好かれる男が俺を好きな理由

朝日奈由

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10.想像(南)

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「おう、来たな。じゃあ行くか」

「すまん、頼む」

新太が日曜の夜に帰ってから二日経った。

風呂から上がった新太は先輩を家に泊めて朝食を振る舞ったことに妬いているのか少し不機嫌で、機嫌取りにいつもより時間を使って豪勢に作ってやった朝食のおかげか次の日の朝からはなんてことなかった。

「そう言えばお前、何かあったのか?」

「なんで?」

隣を歩く峰房が俺を見ながらそう問いかけてくる。

「いや、この間の電話の時やっぱり何かおかしかったからよ」

いつも通り予定の時間に集合し、いつもの場所へ二人で向かう。
ただの友人としてだけではなく、峰房とはそれ以外の事情と関係を続けてもう三年以上。

「いや、何も無い事はないけど……まあ、あんまり詮索しないでくれ」

「あっそ、まあ何かあったから俺呼ばれたんだもんな」

何度も悪いと思いながらずるずる来てしまってるのは俺の不甲斐なさゆえ。
打開したいと思うのに歪んだ思春期の心のまま歳を重ね、はけ口が他に無いのも事実。
事情を分かった上でそれでもいいと同意してくれて、そんな関係なのに純粋な友人としても接してくれる峰房には態度以上に感謝している。

「悪い、何度も付き合わせて」

「いいよ、俺も嫌だったら最初から言ってるし。お前の為でもあるしな」

「ありがとう」

こうやって他人に対して自分の思っている事を素直に言葉に出来ていたらこんな風に歪むこともなかったかもしれないと思うたび余計にねじれる心情は自分じゃ手に付けようがない。

純粋に、何も囚われず、あの頃先輩の事が好きで好きでたまらなかった気持ちを、受け入れてもらえ無かったとしても伝える事が出来ていたら何かが今とは違っていたかもしれない。





「峰房、目……隠して……」

「分かってる……」

誰にもこの歪んだ関係がばれないように人が少ない通りにある少し古めのホテル。
薄暗い室内で、ベッドに横たわる峰房とそれにまたがる自分。
お互いが見えないように同じ布でそれぞれの目を隠す。
それが合図。
遮られた視界の中で峰房の体を辿り、既に少し固くなっている下半身に触れる。

カチャカチャ……

「んっ……っ……」

「声、出来るだけ我慢して」

「それも……分かっ、てる」

クチュクチュ……

静かな部屋に峰房のと俺の手が擦れる音だけが響く。
目を隠し、先輩の事だけを考える。
見えてもいないのにつぶった瞼の裏には先輩の姿が浮かび上がる。

「んっ……ん、せんふぁい……」

大きくなったそれを咥え、歯を当てないように頭を動かす。

「あっ……ん、はぁはぁ……んっ、あん、ひっ……んん……」

想像の中の先輩がよがる。
自分に都合がいいように変換し、悶える先輩を思って無我夢中になる。
四年ぶりに再会でき、あの頃と少し変わった先輩の外見を思い出し高ぶる。

「せん、ふぁい……好き、です……んっ、ん」

「むっ、りぃ……も、むりぃ、はげ、しい。でるぅ……んっ、ん、んあっっっっ」

「ゴホゴホ……べっ……はぁはぁ……」

口の中に、熱い液体が流れ込む。
きつい臭いと、苦さ。
吐き出し、それをそのまま自分の腫れ上がった下半身にめがける。

「せん、ぱい。も、挿れたい……」

「あっ、ちょ……ん、あっ、あぁぁぁぁっ……!」

相手の返事を待たず、見えなくても分かるその体を無理矢理ひっくり返させ、興奮しきったままの体で自分のを突っ込む。
きつく締まる中で、自分のがもぎ取られてしまいそうになる快感に身震いする。

「先輩……好きです……ほん、とに……好きです」

「こう……たっ、今日お前……おかっ、しい……」

いつもはしない様な無理矢理で自分本意なやり方に峰房がそう言う。
声さえ聞こえるけど頭には入ってこない。
先輩の姿だけで、触れて、繋がっているのが先輩だと思い込んでしまっているせいか冷静に居られない。

あんな風に先輩との接点を作り、強引に関係を維持しようとして絶対にこの気持ちはバレてしまいたくないと思う反面、四年間も忘れられず狂うほど先輩を独り占めにして閉じ込めて誰にも触れられず見られず保管して俺だけの人だって体に染み込ませたいと思う欲求が今は止められない。

「先輩……動きますね……」

「ちょ、ちょっと待てよっ……こう、た、ちょっっんんっ……!」

「はぁ、はぁ、せん……ぱい。好きですほんとに好きですっ、んっ……あっあっ、っつ……やばっい」

「ちょ、っと、あんっ、はぁっつ、ああっ……んっんっ、む、りい……はげし……っ!」

先輩の中を壊してやりたいと思う衝動が抑えられない。
部屋中に響く破裂音とお互いの喘ぐ声。

「ひろっ、せんぱっ、い……まだ、まだ欲しいです……んっはぁ、あっきつ、い……んんっ、あっ」

「だめっ、あっ、ん、あんん……こう、たむりい、んんんっ、あっあっ、いっっ……や!」

あの夜、脱がした先輩の体が目の裏から離れない。
細い腰と、程よくついた筋肉。
白くて、少し不健康気味な体型。

自分の腰を激しく動かしながら両手で掴んでいた腰から右手を離し、むき出しの先輩のそれを握る。
飛び散った液体がベッドの上を湿らせる。

「せ、んぱ、いのも……触って、あげます……ね」

「やっ、む、むりぃ、ほんとに……もう、むりっっ!」

強く激しいピストン、止まらない自分の腰がまるで自分のものじゃないように思えた。
右手で想像の中の先輩のそれをしごき上げる。
前のめりになる体で汗ばみよがる先輩の背中にキスをする。

「はっ、はっ……せん、ぱい、んんっ、あっはぁはっ……好き……だ、やべぇ……もう、イきそ……んっ」

「やっ、やだぁっ……こわ、れる、んんっ、あっあっ、んぁ……んん……おか、しくなるぅ……っぁあ」

ビクビクと跳ね、より一層きつく中を締めて逃さないと吸い付いてくる感覚に囚われる。

「おれ、も、イきっ、ます……あっんんぁ、はっはっ……先輩っ、すき、です……ん、んぁ、んんっっっっ!」

「やっ、やらぁ……だめっ、両方むりぃ、出ちゃ、うっんぁっぁぁぁぁぁあ」

思えば、いつもは付けていたはずのゴムを今日はしていない。
想像の中の先輩にぶちまけた自分の精液が脈打つ心臓のようにドクドクと流れ込むのが分かる。
それに比例するようにお互いの体が痙攣しているかのように跳ね上がり続ける。

「はぁっ、はぁ……」

少しずつ冷静になる。
繋がったままの状態で、冷静になっても自分の頭の中の先輩との感覚を失いたくなくて抜けない。
それだけの事でもまだ治まらない自分のそれ。

一度、見えないように巻き付けていた布を外す、
繋がったままの状態で中に流し込んだそれが少しの隙間から溢れ出てきている。

一気に冷める頭。

「おっ、おい、峰房。大丈夫か?悪い、ほんと」

「………………」

「えっ、生きてる?大丈夫?」

「……生きてるわ」

「あ、よかった」

「よかったじゃねーよ……俺こんなの初めてだわ。こん無理矢理だし、いくら目隠しして、お前の好きな先輩だと思って良いって約束だとしても、浩太、お前本気で俺じゃなくて先輩だと思って抱いてただろ……」

「っ……ごめん」

「別に……いいけど今回はほんとに死ぬかと思った。つか、いつまで入れてんだよ。いい加減抜けっ!」

「あっ……ごめん」

「んっ……たくっ、何かあったんだろうなとは思ってたけど今回みたいにここまで溜めて人殺しそうになるぐらいならもっと早めに呼べよ」

「分かった、気おつける。てか、俺まだ治まんねぇんだけど続きしたい……」

「っ……好きにしろよ……」

濡れた音と、破裂音、お互いの熱い息が苦しさを強めて喘ぐ声が抑えられない。
峰房の体を抱きながら先輩のことが好きでたまらないという気持ちで心を締め付けられる。

汚い自分、強く生きれない自分。
この先もきっとずっとこのままなのかもしれない。
罪悪感と幸福感。
逆の気持ちで、感情にケジメが付けれず次もまた同じような瞬間があるのだろうと悟る。














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