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やり直し
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目が覚めるとすっかりお馴染みになっている天井だった。
飴色の木目まで見えそうな天井。
瞼が腫れているのか、視界がいつもより狭く感じる。
昨日僕はあれから・・・
「おはよう」
「うわぁっっ!」
驚いて飛び上がり、そろそろと横を伺うと福福しい顔が笑っている。
「もうお昼前よ?」
このやり取りも二回目ねぇ、と恵子はコロコロ笑った。
着替えて早くおりてらっしゃい、と恵子はひと足先に部屋を出ていった。
階下に降りると、慎太が卓袱台でお茶を飲んでいる。
「ひでぇ顔だなぁ」
「・・・すみません」
そんなこと言わないの、と恵子が冷やしたタオルを渡してくれる。
冷たいタオルが目にじんわり染み込んでとても気持ちがいい。
「一穂になんかひどいことされたのか?」
「だからそんなに泣いたの?忍ちゃん」
「え?」
驚きでポトリとタオルが落ちる。
いつになく真剣な眼差しにオロオロしてしまう。
「違いますっ。僕の方こそ迷惑かけたんです」
「本当か?」
「はい。昨日は本当に僕がダメな奴で・・・迷惑ばっかりかけちゃって」
「そうか」
よいせ、と慎太は立ち上がり背後の襖をカラリと開けた。
恵子も同じように立ち上がり部屋を出ていく。
「だってよ、一穂」
「だから何もしてないって何回も言っただろうが」
襖を開けた先には不貞腐れたような一穂が正座をしていた。
目が合うとひらひらと手を振ってくるので、こちらも思わず手を振ってしまう。
「あのな、寝てる忍をお前が連れて帰って来たのこれで二回目だぞ?疑うなって方がおかしいだろう」
「だーかーらー、疲れるとあの子寝落ちするんだって」
「疲れるようなこと」
「してねぇっ!」
ね?とこちらに目配せする一穂に何度も首肯していると、ポンと肩を叩かれ見上げる。
「いってらっしゃい。忍ちゃん」
恵子に立たされ、ほらほらと背中を押される。
ダウンジャケットを着せられ、マフラーをぐるぐる巻きにされる。
ポイと外に出され、ガラガラピシャンと締め出されてしまう。
「あの・・・」
「歩く?ドライブする?それかバスに乗る?・・・それとも、駅に行く?」
「・・・ドライブします」
了解、と一穂は嬉しそうに笑った。
車は海から離れ、いつか通った道をするすると進んで行く。
「昨日はすみませんでした」
「なにが?」
「・・・みっともないとこ、たくさん見せてしまって」
「気にしてないよ」
「・・・・・・やり直ししてもいいですか?」
「もちろん」
大きく深呼吸する。
心臓がドキドキする。
僕は今やっと僕を取り戻す。
「楢崎稔。二十四歳。誕生日は10月4日、B型で身長は160cm体重は計ってないからわからない。足のサイズは25cm。好きな食べ物は和食で嫌いなのはパクチー。W大卒・・・です」
言い終わらないうちに、ガタガタと振動と共に砂利の駐車場に入って行く。
「お昼はここで食べようか」
「得体の知れない奴から知ってる奴になりましたか?」
「うん、知ってることが増えて嬉しい」
稔って呼んでいい?と笑う彼に、僕は涙を堪えるので必死になる。
泣かないようにグッと眉間にチカラを入れる。
笑いながらグリグリと親指で眉間の皺を伸ばされてしまう。
泣いてしまうからやめてほしい。
きっとこの人は過去の僕を知ってもこうやって受け入れてくれるんだろう。
僕はそれが怖い。
怖いのになぜか嬉しい。
やっぱり涙が零れてしまって、彼にそっと拭われる。
やっぱり僕の涙腺は昨日から馬鹿になってしまったらしい。
嬉しいのか怖いのか、わけのわからない涙が次から次へと出てくる。
もうずっとこの人には惑わされている気がする。
それが嫌じゃないのが困る。
飴色の木目まで見えそうな天井。
瞼が腫れているのか、視界がいつもより狭く感じる。
昨日僕はあれから・・・
「おはよう」
「うわぁっっ!」
驚いて飛び上がり、そろそろと横を伺うと福福しい顔が笑っている。
「もうお昼前よ?」
このやり取りも二回目ねぇ、と恵子はコロコロ笑った。
着替えて早くおりてらっしゃい、と恵子はひと足先に部屋を出ていった。
階下に降りると、慎太が卓袱台でお茶を飲んでいる。
「ひでぇ顔だなぁ」
「・・・すみません」
そんなこと言わないの、と恵子が冷やしたタオルを渡してくれる。
冷たいタオルが目にじんわり染み込んでとても気持ちがいい。
「一穂になんかひどいことされたのか?」
「だからそんなに泣いたの?忍ちゃん」
「え?」
驚きでポトリとタオルが落ちる。
いつになく真剣な眼差しにオロオロしてしまう。
「違いますっ。僕の方こそ迷惑かけたんです」
「本当か?」
「はい。昨日は本当に僕がダメな奴で・・・迷惑ばっかりかけちゃって」
「そうか」
よいせ、と慎太は立ち上がり背後の襖をカラリと開けた。
恵子も同じように立ち上がり部屋を出ていく。
「だってよ、一穂」
「だから何もしてないって何回も言っただろうが」
襖を開けた先には不貞腐れたような一穂が正座をしていた。
目が合うとひらひらと手を振ってくるので、こちらも思わず手を振ってしまう。
「あのな、寝てる忍をお前が連れて帰って来たのこれで二回目だぞ?疑うなって方がおかしいだろう」
「だーかーらー、疲れるとあの子寝落ちするんだって」
「疲れるようなこと」
「してねぇっ!」
ね?とこちらに目配せする一穂に何度も首肯していると、ポンと肩を叩かれ見上げる。
「いってらっしゃい。忍ちゃん」
恵子に立たされ、ほらほらと背中を押される。
ダウンジャケットを着せられ、マフラーをぐるぐる巻きにされる。
ポイと外に出され、ガラガラピシャンと締め出されてしまう。
「あの・・・」
「歩く?ドライブする?それかバスに乗る?・・・それとも、駅に行く?」
「・・・ドライブします」
了解、と一穂は嬉しそうに笑った。
車は海から離れ、いつか通った道をするすると進んで行く。
「昨日はすみませんでした」
「なにが?」
「・・・みっともないとこ、たくさん見せてしまって」
「気にしてないよ」
「・・・・・・やり直ししてもいいですか?」
「もちろん」
大きく深呼吸する。
心臓がドキドキする。
僕は今やっと僕を取り戻す。
「楢崎稔。二十四歳。誕生日は10月4日、B型で身長は160cm体重は計ってないからわからない。足のサイズは25cm。好きな食べ物は和食で嫌いなのはパクチー。W大卒・・・です」
言い終わらないうちに、ガタガタと振動と共に砂利の駐車場に入って行く。
「お昼はここで食べようか」
「得体の知れない奴から知ってる奴になりましたか?」
「うん、知ってることが増えて嬉しい」
稔って呼んでいい?と笑う彼に、僕は涙を堪えるので必死になる。
泣かないようにグッと眉間にチカラを入れる。
笑いながらグリグリと親指で眉間の皺を伸ばされてしまう。
泣いてしまうからやめてほしい。
きっとこの人は過去の僕を知ってもこうやって受け入れてくれるんだろう。
僕はそれが怖い。
怖いのになぜか嬉しい。
やっぱり涙が零れてしまって、彼にそっと拭われる。
やっぱり僕の涙腺は昨日から馬鹿になってしまったらしい。
嬉しいのか怖いのか、わけのわからない涙が次から次へと出てくる。
もうずっとこの人には惑わされている気がする。
それが嫌じゃないのが困る。
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