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不安な気持ち

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丸見えだぞ!と侑が言った風呂は温水を出すと湯気があがり、中が見えづらくなった。
ジュースを飲んでタルトを食べて、まずは風呂だなと侑は至極あっさりと言いのけ一人でスタスタと歩いていってしまった。
和明とて初っ端から一緒の風呂に入れるとは思ってなかったので別にいい、後で一緒に入ろう。
それはいいが侑から恥じらいのようなものが感じられない。
まさかと思うがここまで来て普通に寝るだけだと思っているのだろうか。
そういえば勃たないと言っていたな、と和明は思考の沼にずぶずぶと沈みこんだ。


その頃、侑は広く丸い浴槽に身を沈めてブクブクと考えていた。
自分は上手くできただろうか、今日はこの間のぺたぺた以上のことをするのだ。
なにをどうするか位はよくわかっている。
今日出会ったときの和明はカチコチだった、眉間に薄らと皺を寄せて怖い顔をしていた。
なにか思うところがあるとすぐにあの眉間には皺が刻まれるのだ、侑はそれをよく知っている。

「あっくん、リラックスだよ。変に突っ走ったりせずに自然体でね?あと、同じだと思っちゃいけないよ?」
「あっくんの方が歳上だからってリードしてやろうとか絶対考えたら駄目だぞ?想いあっていれば素直にそういう雰囲気になるから。あと、同じじゃないかんな?」

前者は大和で後者は周平だ、一体なんだと思われてるんだ。
リラックスだの自然体だのとそんなもんは和明が一番できてなかったじゃないか。
ここはやっぱり歳上の自分がリラックスさせてやらねば、と侑はここまでやってきた。
幸い和明の笑顔も見れるようになった、勝負パンツも持ってきた。
ナニをなにしてどうするか、勃たなくても後ろさえ使えれば問題はない。
そもそもをする場所なんだから、和明が性的嫌悪を示すこともない・・・多分。
温かい湯に浸かっているのに思わず体がぶるりと震えた。
蔑んだような視線、気持ち悪いと落ちた冷ややかな言葉、部屋中に噎せ返る性の匂い。
ぶんぶんと頭を振ってそれらをやり過ごす、和明は違う。
ぺたぺたと触るだけだったあの手は優しかった、他人の体温があんなにも心地良いものだとは思わなかった。
だと言ってくれた、だったらその手を掴んで離さないようにしよう。
もし、もしも今日が駄目でも自分にはまだ発情期ヒートがある。
それさえあれば和明アルファを誘うことができる、まだ道はある。
本音を言えば全てをさらけ出すのはとんでもなく恥ずかしい。
だけどその恥ずかしいのを和明になら見せてもいいかな、とも思うのだ。
大丈夫!とパンパンと両手で頬を叩いて、頑張るぞーと湯船から立ち上がって侑は拳を突き上げるのだった。


風呂から出ると和明は入る前と同じくソファに腰かけ天を仰いでいた。

「和明、寝た?」
「寝てない」

良かったとホッとしたのも束の間、目をかっぴらいた和明がズンズンと近づいてくる、ちょっと怖い。
身構えていると首から下げたタオルでわしゃわしゃと髪をふかれて、バスローブの腰紐をキュッと結ばれた。

「ちゃんと着て」
「これから脱ぐのに?」
「その前に、話し合おう」

この期に及んで一体なにを話し合うのか、侑は首を捻った。
背中を押されてソファに座らされまた桃のジュースを飲まされた。
ほこほこと温まった体に冷たいジュースが染み渡る、ぷはぁと飲み干して侑はぐいとその口を拭った。

「話って?」
「今からなにするか本当にわかってる?」
「セックス」

侑は左手の指で輪を作り右手の人差し指でその輪を突き刺した。
それはやめろ、とすぐに手を包まれてしまったが。

「侑さんは勃たないんだよね?」
「ん?うん」
「その・・・そういうことするの怖かったりする?」

じっと至近距離で見つめられて手は宥めるように撫でられながら、和明の言うことを侑は真剣に考えた。
セックスが怖いわけではない、割り切ってやれば平気だと思う。
ただその後を考えると不安になるかもしれない。
大丈夫だという自信もある反面、もしも和明に顔を背けられたら自分はきっと立ち直れない。

「怖くないよ、歳上だし」
「今は歳関係ないから」
「・・・嫌われたくない」

キョトンと首を傾げる和明に合わせて侑も同じように首を傾げた。
おかしなこと言っただろうか?

「なんで嫌われるの?」
「えーと、いやらしいから?」
「それのなにがダメ?」
「なにが、ダメなんだろ?」

今度は逆方向に二人してまた首を傾げた。

「嫌いになんてならないよ?」
「うん、俺もそう思う」

なにそれ、とふはっと和明は笑って話しながら少しずつ近いていた距離はコツンと額がぶつかった。
手はいつの間にか指を絡めて手のひらを合わせた。

「だって、この手をもう覚えてる」
「うん」

鼻先がちょんと当たって、吐息もぶつかり合って、視線も絡んで、唇が合わさる。

「ドキドキするな」

切なそうに瞳を揺らした侑の赤くなった鼻先、僕もだよと和明は自身の鼻を擦り寄せた。



※遅くなりました。誠に申し訳ありません。
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