を抑えながらマルセルは自分の計画をミシェルに話した。
※予約できてませんでした。すみません。
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