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第29話 高校最後の文化祭
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更に月日が流れ、文化祭準備の季節になる。去年は風邪を引いてしまったから、今回が星恵ちゃんと恋人として初めて過ごす文化祭となる訳だが……高校最後の文化祭でもある。
そう考えると何だか寂しくて、もっと早く付き合っていれば良かったなと思う。
「では、文化祭の出し物を決めます。何が良いか意見のある方、手を挙げて下さい」と、文化祭実行委員の男子が進めてくれる。
教室内がガヤガヤと騒がしくなり──1人の女子が手を挙げる。
「はい田中さん、どうぞ」
「私は占いが良いと思います」
「占い……人気が出そうですが、占いを出来る人、このクラスに居ますか?」
実行委員の男の子がクラスメイトに質問しても──誰も答えない。もし居たとしても、嫌なのかもしれない。シーン……と教室内が静まり返っている中、また田中さんが口を開く。
「星恵さんが出来るんじゃない? 前に占いの本を読んでいるのを見た事あるよ」
「え?」
星恵ちゃんは急に名前を出されて目を見開き驚く。実行委員の男の子は星恵さんの方に視線を向けて「星恵さん、出来るんですか?」
「えぇ……まぁ……少しくらいなら……」
星恵ちゃんはそう答え、気まずそうに俯く。さっき何も言わなかったから、星恵ちゃんは皆の前で占うのは嫌なんだろう。俺は──。
「もし星恵さんが出来たとしても、他に出来る人、居ないんですよね? 星恵さんに全部押し付けて、終わりにするつもりですか?」
「そうですよね……」
「だったら井上君、何か意見あるんですか?」
自分の意見を否定されて、腹を立てたのか、田中さんは不機嫌そうに強い口調で質問してくる。
「え──」
いきなりそんな事を言われても、意見なんて出てこない。文化祭……文化祭といえば……。
「えっと……メイド喫茶?」
「はぁ!? 何、言っちゃってんの!?」
すぐさま田中さんから威圧的な声が漏れる。周りの女子からも痛い視線が送られている気がした。だが男子からは──。
「おいおい井上の奴、言っちまったよ」
「勇気あるよなぁ……でも、そうなったらラッキーって感じじゃねぇ!?」
「だよなぁ……短いスカートとか履いて欲しい」
「それ、ヤバい店じゃん」
「ぎゃっはははは」
──と、割と好感的な意見が飛び交っていた。はぁ……恥ずかしい。星恵ちゃんを守るためとはいえ、俺の頭の中が、ラブコメ脳であることがクラスメイトにバレてしまった。
「はいはい、静かにして下さい」と実行委員の男の子が言って──静かになった所で「じゃあ、とりあえず占いとメイド喫茶を候補として、他に何かありますか?」
俺としては他にも意見が出て欲しい……そう願って両手を合わせ祈るポーズをした──が、誰も意見を出すことは無かった。
「──はい。時間が無いので、占いとメイド喫茶の二つで多数決を採ります。もし占いになった場合、星恵さんの他に誰か用意するようになると思うので、担当になった方は宜しくお願いします」
実行委員の男の子はそう言って、黒板に占いとメイド喫茶と書き、多数決の準備をする。
うちのクラスは男子が15人、女子が16人と女子の方が一人多い。女子が全て占いに入れれば、確定してしまうことになる。どうか一人でもメイド喫茶に入れてくれます様に……俺はドキドキしながら多数決が始まるのを待った。
「──はい、じゃあまずは占いの方から。占いが良い人、手を挙げて下さい」
実行委員の男の子がそう言うと、次々とクラスメイトが手を挙げていく──くそ! 実行委員の二人とも占いか。あとは──怖くて視線の範囲内に居る人しか見る事が出来ない。
見える範囲では……ダメだ。半々ぐらいで、予想が出来ないか。
「10……11……」と、実行委員の男子は数えていき「──はい、数え終わりました。下ろしてください。結果は13人だったので、文化祭の出し物はメイド喫茶で決まりですね」
パチパチパチ……とクラスメイトが拍手を始める。俺も良かった……と、思いながら拍手を始めた。ふと星恵ちゃんに視線を向けると、星恵ちゃんも安心している様で、笑顔を浮かべて拍手をしていた。
そう考えると何だか寂しくて、もっと早く付き合っていれば良かったなと思う。
「では、文化祭の出し物を決めます。何が良いか意見のある方、手を挙げて下さい」と、文化祭実行委員の男子が進めてくれる。
教室内がガヤガヤと騒がしくなり──1人の女子が手を挙げる。
「はい田中さん、どうぞ」
「私は占いが良いと思います」
「占い……人気が出そうですが、占いを出来る人、このクラスに居ますか?」
実行委員の男の子がクラスメイトに質問しても──誰も答えない。もし居たとしても、嫌なのかもしれない。シーン……と教室内が静まり返っている中、また田中さんが口を開く。
「星恵さんが出来るんじゃない? 前に占いの本を読んでいるのを見た事あるよ」
「え?」
星恵ちゃんは急に名前を出されて目を見開き驚く。実行委員の男の子は星恵さんの方に視線を向けて「星恵さん、出来るんですか?」
「えぇ……まぁ……少しくらいなら……」
星恵ちゃんはそう答え、気まずそうに俯く。さっき何も言わなかったから、星恵ちゃんは皆の前で占うのは嫌なんだろう。俺は──。
「もし星恵さんが出来たとしても、他に出来る人、居ないんですよね? 星恵さんに全部押し付けて、終わりにするつもりですか?」
「そうですよね……」
「だったら井上君、何か意見あるんですか?」
自分の意見を否定されて、腹を立てたのか、田中さんは不機嫌そうに強い口調で質問してくる。
「え──」
いきなりそんな事を言われても、意見なんて出てこない。文化祭……文化祭といえば……。
「えっと……メイド喫茶?」
「はぁ!? 何、言っちゃってんの!?」
すぐさま田中さんから威圧的な声が漏れる。周りの女子からも痛い視線が送られている気がした。だが男子からは──。
「おいおい井上の奴、言っちまったよ」
「勇気あるよなぁ……でも、そうなったらラッキーって感じじゃねぇ!?」
「だよなぁ……短いスカートとか履いて欲しい」
「それ、ヤバい店じゃん」
「ぎゃっはははは」
──と、割と好感的な意見が飛び交っていた。はぁ……恥ずかしい。星恵ちゃんを守るためとはいえ、俺の頭の中が、ラブコメ脳であることがクラスメイトにバレてしまった。
「はいはい、静かにして下さい」と実行委員の男の子が言って──静かになった所で「じゃあ、とりあえず占いとメイド喫茶を候補として、他に何かありますか?」
俺としては他にも意見が出て欲しい……そう願って両手を合わせ祈るポーズをした──が、誰も意見を出すことは無かった。
「──はい。時間が無いので、占いとメイド喫茶の二つで多数決を採ります。もし占いになった場合、星恵さんの他に誰か用意するようになると思うので、担当になった方は宜しくお願いします」
実行委員の男の子はそう言って、黒板に占いとメイド喫茶と書き、多数決の準備をする。
うちのクラスは男子が15人、女子が16人と女子の方が一人多い。女子が全て占いに入れれば、確定してしまうことになる。どうか一人でもメイド喫茶に入れてくれます様に……俺はドキドキしながら多数決が始まるのを待った。
「──はい、じゃあまずは占いの方から。占いが良い人、手を挙げて下さい」
実行委員の男の子がそう言うと、次々とクラスメイトが手を挙げていく──くそ! 実行委員の二人とも占いか。あとは──怖くて視線の範囲内に居る人しか見る事が出来ない。
見える範囲では……ダメだ。半々ぐらいで、予想が出来ないか。
「10……11……」と、実行委員の男子は数えていき「──はい、数え終わりました。下ろしてください。結果は13人だったので、文化祭の出し物はメイド喫茶で決まりですね」
パチパチパチ……とクラスメイトが拍手を始める。俺も良かった……と、思いながら拍手を始めた。ふと星恵ちゃんに視線を向けると、星恵ちゃんも安心している様で、笑顔を浮かべて拍手をしていた。
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