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番う二人

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瞼の裏がチカチカして、背筋がゾクゾクして落ち着かない。
口開けて、舌出して、と要求に応じ続けたニコラスはすっかり翻弄されていた。

「ニコラス君、発情した?」
「・・・し、てない」
「そんないやらしい顔してるのに?」

脳に酸素を送るために一生懸命呼吸をしているだけで、いやらしくはないとニコラスは思う。

「まぁ、でもここで発情しても困るね」

そう、誰も来ないといってもここは騎士団本部の裏庭なのである。
よいしょ、とニコラスを抱き上げたジェラールはその耳元に囁いた。

「発情できるとこ行こうか」

にこやかな顔と台詞が全く合っていない。
ニコラスがフルフルと首を振っても聞き入れてくれそうにない。

「気づいてない?フェロモンがすごく出てる。半分くらい発情してんじゃない?欲しい、満たして、愛してって言ってるみたい」
「耳元で、言わないで」
「じゃ、大きな声で言おうか」
「っ、駄目!」

思わずその胸にしがみついたニコラスに、ジェラールがクスと漏らした笑いは意地悪で、瞳には愉悦の色が浮かんでいた。
これは誰だろう?空気が丸くなったように穏やかで、眠たくなるような声音で、包み込むような優しさを持った人、だと思っていた。

「ジェ、ラールど・・・」
「ん、いいね。そう呼んで」
「ジェラール?」
「ニコラス君」

本部に入る扉の前でピタリと足を止めたジェラールの顔がニコラスに近づいていく。
これはまたキスをされてしまう、そう思って目を閉じたニコラスだったが一向にその気配がない。
そろっと瞼をあげると、にんまりと笑った顔があった。
そして、ふうっと唇に息を吹きかけられる。
息と共にぶわっと広がったバーベナのスッキリした香りは、甘さを多分に含みニコラスを包みこんだ。


その後、ニコラスはどうしてかコックスヒル邸のジェラールの寝室で蕩かされていた。
ニコラスの逞しい体を、綺麗だ、美しいとジェラールは撫で回し唇を這わせた。
裏庭を出てここまでの記憶がない。

「ほら、力抜いて。まだ硬いよ」

そう言って胸を揉むジェラールだったが、そんなの無理だとニコラスは思う。
いつの間にか自分だけ裸に剥かれて、ジェラールはきっちりと着込んでいるのだ。
羞恥心が勝って逃げ出したくて、暴れてみてもあっさりと押さえ込まれてしまう。

「あはは、ニコラス君に内緒で少し鍛えてたんだよ。嫌われたくはないからね」

言いながらサイドテーブルの引き出しから取り出した瓶からとろりとした液体を出した。
手のひらでにちゃにちゃと擦り合わせて、芯を持ち始めたニコラスの陰茎に触れる。
馴染ませるようにゆるゆると上下に動かされてそれはあっという間に勃ち上がった。
いくら鍛えているとはいえ、体に見合わない小さなΩのそれが恥ずかしいとニコラスは両手で顔を覆った。

「ニコラス君、手をどけて?」
「無理、です」
「もう一回言った方がいい?」

ずんと腹の奥に響く低い声が恐ろしくてゆっくり顔を見せると、思いのほか穏やかな顔があってホッとしたのは束の間だった。
あっという間に唇に吸いつかれ、舌を捩じ込まれた。
唾液を送り込まれる度に熱があがっていく。
その間も陰茎はぐちゅぐちゅと卑猥な音をたてているし、胸の突起はコリコリと弄られて声も出せずにニコラスはただただ快楽に支配された。

「ぁっ・・・イッちゃうからっ、やめっ・・・」
「いけ」

耳をねぶられながら命令されたニコラスはあっさり吐精した。
その瞬間に後孔からとぷりと愛液が零れた。
わなわなと震えるニコラスをジェラールは嬉しそうに抱きしめてまたぞろキスをした。

「可愛いね」
「あっあぅっんっ・・・はっあんっ・・・」

つぷりと後孔に差し込まれた指はなにか探りながら侵入してくる。
ここかな?と前立腺を当てられてすりすりと撫でられた。

「ここ気持ちいい?」
「わ、わかんなっ、、あぁっ!」
「わかんないの?」

増やされた指も相まってそこを押しつぶすように捏ねられてニコラスは嬌声をあげた。

「ここ、気持ちいい?」
「あぁっ、あっあっ、き、もちい・・・」
「さっき嘘ついた?」

ぐりぐりと攻めたてられてニコラスの口から出るのは声にもならない喘ぎ声だけだった。


ニコラスにはなんとなく思い描く理想があった。
騎士団の男達が語る下半身の話に辟易していたせいもあるかもしれない。
初めては甘く囁かれながら、ふわふわと雲の上のような気持ちで甘い砂糖菓子のように抱かれたいと。
ジェラールならきっと、と夢見ていた。
だが、現実は背後からどちゅどちゅと穿たれている。
確かに可愛い、綺麗と愛してくれるが行為は激しい。
もう訳がわからない。

「ここ突かれるのと、ぐりぐり押すのとどっちがいい?」
「やだ、、もうっわかんなっ、」
「どっち?」
「はっ、あぁっ、ぐりぐりっするのっ」
「じゃ、いっぱい突いてあげる。さっき嘘ついたからお仕置きだよ」

もう無理、絶対無理、初めてには刺激が強すぎる。
渾身の力を込めてグッとシーツを握りしめ逃げようとしたその時、ベタリとジェラールが密着してきた。
まるで逃がさないと言うように握りしめたシーツごと手を掴まれ、囁かれた。

「ニコラス君、諦めて?」

なにを?と問い返す暇もなく更に激しく奥を穿たれ、無防備な項に甘い痺れと痛みが走った。

「これで全部、私のもの」

満足気な声と腹にじわじわと広がる熱い波にニコラスの体が作り変えられていく。
あぁ甘い毒のようだ、と頭の片隅で思いながらニコラスは目を閉じた。






※ニコラスは騎士団本部でジェラールのフェロモンに当てられて、気をやられたので記憶がありません。

※覚えてらっしゃらないかもしれませんが、ナルシュが出奔する時に晒された挿絵付き官能小説(複数)はジェラールのバイブルです。
ほんとはもっとねちっこくやってると思います。
やだ、むっつり。
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