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心がまえ

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年明け何の変哲もない正月を終え、それぞれ学校や会社が始まり竹田家のリビングには松竹梅の三人だけでおやつを食べていた。
周平は相変わらずマナベでバイトをしており、今日のおやつはつる婆からもらった黒糖チョコ饅頭だ。
あのさぁ、と侑は饅頭をもぐもぐしながら言う。

「ペー助とやまちはなんで発情期ヒートでもないのにセックスできるん?」

周平は飲んだお茶を吹き出し、大和は今まさに口に入れようとした饅頭を落とした。

「あっくん?」
「な、なんて?」
「勃たなくてもセックスってできるもん?」

侑自身はセックスとは発情期にするもの、と思っていた。
しかし、周平や大和を見ていると違うのか?とも考える。
和明もムラムラすると言っていたしなぁ、と二個目の饅頭をもぐもぐとした。

「・・・どっちが?」
「え?」
「あっくんか和明君かで話が変わると思うけど」

ぶんぶんと頭を振る大和はもう饅頭を置いていた。

「俺だけど、和明はどうか知らん」
「その、なんであっくんはなの?」

三個目の饅頭を頬張りながら侑は話した。
家族のことは話したけれど、性についてはなかなかに話しづらい。
初めての発情期で妹から受けた嫌悪の視線は未だに侑の心に刺さったままだ。
それ以来、発情期以外で反応することはない。
発情期がちゃんとあるのだからオメガとしては合格だと思っていたし、どのオメガも通常時はそんなものだと思っていた。
受験が終わってちゃんとしたおつき合いが始まったら、そういうこともするんだろう。
和明がムラムラするというのならそれを発散させてやらねば!と侑は思う。
なぜなら侑は歳上なのだから、いいところを見せたい。

「もし、その時になればその・・・上手くいく、かも」
「うん、多分」
「そういうもんなの?」

もじもじと話す二人に侑はキョトンとして、四個目の饅頭を食べた。

「てか、なんで急にそんなこと聞くん?」
「だって、二人が言ったんじゃん。ゆり花の勉強は役に立たなかったって」
「役にたたないっていうか、なんか機嫌が悪くなる」
「そうそう、卯花さんも忘れろって言ってた」

ふうんと五つ目の饅頭に手を伸ばした侑は周平に止められた。
八個入りを四個食べた侑とまだ一つも食べていない周平と大和、じっと見られて侑は降参した。


そうは言ってもな、と侑は自室でノートを広げて腕を組んでいた。
項目①の『雰囲気作り』で躓いている。
何をもってしていい雰囲気なのか、侑が考えて考えて出した答えは下着だった。
普通のボクサーパンツしか持っていない、ここはいっちょセクシーなやつを買おう。
通販サイトで侑が買ったのはムキムキマッチョが身につけている黒のビキニパンツだった。
褐色のマッチョがいたくセクシーだった為、間違いないと侑は届くのが楽しみになった。
項目②の『マグロ駄目、絶対』はスルーした。
侑はマグロではない、人間だ。
おかしな項目があったもんだと侑は思う。
項目③の『言葉にしよう』いいところ、よくないところは素直に口にしよう、これはどうだ?と考える。
口より先に手が出てしまうこともあるが、今のところ和明に嫌なところはない。
いや、馬鹿だ馬鹿だというのはやめてもらいたい。
次に会ったらにそう言えばいいか、と思ったところでスマホにメッセージが入った。
共通試験というものの結果が良い結果だったらしい。
侑は義務教育で終わったので受験のシステムがよくわからない。
ゆり花入学も『オメガ 結婚』と検索して最初に画面に表示されただけだ。
住所を頼りに赴き、その場で願書を書いて提出した。
運良く合格できたので和明がどれほど大変で、どれだけ頑張っているのか理解するのは難しい。
なんと返事をするのが正解で、どんな返事を喜ぶのだろう。

──よくできました。

考えたあげく、子どもの頃母親に言われて嬉しかったことにした。
それには嬉しいも労いも喜びも全部詰まっている気がするから。
はい、と一言返ってきた言葉に間違ってなかったとホッとした。



※上手く分割できず、短めすみません
あっくんの初の心がまえを入れたくて・・・
次回、スーパー和明タイムです
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