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仲良くしたい!

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エバンズ家のアプローチに並んだ目の前の三台の馬車を見てジェラールは思う。
なんでこうなった、と。

「ジェラール、旅行に行きませんか?」
「一緒に?」
「もちろんそうです」

キュッと握る袖口がたまらないし、もじもじとはにかんだ笑顔に弱いのだ、一も二もなく頷いてしまった自分は悪くない。

「リュカ君とナルシュも一緒です」

なぜナルシュは呼び捨てなのか、と思ったがそんなことは些末な問題だ。
ふふ、と花が綻ぶような笑みに勝てる奴はいるのだろうか、いやいない。
ここで同じように並んでる奴らもきっとそうなのだ。
なんだかんだと言いくるめられたのだろう。
愛する人には誰しも弱いものだ、それもとことん弱い。

「ニコラス義兄様、今日も素敵です」
「リュカ君も可愛いよ。その帽子よく似合ってる」

アイクの瞳の色なんですよ、とこしょこしょとリュカはニコラスに耳打ちした。
ニコラスも、素敵だねとリュカに耳打ちをする。
何を言ってるかわからないが、とても良いとジェラールは思った。
その空気をぶち壊したのはリュカだった。

「ニコラス義兄様、馬車に一緒に乗りましょうね」
「え?」

「リュカ!!」

アイザックが大股で歩み寄りリュカの肩に手を置いて揺さぶった。

「リュカは俺とで行くんだ。そうだろう?」
「でも、ニコラス義兄様と仲良くなりたいです」
「もう充分仲良しだ」
「カードをしたり菓子を食べたりするのです」
「俺とでもできるだろ?」
「それは、まぁそうですけど」

むむぅと口を尖らせるリュカと必死なアイザックに今度はナルシュが言い放った。

「じゃ、俺もリュカとニコラスと一緒の馬車がいい」
「ナル!!」
「あんだよ」
「なんで!」
「なんでだぁ!?お前、昨夜俺にした事忘れたわけじゃないだろうな!」

そう、昨夜ナルシュは旅行前日だからゆっくり寝たいと言った。
それをエルドリッジがぎゅってするだけ、ちゅってするだけ、ちょっと触るだけ、と結局ナルシュはめちゃくちゃにされた。
しかしこれにはエルドリッジにも言い分がある。
他の二組と違って、エルドリッジ達はまだ番っていない。
道中なにがあるかわからない、体の隅々まで匂い付けマーキングするのはαのさがだと思ってほしい。
それに最終的には、もっともっとと煽ったのはナルシュなのだ。
猫が威嚇するかの如くフシャーッと憤るそれをニコラスがよしよしと宥めている。

「ニコラス君はどうしたい?」
「え?」

ニコラスがナルシュを撫でる手を止めて見るとジェラールが微笑んでいた。

「えっと、私は・・・」
「ニコラス義兄様!僕と一緒がいいですよね?」
「ニコラス!ここは新兄弟で仲良くしような?」

新たに出来た義弟二人に両腕をぎゅうっととられ、上目遣いでお願いされるとニコラスもコクンと頷くしかなかった。
さりげなく兄弟からジェラールが省かれているがそれでいいのか。

「あの・・・ジェラール?」
「あぁ、わかったよ。最初の休憩地点まではそれで行こうか」
「義兄上!」
「まぁまぁ、アイザック君」

ジェラールはアイザックとエルドリッジに向き直って、こそりと言う。

「休憩地点で取り返せばいいよ」

ふふふと不敵な笑みに、アイザックとエルドリッジはゴクリと喉を鳴らした。
ジェラールの底知れぬ怖さを初めて体験した二人は、そういやこの人なにもかもすっ飛ばして強引に番を手に入れたんだったと遠い目になるのだった。

「やっぱりお兄様は優しいですねっ」
「だな、どっかの心の狭い馬鹿どもとは違うな」
「ニコラス義兄様は見る目がありますよ!」
「そ、う、かな?・・・」

うんうんと満面の笑みで見返してくる義弟達になんと答えたらいいものか。
ジェラールの本性を知ってしまっているニコラスは内心震えていた。
道中も楽しみだね、とジェラールと話していたのだ。
出鼻からやらかしてしまった気がしてならないニコラスだった。

そんな中、とっくに荷を積み終わって出立を今か今かと待っているのは使用人達である。
じゃあ行くか、と若干不貞腐れた声色のアイザックにやっとかとホッとする。

「お土産買ってくるね!」

リュカ愛用のピコピコポシェットにはバセット行き同様今回も、お土産一覧表が入っている。
行ってらっしゃいませ、と総出で頭を下げる中、あぁーやっぱりうちの奥様が一番可愛いなぁと皆思うのであった。


Ω三人を乗せた馬車は隊列の真ん中を走る。
ナルシュは乗り込むなりごろんと横になった。
ふかふかの座席でクッションを抱きしめる。

「もう寝る」
「小兄様、まだ王都も出てませんよ?」
「いいのー、眠い」
「リュカ君、寝かせてあげよう?」

そう言ってニコラスは備え付けられたブランケットをナルシュにかけた。

「カードができないので、ニコラス義兄様お話しましょう」
「うん」

リュカ君は可愛いなぁ、とこの時ニコラスは思った。
しかし、すぐさまそれは後悔に変わった。
リュカはポシェットから帳面とペンを取り出して破顔する。

「お兄様との馴れ初めをお聞かせください!」

好奇心いっぱい、興味津々の瞳は爛々と輝いていた。
ジェラール助けて、とニコラスが思ってもしょうがない。


一方、‪α‬三人を乗せた馬車は隊列の最後尾を走る。
先頭は空馬車が走っていた。
無言の馬車内でエルドリッジが言う。

「これさ、俺たち三人で乗る必要ないんじゃない?」

ごもっとも。





※BL大賞もあと半分ですね。
読んでくださってるあなた!投票してくださったあなた!
全てのあなたに感謝です。
ありがとうございます(ᴗ͈ˬᴗ͈)‪‪


※みんな仕事はどうなってんの?と思われた方に補足を。
年末年始休暇です!キリッ
そんなもんあったの?あったみたいです!
今までどうしてたの?しっぽりしてたと思います!
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感想 184

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