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リュカの冒険 四度
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武力国家ヴァルテマ帝国──
数多の小国に、国に属さない部族達をまとめる帝国国家。
友好どころか国交すらない海の向こうの大国。
それが何故、ここでこの小さな女の子の口から出てくるのか。
ちら、と院長を見るとテッドの傍から離れる様子はない。
やはり公爵夫人として来るんじゃなかった、とリュカはホッとする。
「どうして楽園なの?」
「あのねぇ、内緒だよ?アンヌ姉はね、その楽園にお嫁さんにいったのよ。幸せになるの」
「みんなおよめさんになるんだよね。だからぼくたちいっしょうけんめいべんきょうするんだよ」
ねー、と無邪気に笑い合うサリーとマーシュ。
白い肌にくりりとした瞳、歳相応に見えない小柄な体。
第二次性の判定はまだだが、彼らはΩかもしれない。
少ないβ、この養護院ではΩとαの比率が高い。
Ωはお嫁さんとして、αはどこへ行く?
「リュカさ・・・リュカ、ちょっと」
「ジェリー」
リュカは幼い二人にまたね、と手を振ってジェリーの元へ。
ジェリーはなんともいえないような、不味くはないが旨くもないというような顔をしている。
「なんか気づいた?」
「リュカ様、よーく見てくださいよ」
ジェリーは庭にいる子らを一人一人指さしていく。
「似てませんか?」
「え?」
「顔です。ここの子らはそれぞれ孤児として保護されてます。兄弟ではありません。なのに・・・」
「あぁ、ほんとだね。似てる子達が何人かいる」
「やっぱりおかしいですよ、ここ」
「もっと深く知る必要があるな」
「もう旦那様に任せましょうよ」
ジェリーが顔を顰めて言うのに、リュカはそうだねぇと呟いた。
リュカはアイザックにどう伝えるべきか、と悩んでいた。
アイザックを迎えるために訪れた玄関ホールで。
「リュカは無事か!?」
「あ、おかえりなさいませ」
血相を変えたアイザックがリュカの周りを回り、ポンポンと体を確かめる。
何も無いことを知りホッと息をつくとやんわりとリュカを抱きしめた。
「なにかありましたか?」
「エルドリッジの奴が『おかしなことに首突っ込んでんじゃないの?』とか言うもんだから、心配で心配で・・・」
ジェリーは思った。
エルドリッジの名は知らないが、なかなかに鋭い奴だなと。
その夜──
リュカはベッドの中で書き留めた手帳を眺めていた。
特におかしなところはない、いや、できすぎているというべきか。
抜け目のない絵に描いたような整った施設。
いいことなんだろうけど、どこか気持ち悪い。
ジェリーの言ったことも、あのサリーとマーシュが言ったことも気にかかる。
「どうした?」
湯浴みを終えたアイザックは色っぽい。
番になってからますます色っぽいと感じることが多くなった。
サイドテーブルに手帳を投げ出して手を出すと、意図を汲んだように笑って向かいあわせで抱き合うように膝に乗せてくれる。
「養護院でなにかあったか?」
うーんと考えるリュカの額にアイザックの額がコツンと合わさる。
「言え」
そう言いながらアイザックが口付けてくる。
上唇を挟むようにしてから、下唇を吸い上げ舌でチロチロと舐められる。
ゆっくりと口内に侵入した舌は優しく上顎を撫で擦り、舌裏を擽るように絡められる。
これでは答えられない。
官能を高めるような優しいキスに翻弄されてしまう。
「リュカ?言って」
「・・・はぁ、どことなく気持ち悪いのです」
リュカは今日あった出来事を告げた。
侍従になったことは伏せていたが、しっかりプラハーが報告していた。
プラハーめ。
「あぁ、俺の違和感もそれだ。兄弟ではないという先入観が邪魔をしていたが、どうにも似てる子達がいるな、と。あと、他の養護院はもう少し荒れているんだ」
「荒れて?」
「そう、子らが集まると大なり小なり諍いがあったりするもんだが、あそこの子達は洗練されている」
「嫁入りと関係あるんでしょうか」
ポスンとアイザックの胸に体を預ける。
スパイシーな匂いが鼻を擽る。
長い指が髪をくるくると弄っている。
「宰相様とセオに言ってみるよ。だから、気になるだろうがリュカは大人しくしてるんだ」
むむむ、と顔をあげると真剣な眼差しとかち合った。
「できるね?」
「・・・はい」
いい子、とまた口付けられる。
今度は先程高めた官能を解き放つような荒々しくて激しいもの。
体をまさぐられ、そのまま二人で快楽へとずぶずぶと溺れていった。
次の日──
平民服に身を包んだリュカは肉屋の倅クルトの元を訪れていた。
「奥様、また油うってんすか」
「あはは、今日はクルトに頼みたいことがあってね」
「奥様の言うことでしたらなんなりと」
「あのね・・・」
距離を置いて護衛するプラハー達には、リュカがいつものソーセージのやつを買ってるようにしか見えないだろう。
リュカのお願いをクルトは快く引き受けてくれた。
ソーセージのやつも三つ買い求め、広場でプラハーとサッチと食べた。
プラハーに怪しむ様子はない。
ジェリーならきっと訝しんだはずだから、置いてきて良かったとリュカは思った。
──だって気になるんだもん
リュカの原動力はいつだってそれだ。
数多の小国に、国に属さない部族達をまとめる帝国国家。
友好どころか国交すらない海の向こうの大国。
それが何故、ここでこの小さな女の子の口から出てくるのか。
ちら、と院長を見るとテッドの傍から離れる様子はない。
やはり公爵夫人として来るんじゃなかった、とリュカはホッとする。
「どうして楽園なの?」
「あのねぇ、内緒だよ?アンヌ姉はね、その楽園にお嫁さんにいったのよ。幸せになるの」
「みんなおよめさんになるんだよね。だからぼくたちいっしょうけんめいべんきょうするんだよ」
ねー、と無邪気に笑い合うサリーとマーシュ。
白い肌にくりりとした瞳、歳相応に見えない小柄な体。
第二次性の判定はまだだが、彼らはΩかもしれない。
少ないβ、この養護院ではΩとαの比率が高い。
Ωはお嫁さんとして、αはどこへ行く?
「リュカさ・・・リュカ、ちょっと」
「ジェリー」
リュカは幼い二人にまたね、と手を振ってジェリーの元へ。
ジェリーはなんともいえないような、不味くはないが旨くもないというような顔をしている。
「なんか気づいた?」
「リュカ様、よーく見てくださいよ」
ジェリーは庭にいる子らを一人一人指さしていく。
「似てませんか?」
「え?」
「顔です。ここの子らはそれぞれ孤児として保護されてます。兄弟ではありません。なのに・・・」
「あぁ、ほんとだね。似てる子達が何人かいる」
「やっぱりおかしいですよ、ここ」
「もっと深く知る必要があるな」
「もう旦那様に任せましょうよ」
ジェリーが顔を顰めて言うのに、リュカはそうだねぇと呟いた。
リュカはアイザックにどう伝えるべきか、と悩んでいた。
アイザックを迎えるために訪れた玄関ホールで。
「リュカは無事か!?」
「あ、おかえりなさいませ」
血相を変えたアイザックがリュカの周りを回り、ポンポンと体を確かめる。
何も無いことを知りホッと息をつくとやんわりとリュカを抱きしめた。
「なにかありましたか?」
「エルドリッジの奴が『おかしなことに首突っ込んでんじゃないの?』とか言うもんだから、心配で心配で・・・」
ジェリーは思った。
エルドリッジの名は知らないが、なかなかに鋭い奴だなと。
その夜──
リュカはベッドの中で書き留めた手帳を眺めていた。
特におかしなところはない、いや、できすぎているというべきか。
抜け目のない絵に描いたような整った施設。
いいことなんだろうけど、どこか気持ち悪い。
ジェリーの言ったことも、あのサリーとマーシュが言ったことも気にかかる。
「どうした?」
湯浴みを終えたアイザックは色っぽい。
番になってからますます色っぽいと感じることが多くなった。
サイドテーブルに手帳を投げ出して手を出すと、意図を汲んだように笑って向かいあわせで抱き合うように膝に乗せてくれる。
「養護院でなにかあったか?」
うーんと考えるリュカの額にアイザックの額がコツンと合わさる。
「言え」
そう言いながらアイザックが口付けてくる。
上唇を挟むようにしてから、下唇を吸い上げ舌でチロチロと舐められる。
ゆっくりと口内に侵入した舌は優しく上顎を撫で擦り、舌裏を擽るように絡められる。
これでは答えられない。
官能を高めるような優しいキスに翻弄されてしまう。
「リュカ?言って」
「・・・はぁ、どことなく気持ち悪いのです」
リュカは今日あった出来事を告げた。
侍従になったことは伏せていたが、しっかりプラハーが報告していた。
プラハーめ。
「あぁ、俺の違和感もそれだ。兄弟ではないという先入観が邪魔をしていたが、どうにも似てる子達がいるな、と。あと、他の養護院はもう少し荒れているんだ」
「荒れて?」
「そう、子らが集まると大なり小なり諍いがあったりするもんだが、あそこの子達は洗練されている」
「嫁入りと関係あるんでしょうか」
ポスンとアイザックの胸に体を預ける。
スパイシーな匂いが鼻を擽る。
長い指が髪をくるくると弄っている。
「宰相様とセオに言ってみるよ。だから、気になるだろうがリュカは大人しくしてるんだ」
むむむ、と顔をあげると真剣な眼差しとかち合った。
「できるね?」
「・・・はい」
いい子、とまた口付けられる。
今度は先程高めた官能を解き放つような荒々しくて激しいもの。
体をまさぐられ、そのまま二人で快楽へとずぶずぶと溺れていった。
次の日──
平民服に身を包んだリュカは肉屋の倅クルトの元を訪れていた。
「奥様、また油うってんすか」
「あはは、今日はクルトに頼みたいことがあってね」
「奥様の言うことでしたらなんなりと」
「あのね・・・」
距離を置いて護衛するプラハー達には、リュカがいつものソーセージのやつを買ってるようにしか見えないだろう。
リュカのお願いをクルトは快く引き受けてくれた。
ソーセージのやつも三つ買い求め、広場でプラハーとサッチと食べた。
プラハーに怪しむ様子はない。
ジェリーならきっと訝しんだはずだから、置いてきて良かったとリュカは思った。
──だって気になるんだもん
リュカの原動力はいつだってそれだ。
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