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第一章 (中学生)
母の死 (3)
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椛が小さい頃、母に聞いたことがある。
「ねえ、お母さんどうして椛にはお父さんがいないの」
その問いに母は一瞬だけ言葉に詰まってしまっていたが直ぐに優しい表情を取り繕って答えてくれた。
「それはね、お父さんの夢を壊したくなかったからよ」
その問いにすかさず椛が聞き返した。
「お父さんの夢ってなんなの」
その問いにも母は優しい表情で答えてくれた。
「画家さんよ」
母の答えに椛は興奮しながら聞き返した。
「画家さんって絵を書く人」
「ええ、そうよ」
「じゃあ椛も絵が上手くなるかな、あ、でもお母さんもご本を書く人だから私も書けるかな」
椛は絵を描くことも大好きだが本を読む事も大好きで椛の1番の自慢が自分のお母さんが作家さんという事だった。
「ええ、何でもやってみたら出来るようになるわ」
「うん、じゃあもっと頑張ってお勉強する」
椛は嬉しそうにそう答えた。
「ええ、お母さんと一緒に頑張りましょう」
「うん、お部屋でお勉強してくる」
「頑張って」
椛は笑顔で部屋から出ていった。
「ごめんね、ずっとあの子のことを見守っていたいと思うのはワガママだよね、貴方はあの子の存在も知らないのに」
母が涙を流して居ることを椛は知ることはない。
_____________
椛が泣いたのが母が亡くなったとしった時だけだった。それ以降は魂が抜けたように母の隣に寄り添っているだけだった。ふとその時後ろから母の友達の瑠梨から声をかけられた。
「椛ちゃんちょっといい」
そう言われて椛は無言で立ち上がり後を付いて行った。
_____________
連れてこられたところはリビングだった。そこには母の最も親しい友人や知人が揃って待っていた。椛はその中で余り目立たない一番端っこの席へ座った。
それを見て母の親友の瑠梨が椛を呼んで隣に座るよううながした。
「椛ちゃんそんな端っこに座らないでこっちに来なさい」
それを聞いて椛は無言で席をたち瑠梨の隣に座った。瑠梨はそんな椛を見て微笑みながら頭を撫でてあげた。そんな二人を見て他の友人達も微笑んでいた。
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