24 / 24
24話
しおりを挟む
優介は私を待っていたようでベッドの上に座って、こちらを見ている。
「美穂、そっちに座って」
と、自分の目の前にあるベッドを指差す。
私は言われた通り、指差されたベッドの方へと行き、向かい合わせに座った。
「何で薄暗くしてるの?」
「この方が、雰囲気でると思って」
「雰囲気ね……」
「美穂、目を瞑って」
え? もう?
「何で?」
「いいから」
「――分かった」
恐る恐る目を閉じると、「これでやっと解放される」
と、優介がボソッと呟いた。
解放? 何のこと?
カパッと何かが開く音がして、優介が私の左腕を掴む。
――このとき、今から優介が何をしようとしているのか分かってしまう。
だから優介、湯船に浸かるかって気にしていたのか。
私の左の薬指にスッと指輪が通っていくのが分かる。
サイズはちょっと緩いが問題なさそうだ。
ギリギリでネタバレはしてしまったものの、凄く嬉しい。
今はもう、この言葉しか出てこない。
「目を開けて良いよ」
私はパッと目を開け、直ぐに左手を見る。
そこにはシンプルのデザインだが、光輝く婚約指輪がはめられていた。
「遅くなっちゃったけど、その……俺と結婚して欲しい」
優介は照れ臭そうな表情を浮かべ、言葉を詰まらせながらも、ハッキリとそう言ってくれた。
私は抑えきれない想いをぶつけるかのように、優介に飛び付く。
「優介、ありがとう! 凄く嬉しいよ!」
「返事は?」
「もう、分かってるでしょ! もちろんOKだよ」
「良かった……苦労した甲斐があったよ」
私は優介から離れ、自分のベッドに戻ると「苦労?」
「美穂は過去が見えちゃうだろ? サプライズするため、触れない様にするの大変だったんだよ」
「じゃあ、パレードの時のは……?」
「うん、バレたかと思ってヒヤッとした。本当はバレても良いから、そのまま手を繋いでしまおうかと葛藤してたんだぜ」
「優介……」
じゃあ優介があの時、私の能力を確認していたのは、その為?
だったらあの時、もうちょいと言ったのは――。
「もしかしてずっと前から、この事を計画していたの?」
「うん! 美穂がせっかちさんだから、食事に誘った時、何て答えようか、ちょう焦ったわ」
「あ、ごめん……」
優介が優しく微笑む。
「大丈夫だよ。本当はもっと早く結婚したかったんだ。でも準備をしっかりしてからと、ずっと我慢をしていた」
「準備?」
「うん。うちの両親さ、凄く若い時に結婚したんだ。そのせいもあってお金もなくて、ゆとりも持てなかったんだろうな。だから最終的にあぁなった。俺……美穂とはそんな道を辿りたくない。そう思って、必死に頑張ったんだ。それで――」
うつむく優介の頬を私は手を伸ばしソッと触れる。
本当に優介が苦労をしてきてくれた過去が視えてきて、自分勝手な私に嫌気がさした。
「そうだったの……気づいてあげられなくて、ごめんね」
「大丈夫だよ」
どうやら、子供だったのは私だったみたいだ。
優介はちゃんと私との将来を見据えてくれていた。
それがただただ嬉しくて、必死に嬉し涙を堪える。
「優介」
「なに?」
優介が顔を上げ、私を見つめる。
「ありがとう。これからは夫婦になる道を歩んで行くんだから、一人で抱え込まないで辛い事も悲しい事も、二人で分かち合っていこうね」
優介は優しく微笑み「そうだね」
と、答えた。
「優介」
「ん?」
私はソッと優介に寄り添い、口付けを交わす。
「大好き」
「俺もだよ、美穂」
人生というのは、そう甘くはない。
これから先、きっといくつもの困難にぶち当たり、お互い気持ちが離れてしまう事だって、きっとある――。
だからといって、恐れることはない。
そんな時は過去を思い出して、更に強い絆として繋いでいけば良いのだ。
お互いがお互いを思いやる為、これからもずっと過去に触れていきたい。
私は優介の胸に顔を埋めながらそう思った。
ただし、記念日に近い日は除いてね!
「美穂、そっちに座って」
と、自分の目の前にあるベッドを指差す。
私は言われた通り、指差されたベッドの方へと行き、向かい合わせに座った。
「何で薄暗くしてるの?」
「この方が、雰囲気でると思って」
「雰囲気ね……」
「美穂、目を瞑って」
え? もう?
「何で?」
「いいから」
「――分かった」
恐る恐る目を閉じると、「これでやっと解放される」
と、優介がボソッと呟いた。
解放? 何のこと?
カパッと何かが開く音がして、優介が私の左腕を掴む。
――このとき、今から優介が何をしようとしているのか分かってしまう。
だから優介、湯船に浸かるかって気にしていたのか。
私の左の薬指にスッと指輪が通っていくのが分かる。
サイズはちょっと緩いが問題なさそうだ。
ギリギリでネタバレはしてしまったものの、凄く嬉しい。
今はもう、この言葉しか出てこない。
「目を開けて良いよ」
私はパッと目を開け、直ぐに左手を見る。
そこにはシンプルのデザインだが、光輝く婚約指輪がはめられていた。
「遅くなっちゃったけど、その……俺と結婚して欲しい」
優介は照れ臭そうな表情を浮かべ、言葉を詰まらせながらも、ハッキリとそう言ってくれた。
私は抑えきれない想いをぶつけるかのように、優介に飛び付く。
「優介、ありがとう! 凄く嬉しいよ!」
「返事は?」
「もう、分かってるでしょ! もちろんOKだよ」
「良かった……苦労した甲斐があったよ」
私は優介から離れ、自分のベッドに戻ると「苦労?」
「美穂は過去が見えちゃうだろ? サプライズするため、触れない様にするの大変だったんだよ」
「じゃあ、パレードの時のは……?」
「うん、バレたかと思ってヒヤッとした。本当はバレても良いから、そのまま手を繋いでしまおうかと葛藤してたんだぜ」
「優介……」
じゃあ優介があの時、私の能力を確認していたのは、その為?
だったらあの時、もうちょいと言ったのは――。
「もしかしてずっと前から、この事を計画していたの?」
「うん! 美穂がせっかちさんだから、食事に誘った時、何て答えようか、ちょう焦ったわ」
「あ、ごめん……」
優介が優しく微笑む。
「大丈夫だよ。本当はもっと早く結婚したかったんだ。でも準備をしっかりしてからと、ずっと我慢をしていた」
「準備?」
「うん。うちの両親さ、凄く若い時に結婚したんだ。そのせいもあってお金もなくて、ゆとりも持てなかったんだろうな。だから最終的にあぁなった。俺……美穂とはそんな道を辿りたくない。そう思って、必死に頑張ったんだ。それで――」
うつむく優介の頬を私は手を伸ばしソッと触れる。
本当に優介が苦労をしてきてくれた過去が視えてきて、自分勝手な私に嫌気がさした。
「そうだったの……気づいてあげられなくて、ごめんね」
「大丈夫だよ」
どうやら、子供だったのは私だったみたいだ。
優介はちゃんと私との将来を見据えてくれていた。
それがただただ嬉しくて、必死に嬉し涙を堪える。
「優介」
「なに?」
優介が顔を上げ、私を見つめる。
「ありがとう。これからは夫婦になる道を歩んで行くんだから、一人で抱え込まないで辛い事も悲しい事も、二人で分かち合っていこうね」
優介は優しく微笑み「そうだね」
と、答えた。
「優介」
「ん?」
私はソッと優介に寄り添い、口付けを交わす。
「大好き」
「俺もだよ、美穂」
人生というのは、そう甘くはない。
これから先、きっといくつもの困難にぶち当たり、お互い気持ちが離れてしまう事だって、きっとある――。
だからといって、恐れることはない。
そんな時は過去を思い出して、更に強い絆として繋いでいけば良いのだ。
お互いがお互いを思いやる為、これからもずっと過去に触れていきたい。
私は優介の胸に顔を埋めながらそう思った。
ただし、記念日に近い日は除いてね!
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
旅 _ air girl _ 人
小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】
ライト文芸
透明少女。
それはその街の、地元の、一部の、女の子しか知らない女の子。夏休みの間にしか会えず、誰もあったことのないという少女。そんな蜃気楼のような噂。
街から街へと仕事を探しながら、バスに乗って旅をしている青宿悠人(あおやどひさと)。しかし仕事は見つからず、空腹が限界となりなけなしの金でラーメンを注文。そこでバスの少女と再開し、ある噂に逢会した。それが透明少女。
無職の青宿は、隣街の方が大きいと聞き、仕事を探しにあるき出すが…………街から出られない。
青宿は噂が流れる学校に通っているラーメン屋の看板少女「戀風祈鈴」と戀風の超過保護友人「神北水桜」クラスメイト「伊吹海星」「桜坂六合東」と共に謎解明のため行動を始める。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~
浅葱
ライト文芸
小学生の頃、不注意で逃がしてしまったオカメインコと山の中の高校で再会した少年。
男子高校生たちと生き物たちのわちゃわちゃ青春物語、ここに開幕!
オカメインコはおとなしく臆病だと言われているのに、再会したピー太は目つきも鋭く凶暴になっていた。
学校側に乞われて男子校の治安維持部隊をしているピー太。
ピー太、お前はいったいこの学校で何をやってるわけ?
頭がよすぎるのとサバイバル生活ですっかり強くなったオカメインコと、
なかなか背が伸びなくてちっちゃいとからかわれる高校生男子が織りなす物語です。
周りもなかなか個性的ですが、主人公以外にはBLっぽい内容もありますのでご注意ください。(主人公はBLになりません)
ハッピーエンドです。R15は保険です。
表紙の写真は写真ACさんからお借りしました。
天高く馬肥ゆる草野球
萌菜加あん
ライト文芸
商店街の豆腐屋の娘、東雲聡子は大手宝生グループに就職できたはいいもんの、
鳴かず飛ばずの冴えない事務職員をしている。
入社三年目にしてようやく企画をまかせてもらったのだが、徹夜で考え抜いた企画がボツになってしまい、
気分を変えようと屋上で素振りをしているところを、超絶美形のバツイチ社長に見られてしまい……?
僕とあの娘
みつ光男
ライト文芸
県外の大学に通いながらバンド活動をしている
金髪の新1年生、中村鴻一は
ある日キャンパスのすぐ隣にある看護学校に通う有香、
そして美波と知り合う。
この二人と出会ったことにより鴻一は舞と"出会って"しまう。
そして互いに魅かれ合う想いにすら気づかぬまま
ただ悪戯に同じ時を過ごしていた。
いつしか二人はお互いの気持ちに
寄り添うことが出来るのだろうか?
運命は時として残酷な筋書きを用意して
二人を試そうとする…
自身の過去を気にするあまり
彼女との関係にストイックさを求める反面
"断れない"優柔不断さを持ち合わせる、そんな男子と
想いの深さゆえ誰も責められず自分を追い込む女子
そんな二人は「ハッピーエンド」と言うゴールに
辿り着くことが出来るのでしょうか?
そして紆余曲折を経た二人が最終的に導きだした答えとは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる