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それはなんていうか浪漫です
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部活を終えて急勾配を登って見上げた寮部屋に明かりはついていなかった。
まだ帰ってないのか、それともまた帰らないつもりなのか。
朝陽は頭を振って、ただいま帰りましたーとその扉を開けた。
おかえりーと寮監室から顔を出した雨森に那智のことを聞いてみる。
「なち、帰ってきました?」
「えー、どうだろ。靴箱見たら?だいたいその端っこのとこ使ってるよ」
見れば白とグレーのしましまのスリッパが置いてあった。
その隣にはショートブーツとサンダルがある。
なちは今日スニーカーだったから、帰ってないんだなと思った。
「月城くん、ご飯食べるでしょ?」
「いただきます」
「ラップかけてあるからチンして食べて。味噌汁は自分で温めてね」
はーい、と返事して食堂で一人で食べた。
なんだか味気ない、那智と食べたご飯は美味しかったなと黙々と食事を終えた。
その夜、那智は遅くに帰ってきた。
アルコールの匂いが薄ら臭うのでバイト上がりなのかもしれない。
その前髪にヘアピンは無い。
「おかえり、なち」
「・・・ただいま」
「シャワー行く?」
ふんっと鼻を鳴らして那智は昼間買ったTシャツが入った袋とプラ籠の風呂セットを持って無言で部屋を出ていった。
スマホの準備をして待とう、スマホカメラを起動して武士のように座して待つ。
目を閉じて耳を澄ませて、心の中を落ち着かせながらカウントダウンする。
パタパタとスリッパの音が聞こえて、あれは階段を二段飛ばしで登ってるようだ、一瞬乱れた足音は足を滑らせたのかもしれない。
大きくなる足音にスマホを構えて、すかさず撮る!撮る!撮る!
「なにしてくれとんじゃー~ーっこれっなんやねん!」
湿った髪をオールバックにして、怒りに滲んだ目は薄ら膜が張っており手に持ったプラ籠はガシャンと音を立てて床に落ちた。
「んー、彼シャツ?」
「スマホを下ろせー!」
「シーー~っ」
朝陽は人差し指を那智の唇スレスレに持っていき、もう遅いよと小さく言った。
ビクッと肩を揺らした拍子に肩からTシャツがずり落ちる。
XLのそれは那智にはだいぶ大きい、裾は膝上まであってハーフパンツが少しだけ覗いていた。
「俺さ、何回も聞いたよね?」
「そ、やけど、まさかこん、こんなんやと思わへんやろ・・・てか、写真撮った?」
「撮った」
「消せ、今、すぐ、ここで!僕の目の前で消せ!」
「いいよ」
ホッと息を吐く那智は、ずずいと朝陽に詰め寄った。
視線はスマホを持つ朝陽の手元に注がれている。
「早くして」
「これを消す代わりに連絡先の交換しよ」
「嫌」
「じゃ、消さない。明日、友だちに見せよっと。なちが彼シャツ着てくれたって」
「この、、卑怯者が・・・。いや、別にええんちゃう?男がちょっとサイズの合わへんTシャツ着てるだけやもんな」
「そうだな。じゃ、ロック画面にしよう」
ひどい、と那智は泣き崩れた。
両手で顔を覆い、うっうっと唸りながら座り込む。
「あ、なち、なち?」
「うっうぅっ、嫌がることするなんてひどいよ・・・」
ごめんやり過ぎた、と傍に寄り背中を撫でさすろうとする朝陽の隙をついて那智はスマホを奪った。
「ばーかばーか」
「っ嘘泣きとか卑怯だぞ!」
「どっちが」
スマホを操作しようとする手元のスマホを上からひょいと朝陽が取り上げる。
「あ、ずるいぞ」
「どこが」
「身長差あるやん!」
「俺が俺のを取り返すのにずるいも何もないだろ」
ぐぬぬと真っ赤な顔した那智がジャンプして高く掲げられたスマホを奪おうとするが、あと一歩届かない。
ほーらほーら、とゆらゆら揺らしながら逃げる朝陽を那智は追いかける。
狭い部屋の中をくるくると回りながら、待て待たないと言い合う。
「簡単だろ?ちょっとフリフリするだけ」
「だって、絶対しょうもないメッセージ送ってくるやろ」
「すごい、よくわかってんね」
「わからいでか」
なぜか得意気な那智の声に朝陽はくるりと振り向いた。
わぷっと勢いで飛び込んできた那智を抱きとめる。
「急に止まんなや、鼻折れるやんけ」
「んなわけないだろ。なち、連絡先教えて?」
「・・・嫌や。離せ」
「お願い。じゃないとこのまま背骨を折る」
「・・・しょうもないメッセージ送るなや」
「しょうもなくなかったらいい?」
「ああ言えばこう言う」
必死なんだよ、と言う朝陽の声音に那智は声を上げて笑った。
釣られて笑った朝陽が、相性いいじゃんと言う。
調子のんな、と叩かれた胸のドキドキが治まらない。
またひとつ那智に近づいた気がする、そんな夜更けの出来事。
まだ帰ってないのか、それともまた帰らないつもりなのか。
朝陽は頭を振って、ただいま帰りましたーとその扉を開けた。
おかえりーと寮監室から顔を出した雨森に那智のことを聞いてみる。
「なち、帰ってきました?」
「えー、どうだろ。靴箱見たら?だいたいその端っこのとこ使ってるよ」
見れば白とグレーのしましまのスリッパが置いてあった。
その隣にはショートブーツとサンダルがある。
なちは今日スニーカーだったから、帰ってないんだなと思った。
「月城くん、ご飯食べるでしょ?」
「いただきます」
「ラップかけてあるからチンして食べて。味噌汁は自分で温めてね」
はーい、と返事して食堂で一人で食べた。
なんだか味気ない、那智と食べたご飯は美味しかったなと黙々と食事を終えた。
その夜、那智は遅くに帰ってきた。
アルコールの匂いが薄ら臭うのでバイト上がりなのかもしれない。
その前髪にヘアピンは無い。
「おかえり、なち」
「・・・ただいま」
「シャワー行く?」
ふんっと鼻を鳴らして那智は昼間買ったTシャツが入った袋とプラ籠の風呂セットを持って無言で部屋を出ていった。
スマホの準備をして待とう、スマホカメラを起動して武士のように座して待つ。
目を閉じて耳を澄ませて、心の中を落ち着かせながらカウントダウンする。
パタパタとスリッパの音が聞こえて、あれは階段を二段飛ばしで登ってるようだ、一瞬乱れた足音は足を滑らせたのかもしれない。
大きくなる足音にスマホを構えて、すかさず撮る!撮る!撮る!
「なにしてくれとんじゃー~ーっこれっなんやねん!」
湿った髪をオールバックにして、怒りに滲んだ目は薄ら膜が張っており手に持ったプラ籠はガシャンと音を立てて床に落ちた。
「んー、彼シャツ?」
「スマホを下ろせー!」
「シーー~っ」
朝陽は人差し指を那智の唇スレスレに持っていき、もう遅いよと小さく言った。
ビクッと肩を揺らした拍子に肩からTシャツがずり落ちる。
XLのそれは那智にはだいぶ大きい、裾は膝上まであってハーフパンツが少しだけ覗いていた。
「俺さ、何回も聞いたよね?」
「そ、やけど、まさかこん、こんなんやと思わへんやろ・・・てか、写真撮った?」
「撮った」
「消せ、今、すぐ、ここで!僕の目の前で消せ!」
「いいよ」
ホッと息を吐く那智は、ずずいと朝陽に詰め寄った。
視線はスマホを持つ朝陽の手元に注がれている。
「早くして」
「これを消す代わりに連絡先の交換しよ」
「嫌」
「じゃ、消さない。明日、友だちに見せよっと。なちが彼シャツ着てくれたって」
「この、、卑怯者が・・・。いや、別にええんちゃう?男がちょっとサイズの合わへんTシャツ着てるだけやもんな」
「そうだな。じゃ、ロック画面にしよう」
ひどい、と那智は泣き崩れた。
両手で顔を覆い、うっうっと唸りながら座り込む。
「あ、なち、なち?」
「うっうぅっ、嫌がることするなんてひどいよ・・・」
ごめんやり過ぎた、と傍に寄り背中を撫でさすろうとする朝陽の隙をついて那智はスマホを奪った。
「ばーかばーか」
「っ嘘泣きとか卑怯だぞ!」
「どっちが」
スマホを操作しようとする手元のスマホを上からひょいと朝陽が取り上げる。
「あ、ずるいぞ」
「どこが」
「身長差あるやん!」
「俺が俺のを取り返すのにずるいも何もないだろ」
ぐぬぬと真っ赤な顔した那智がジャンプして高く掲げられたスマホを奪おうとするが、あと一歩届かない。
ほーらほーら、とゆらゆら揺らしながら逃げる朝陽を那智は追いかける。
狭い部屋の中をくるくると回りながら、待て待たないと言い合う。
「簡単だろ?ちょっとフリフリするだけ」
「だって、絶対しょうもないメッセージ送ってくるやろ」
「すごい、よくわかってんね」
「わからいでか」
なぜか得意気な那智の声に朝陽はくるりと振り向いた。
わぷっと勢いで飛び込んできた那智を抱きとめる。
「急に止まんなや、鼻折れるやんけ」
「んなわけないだろ。なち、連絡先教えて?」
「・・・嫌や。離せ」
「お願い。じゃないとこのまま背骨を折る」
「・・・しょうもないメッセージ送るなや」
「しょうもなくなかったらいい?」
「ああ言えばこう言う」
必死なんだよ、と言う朝陽の声音に那智は声を上げて笑った。
釣られて笑った朝陽が、相性いいじゃんと言う。
調子のんな、と叩かれた胸のドキドキが治まらない。
またひとつ那智に近づいた気がする、そんな夜更けの出来事。
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