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望ましい
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トントンと軽い音を二、三たててナルシュは去っていった。
きっと階段から飛び降りたのだろう、鈴は二度も乱暴に扱われたからかもうそのカランという音は聞こえなかった。
「ナルッ!・・・」
今、追いかけないでいつ追いかけるのだとエルドリッジが一歩踏み出したところでそれはリヤと皇女に阻まれた。
「あれはそなたの最愛か?」
「・・・退いてください。手荒な真似はしたくない」
「それはこちらの台詞だ」
不敵に笑う皇女、いつの間にか背後に回っているネイサン、ただひとつの出口に陣取るリヤ。
「なんですか」
「彼はさっき、護衛が五人と言ったな?」
「あぁ、というか、やはり三人だけじゃなかったんですね。そんなことだろうとは思ってましたが・・・」
「ふふふ、そりゃね」
座って話をしよう、皇女はそう言い腰掛けた。
リヤは階下に下りていき、ネイサンは皇女の背後に控えた。
「で?実際何人連れて来たんですか?」
「四人だ」
親指を折り曲げ残りの指をぴんと立てる皇女、音もなく戻ってきたリヤがその前に茶を置いた。
茶は湯気をたて、ほんの少しだけりんごの匂いがする。
「・・・四って」
「彼は五人と言ったね?そちら側で誰かつけていたか?」
「いや・・・そういう話もあったんだが、その・・・陛下が」
「陛下が?」
「ゆっくり街を散策するならうろちょろする奴がいない方がいい、と。それに、あなた方は護衛も要らぬほど強いだろう、と」
皇女は目尻をピクリと動かしたかと思うと、俯いて肩を震わせ始めた。
んっふっふっふと不気味な笑い声と共に顔を上げ、面白い、そう言って膝を叩く。
「先のうちの国が迷惑をかけた件もそちらは何も望まなかったな?ただ、憐れな子を痛み救済しようとしていた。こちらに帰った子らは息災か?」
「えぇ、健やかに暮らしております」
「それは良かった。賢王なのだな」
落ち着いて茶を飲む皇女にエルドリッジは内心イラついていた。
早くナルシュの誤解を解かなければ、礼儀がなってないとかではない。
ただネイサンに嫉妬してしまっただけだ。
ナルシュの飾り気の無いまっすぐな言葉は弱った心にじんわりと落ちるのだ。
だから、ネイサンに声などかけてほしくなかった。
早くしないとあれは突飛もないことを思いつきそうな気がする。
「追いかけたいか?」
「は?」
「私も彼から話を聞きたい」
「・・・五人目」
「そうだ」
ふふんと足を組みかける仕草はこちらの返答の是非など問うてはいない。
皇女は側近のリヤとネイサン、それに帝国軍の精鋭四人を連れての旅路だった。
マーナハン王国から入り、モーティマー公国からバセット王国へ国を縦断した。
どの国も平和で、民の顔は皆一様に輝いていたという。
もちろん、各々の幸不幸はあるだろうが感じた空気は荒んだものではなかった。
数多の小国を取り込んで統一させた帝国はまだまだ不穏の種がある。
そのひとつがここコラソン王国で起こった拐かし事件である。
他国にまで波及してしまったことで、皇帝は目下燻った火種を消すのに躍起になっているという。
「皇都は華やかだったろう?」
「えぇ」
「ふふっ、地方はまだまだだ。ここに来るまでできるだけ辺境の地も見て回った。良いところだったよ、人々は牧歌的でな。良い手本になった。帝国がそうなるのはまだ先だろう。だが礎は築いておかねば・・・」
皇女は茶を飲み干し、エルドリッジの前に置かれた茶は手付かずのまま冷めてしまった。
「さて、彼の見た五人目の話を聞きに行こうか」
「その前に一つ言っておきたい。あれは私の命にも等しい。絶対に巻き込まないと約束してほしい」
「・・・驚いた。帝国で会った時とは大違いだな、そなたを変えたのは彼か?」
皇女は目を丸くした後に喉を鳴らして笑って、背後を振り返った。
「ネイト、勝ち目は無いぞ」
「・・・・・・はい」
渋々絞り出したような声にエルドリッジはまた苛立ち、邪な目で見るなよと釘をさした。
その頃ハルフォード商会では、ナルシュがミーシャに宣言していた。
「ミーシャ、全然駄目だった。勉強したことすぐに出来なかった。エルに恥をかかせちゃった」
「ふぅん」
「だから、今日から特訓する!リュカのとこに泊まり込みでマーサやソルジュやエマに徹底的に仕込んでもらう!!」
ぐぐぐっと拳を握りしめ決意に燃える瞳でナルシュは言う。
「ちゃんとできるまでエルには会わない!」
うわぁまためんどくさいこと言ってる、とミーシャは思った。
思ったが、そう言えば今よりめんどくさいことになるのは火を見るより明らかだ。
どうしたもんか、と考えたミーシャだったが、これ別に私には関係ないなと結論が出た。
「頑張れ」
微笑むミーシャにナルシュは大きく頷いた。
エルに相応しい男に俺はなる!!
エルドリッジの予感は見事に的中した。
※BL大賞の結果発表がありました。
最終結果は、その愛35位諦めない92位選ばれない125位でした。
応援投票していただいたのになんの成果もあげられず、不甲斐ない結果になってしまい申し訳ないです。
ですが、私自身の予想を大きく上回る順位に嬉しい気持ちが過分にあります。
いやっふーと小躍りしたのはここだけの話です。
読んでくださり、応援してくださり本当にありがとうございました。
これからも細々と書きながら精進して参ります。
改めてよろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈))
きっと階段から飛び降りたのだろう、鈴は二度も乱暴に扱われたからかもうそのカランという音は聞こえなかった。
「ナルッ!・・・」
今、追いかけないでいつ追いかけるのだとエルドリッジが一歩踏み出したところでそれはリヤと皇女に阻まれた。
「あれはそなたの最愛か?」
「・・・退いてください。手荒な真似はしたくない」
「それはこちらの台詞だ」
不敵に笑う皇女、いつの間にか背後に回っているネイサン、ただひとつの出口に陣取るリヤ。
「なんですか」
「彼はさっき、護衛が五人と言ったな?」
「あぁ、というか、やはり三人だけじゃなかったんですね。そんなことだろうとは思ってましたが・・・」
「ふふふ、そりゃね」
座って話をしよう、皇女はそう言い腰掛けた。
リヤは階下に下りていき、ネイサンは皇女の背後に控えた。
「で?実際何人連れて来たんですか?」
「四人だ」
親指を折り曲げ残りの指をぴんと立てる皇女、音もなく戻ってきたリヤがその前に茶を置いた。
茶は湯気をたて、ほんの少しだけりんごの匂いがする。
「・・・四って」
「彼は五人と言ったね?そちら側で誰かつけていたか?」
「いや・・・そういう話もあったんだが、その・・・陛下が」
「陛下が?」
「ゆっくり街を散策するならうろちょろする奴がいない方がいい、と。それに、あなた方は護衛も要らぬほど強いだろう、と」
皇女は目尻をピクリと動かしたかと思うと、俯いて肩を震わせ始めた。
んっふっふっふと不気味な笑い声と共に顔を上げ、面白い、そう言って膝を叩く。
「先のうちの国が迷惑をかけた件もそちらは何も望まなかったな?ただ、憐れな子を痛み救済しようとしていた。こちらに帰った子らは息災か?」
「えぇ、健やかに暮らしております」
「それは良かった。賢王なのだな」
落ち着いて茶を飲む皇女にエルドリッジは内心イラついていた。
早くナルシュの誤解を解かなければ、礼儀がなってないとかではない。
ただネイサンに嫉妬してしまっただけだ。
ナルシュの飾り気の無いまっすぐな言葉は弱った心にじんわりと落ちるのだ。
だから、ネイサンに声などかけてほしくなかった。
早くしないとあれは突飛もないことを思いつきそうな気がする。
「追いかけたいか?」
「は?」
「私も彼から話を聞きたい」
「・・・五人目」
「そうだ」
ふふんと足を組みかける仕草はこちらの返答の是非など問うてはいない。
皇女は側近のリヤとネイサン、それに帝国軍の精鋭四人を連れての旅路だった。
マーナハン王国から入り、モーティマー公国からバセット王国へ国を縦断した。
どの国も平和で、民の顔は皆一様に輝いていたという。
もちろん、各々の幸不幸はあるだろうが感じた空気は荒んだものではなかった。
数多の小国を取り込んで統一させた帝国はまだまだ不穏の種がある。
そのひとつがここコラソン王国で起こった拐かし事件である。
他国にまで波及してしまったことで、皇帝は目下燻った火種を消すのに躍起になっているという。
「皇都は華やかだったろう?」
「えぇ」
「ふふっ、地方はまだまだだ。ここに来るまでできるだけ辺境の地も見て回った。良いところだったよ、人々は牧歌的でな。良い手本になった。帝国がそうなるのはまだ先だろう。だが礎は築いておかねば・・・」
皇女は茶を飲み干し、エルドリッジの前に置かれた茶は手付かずのまま冷めてしまった。
「さて、彼の見た五人目の話を聞きに行こうか」
「その前に一つ言っておきたい。あれは私の命にも等しい。絶対に巻き込まないと約束してほしい」
「・・・驚いた。帝国で会った時とは大違いだな、そなたを変えたのは彼か?」
皇女は目を丸くした後に喉を鳴らして笑って、背後を振り返った。
「ネイト、勝ち目は無いぞ」
「・・・・・・はい」
渋々絞り出したような声にエルドリッジはまた苛立ち、邪な目で見るなよと釘をさした。
その頃ハルフォード商会では、ナルシュがミーシャに宣言していた。
「ミーシャ、全然駄目だった。勉強したことすぐに出来なかった。エルに恥をかかせちゃった」
「ふぅん」
「だから、今日から特訓する!リュカのとこに泊まり込みでマーサやソルジュやエマに徹底的に仕込んでもらう!!」
ぐぐぐっと拳を握りしめ決意に燃える瞳でナルシュは言う。
「ちゃんとできるまでエルには会わない!」
うわぁまためんどくさいこと言ってる、とミーシャは思った。
思ったが、そう言えば今よりめんどくさいことになるのは火を見るより明らかだ。
どうしたもんか、と考えたミーシャだったが、これ別に私には関係ないなと結論が出た。
「頑張れ」
微笑むミーシャにナルシュは大きく頷いた。
エルに相応しい男に俺はなる!!
エルドリッジの予感は見事に的中した。
※BL大賞の結果発表がありました。
最終結果は、その愛35位諦めない92位選ばれない125位でした。
応援投票していただいたのになんの成果もあげられず、不甲斐ない結果になってしまい申し訳ないです。
ですが、私自身の予想を大きく上回る順位に嬉しい気持ちが過分にあります。
いやっふーと小躍りしたのはここだけの話です。
読んでくださり、応援してくださり本当にありがとうございました。
これからも細々と書きながら精進して参ります。
改めてよろしくお願いします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈))
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