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輸送任務
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いやぁ~びっくりしましたよ、たかだか新作のチョコレートで槍を持ちだすとは思っても無かった。
しかも俺の部屋のドアを壊されたし、これには俺もチョコレートをねだりに来たエクレール、そしてチョコレートを出してくれたラグナも動揺どころか少し恐怖を覚えた。
オヤスが独自に研究し、作ったチョコレートの試作品、まあ、ただのドライフルーツの入ったチョコレートなんだけど。
試作品なので包装されてない状態、お得用商品の様に箱に詰められただけの物、中には割れているのもある。
それを同じ部隊だったエクレールにちょっとずつあげていた。すると夜な夜な俺の部屋に来てはねだるようになった。
最初にあげた時に
「隊長、この新作の事は誰にも言わないで欲しい」
なんて言ってきた
「は? なんで?」
「見たらわかるだろう数が少ない、これならすぐになくなってしまう、ライカなんかに知られたらあっという間だ」
「そうだね、でもすぐに販売できるって言ってたし、別にいいんじゃない?」
オヤスは自分が作った新作が売れると確信し、直ぐにでも商品化すると意気込んでいた。
商品化するには工場のラインを調整しなければならないのだが、オヤスの息子で工場長のモランが、人と時間が無いと言って反対、俺がこっちに来るまで決着が付いていなかった。
商品化するとは言っていたが、正直いつになるか疑問だ。
「商品化するって言ってもすぐにではないだろ? だったらいつ商品として世に出るか分からないじゃないか」
「いや‥‥今すぐに販売できるって言ったじゃん」
「すぐに、とはいつだ?」
「いつとは言ってなかったけど‥‥」
「だったらいつかは分からないじゃないか!」
この辺りから語尾が荒くなってくる
「隊長だって無くなってしまったら困るだろう!? これだけしか無いのだぞ!」
「いや、俺は別に食べなくてもいいし」
砂糖漬けのドライフルーツとかきつすぎ
「だったら私一人で食べてもいいんだな!?」
「えっ?」
「頼む! この事は誰にも言わないでくれ! 本当に商品化するまで私だけに食べさせて欲しい!」
「命だけは助けて欲しい」ぐらいのお願いぶりに、ちょっと引きながら了承してしまった。ここまで貪欲な人も珍しい、「だったらこれあげるよ」と、箱ごと渡そうとしたら
「私の『収納』だと溶けてしまうから、隊長の召喚獣の方で持っていて欲しい」
◆
その日以来、毎日のように要求、俺と離れる期間がある場合は、いくらかあらかじめ渡すようになっていた。
それで、昨日の夜は‥‥‥‥
「お、落ち着けソルセリー! べ、別に隠していたわけじゃ無いんだ!」
とは言いながらも、自分の体を使いチョコレートの箱を全力で隠そうとするエクレール
『言っている事とやっている事が違う』の典型的なやつだ。
「皆にも渡そうとしたんだが、ちょっとだけ! ちょっとだけ渡したくない気持ちがあっただけなんだ!」
バリバリバリ!
渡したいのか、それとも渡したくないのか? 渡したくないのだろう、手に持っていた食べかけのチョコレートを一瞬で噛み砕いた。
凄いなこの人、最初に感じた女騎士のイメージが、今は全くと言っていいほど感じない、駄目キャラになっている。
「ほ、ほら、その槍を納めてくれ! ソルセリ―にもあげるから」
箱の中から割れて砕けた、小さいチョコレートを震えながら差し出す
その時俺はどうしていたか?
おっかなくて何も言えなかった、昨日に続き恐ろしい場面に遭遇し、何も言わず日報を付けるふりをしていた。
・・・・
・・・・
「どうだ? ソルセリ―美味しいだろう?」
まるで上司を接待するように、エクレールは立ち回った。
「ラグナ、すまないけどお茶のお代わりを貰えるか?」
俺の召喚獣を勝手に使い、お茶を要求する。
「ささ、もう一つどうだ?」
チョコレートの入った箱は自分の手元に置いておき、その中から一番小さい欠片をソルセリーに渡す。
俺の中ではエクレールの評価はダダ下がりだ。
一方、最初物凄い形相で部屋に入ってきたソルセリーは槍を折り畳み、腰につけ。先程とは違い、まるで借りてきた猫の様に大人しく座り、少しづつ渡されたチョコレートを両手で持ち少しずつ食べていた。
エクレールの問いかけにも、小さな声で「うん」としか返さない。先ほどの怒りは食べた事で落ち着いたのか?
ソルセリ―が落ち着いた様子に安心したのか、それとも完全に話をずらす為なのか? エクレールは別の話を振った
「そういえばソルセリー、隊長に何かお願いがあるとか言って無かったか?」
◆◇
なんて事が昨日の夜あり、俺は今度の休暇の時、ソルセリーと一緒に出掛けることになった。どこに行くかはまだ言われていない。
「それでまず、最初にこの拠点に物資を運ぶんですが━━」
それで今はタクティアと、食料物資の輸送に当たっての打ち合わせをしている。物資の方は召喚獣のラグナの『収納』に全て入れる、ラグナの『収納』は『家』に関係する物だったら大量に入れられるのでせっせと運び入れている、他の隊員や部隊の人員もそれを手伝っている。
「この辺りは攻められている状態なので、敵竜翼機に発見されないよう気を付けて下さい、予定道りの時間にたどり着く様に出来れば、味方竜翼機の護衛を得られますから」
「分かった」
数か所の物資の運搬、中には危険な地域もある。召喚獣のコスモで飛んで行くので地上からの攻撃は心配いらない。
ただし、地上から離れすぎると、場所によっては敵竜翼機に見つかる可能性もある、出来れば地上からあまり離れず飛んで行きたいのだが‥‥
女神サーナに封じられた『探知』、あれが無くなった事が悔やまれる、何で取っていったんですかね? 返してもらえませんか? 駄目ですか?
「━━それと」
一通り説明を受けた後
「ハヤト隊の休暇が決まりました、休日ではなく休暇です」
「マジで!?」
やっと‥‥やっと休暇か、長かったぁ
「他の部隊との調整などもありますので、まだ先になりますが、ちなみに休暇の日は既に決まってます、年をまたいで来年になりますが」
「来年か‥‥とか言っても、『急遽変更』とかなるんだろ?」
「それはありません、決定ですから」
「ほうほう‥‥」
来年になるとはいえ、それは嬉しい
「それでその休暇に関係があるんですが━━」
ん? なにやら不安な方向に行きそうだ
「その休暇中に、以前話した武闘大会があるんです」
ほらね
以前、武闘大会に出場しろと言われた事がある。軍が主催している大会で、剣技の部と、召喚獣の部がある、ハルツールから広く参加者は募集され、一般人でも出場可となっている、
そして軍からも各部門に一人、出場することが決まっていた。
「それに出ろって? 嫌だよめんどくさい、せっかくの休暇なのに」
それでなくても2件のソルセリー案件があるのに、『何か作れ』と『私について来い』がある、正直、何もしないで過ごしたいが。
「なら、出ないということでいいですか?」
「お、おう‥」
なんか、やけにあっさり
「‥‥いいの?」
「はい、代わりの人は一応いますから、ハヤト隊長の後輩で、ポンドラスと言う名前の人ですよ」
「ああ、アイツが出るのか」
俺の代わりに欧米ズのポンドラスが参加になったようだ。
悪いね、変わってもらって、こっちも忙しいんだよ。
「剣技の部にはライカが出る事になってます、休暇と重なって丁度いいですから」
「そ、そう‥‥」
身内が出るのか‥‥となると応援に行かなきゃいけないの? めんどいな~、家で見てますってのは駄目?
「なら、応援に行かないとね」
「そうですね、でも応援に行くなら出場してみては?」
「嫌だ」
「そうですか、‥‥それとですね、今回の大会の主賓なんですが、来年から新しくハルツール代表の一人となる方が、主賓として招待される事になるんです」
「ふーん」
それはどうでもいいよ
「ハヤト隊長とも縁の深い、リテア・ネジェン次期代表です」
!
「っ! リ、リテア様が!!!」
「‥‥‥はい」
リテア・ネジェン・次期タスブランカ代表
俺が以前護衛を務めた見た目10歳程の幼女(実年齢は当時50歳越え)で、俺は軍人という事を隠し、『フェルド・ガーン』という偽名で護衛をした。
リテア様を狙う輩から何とか守る事は出来たが、完ぺきとは言い難い結果だった。
同じ館で働く人たちの多くが死亡し、その事でリテア様も心を痛まれていた。
俺が着用していた装備などは礼式用で、まともに守る事が出来ない物だったし、武器も細身の役に立たない物だった。
あの時まともな装備があれば‥‥とは思うが、今思うのも遅いし、あの時は身を明かす事も出来なかったので、どうしようもないと言えば仕方がない。
「‥そうですか、リテア様が‥‥ならばこのフェルド、リテア様の為に大会に出場しなければなりませんね」
「‥‥‥‥そう言うと思って、軍の枠は一応は2つ取ってありますので‥‥」
タクティアが何やら変な目で見ている気がするのですが‥‥
「流石はタクティアですね、用意周到と言いますか、先をよく見ている」
我が部隊の一番の切れ者、その頭脳にはいつも助けられましたが、今回もそのようです
「えっと‥‥‥ハヤト隊長、今からそれですか?」
「なんのことでしょうか?」
◆◇
リテア様の事は尊敬しています、リテア様以前にネジェン家の事を尊敬しているでしょう、タスブランカを治めるため、代々一族はタスブランカの為に尽くして来た。
困難な時期もあったでしょう、政治的に不安定な時期もあったと思います。それでもその土地のために尽くすネジェン家には賞賛以外の言葉は見つかりません。
そしてリテア様、あの方は10歳の時『生命の契約』をされました。
当時まだ子供で、遊びたい次期だったでしょう、それでも自身の自由を犠牲にしてまで、タスブランカのために尽くそうとするリテア様の姿に、私フェルドも思わず涙が流れそうでした。
そのような理由でリテア様の事を、私は尊敬しています。
それと、このフェルドというもう一人の自分、お姫様に使える騎士というポジションが気に入っているのも事実です、最初は興味がありませんでしたが、やって見ると癖になるものです。
◆◇
「それでは行ってきます、タクティア、後の事は頼みましたよ」
召喚獣ラグナの『収納』に食料の搬入が終了し、輸送任務に赴きます
「ええ、気を付けて下さい」
「うん、私は数日、ここを空けることになりますが、皆もタクティアの言う事をよく聞き任務に励んで下さい、ライカとエクレールもこの部隊にいる時間が長いのですから、よく皆をまとめるように」
「あ、はい‥‥」
「ああ‥‥」
「ソルセリーは癇癪など起こしては駄目ですよ、タクティアにあまり強く当たらないように、いいですね」
「え、ええ‥‥」
「ノースにデディ、タバル、オーバ、マースも、今日、貴方たちはこの後、飛行場の草むしりですが、草むしりも大事な仕事です、決して手を抜かないように」
「「「はぁ‥‥」」」
どうやら皆も私がいない間しっかりやってくれるようです、これで安心して輸送任務に赴く事が出来ます。
「はいよぉ~!」
鐙でコスモの腹を叩くと、コスモは上昇し始めました。
「それでは行ってきます」
軽く手を上げ、私は輸送先に向かいました。
数日隊長としてこの場を空けますが、彼らならしっかりやってくれるでしょう
「さて、物資を待っている人たちの場所に向かいましょうか」
「ヒヒ~ン!」
ハヤトが飛び立ち、残された隊員達は
いち早く困惑から復帰したエクレールが
「‥‥タクティア、あれはなんだ?」
「心の病のようなものでしょうか? ‥‥‥‥前の時よりも悪化してますが」
しかも俺の部屋のドアを壊されたし、これには俺もチョコレートをねだりに来たエクレール、そしてチョコレートを出してくれたラグナも動揺どころか少し恐怖を覚えた。
オヤスが独自に研究し、作ったチョコレートの試作品、まあ、ただのドライフルーツの入ったチョコレートなんだけど。
試作品なので包装されてない状態、お得用商品の様に箱に詰められただけの物、中には割れているのもある。
それを同じ部隊だったエクレールにちょっとずつあげていた。すると夜な夜な俺の部屋に来てはねだるようになった。
最初にあげた時に
「隊長、この新作の事は誰にも言わないで欲しい」
なんて言ってきた
「は? なんで?」
「見たらわかるだろう数が少ない、これならすぐになくなってしまう、ライカなんかに知られたらあっという間だ」
「そうだね、でもすぐに販売できるって言ってたし、別にいいんじゃない?」
オヤスは自分が作った新作が売れると確信し、直ぐにでも商品化すると意気込んでいた。
商品化するには工場のラインを調整しなければならないのだが、オヤスの息子で工場長のモランが、人と時間が無いと言って反対、俺がこっちに来るまで決着が付いていなかった。
商品化するとは言っていたが、正直いつになるか疑問だ。
「商品化するって言ってもすぐにではないだろ? だったらいつ商品として世に出るか分からないじゃないか」
「いや‥‥今すぐに販売できるって言ったじゃん」
「すぐに、とはいつだ?」
「いつとは言ってなかったけど‥‥」
「だったらいつかは分からないじゃないか!」
この辺りから語尾が荒くなってくる
「隊長だって無くなってしまったら困るだろう!? これだけしか無いのだぞ!」
「いや、俺は別に食べなくてもいいし」
砂糖漬けのドライフルーツとかきつすぎ
「だったら私一人で食べてもいいんだな!?」
「えっ?」
「頼む! この事は誰にも言わないでくれ! 本当に商品化するまで私だけに食べさせて欲しい!」
「命だけは助けて欲しい」ぐらいのお願いぶりに、ちょっと引きながら了承してしまった。ここまで貪欲な人も珍しい、「だったらこれあげるよ」と、箱ごと渡そうとしたら
「私の『収納』だと溶けてしまうから、隊長の召喚獣の方で持っていて欲しい」
◆
その日以来、毎日のように要求、俺と離れる期間がある場合は、いくらかあらかじめ渡すようになっていた。
それで、昨日の夜は‥‥‥‥
「お、落ち着けソルセリー! べ、別に隠していたわけじゃ無いんだ!」
とは言いながらも、自分の体を使いチョコレートの箱を全力で隠そうとするエクレール
『言っている事とやっている事が違う』の典型的なやつだ。
「皆にも渡そうとしたんだが、ちょっとだけ! ちょっとだけ渡したくない気持ちがあっただけなんだ!」
バリバリバリ!
渡したいのか、それとも渡したくないのか? 渡したくないのだろう、手に持っていた食べかけのチョコレートを一瞬で噛み砕いた。
凄いなこの人、最初に感じた女騎士のイメージが、今は全くと言っていいほど感じない、駄目キャラになっている。
「ほ、ほら、その槍を納めてくれ! ソルセリ―にもあげるから」
箱の中から割れて砕けた、小さいチョコレートを震えながら差し出す
その時俺はどうしていたか?
おっかなくて何も言えなかった、昨日に続き恐ろしい場面に遭遇し、何も言わず日報を付けるふりをしていた。
・・・・
・・・・
「どうだ? ソルセリ―美味しいだろう?」
まるで上司を接待するように、エクレールは立ち回った。
「ラグナ、すまないけどお茶のお代わりを貰えるか?」
俺の召喚獣を勝手に使い、お茶を要求する。
「ささ、もう一つどうだ?」
チョコレートの入った箱は自分の手元に置いておき、その中から一番小さい欠片をソルセリーに渡す。
俺の中ではエクレールの評価はダダ下がりだ。
一方、最初物凄い形相で部屋に入ってきたソルセリーは槍を折り畳み、腰につけ。先程とは違い、まるで借りてきた猫の様に大人しく座り、少しづつ渡されたチョコレートを両手で持ち少しずつ食べていた。
エクレールの問いかけにも、小さな声で「うん」としか返さない。先ほどの怒りは食べた事で落ち着いたのか?
ソルセリ―が落ち着いた様子に安心したのか、それとも完全に話をずらす為なのか? エクレールは別の話を振った
「そういえばソルセリー、隊長に何かお願いがあるとか言って無かったか?」
◆◇
なんて事が昨日の夜あり、俺は今度の休暇の時、ソルセリーと一緒に出掛けることになった。どこに行くかはまだ言われていない。
「それでまず、最初にこの拠点に物資を運ぶんですが━━」
それで今はタクティアと、食料物資の輸送に当たっての打ち合わせをしている。物資の方は召喚獣のラグナの『収納』に全て入れる、ラグナの『収納』は『家』に関係する物だったら大量に入れられるのでせっせと運び入れている、他の隊員や部隊の人員もそれを手伝っている。
「この辺りは攻められている状態なので、敵竜翼機に発見されないよう気を付けて下さい、予定道りの時間にたどり着く様に出来れば、味方竜翼機の護衛を得られますから」
「分かった」
数か所の物資の運搬、中には危険な地域もある。召喚獣のコスモで飛んで行くので地上からの攻撃は心配いらない。
ただし、地上から離れすぎると、場所によっては敵竜翼機に見つかる可能性もある、出来れば地上からあまり離れず飛んで行きたいのだが‥‥
女神サーナに封じられた『探知』、あれが無くなった事が悔やまれる、何で取っていったんですかね? 返してもらえませんか? 駄目ですか?
「━━それと」
一通り説明を受けた後
「ハヤト隊の休暇が決まりました、休日ではなく休暇です」
「マジで!?」
やっと‥‥やっと休暇か、長かったぁ
「他の部隊との調整などもありますので、まだ先になりますが、ちなみに休暇の日は既に決まってます、年をまたいで来年になりますが」
「来年か‥‥とか言っても、『急遽変更』とかなるんだろ?」
「それはありません、決定ですから」
「ほうほう‥‥」
来年になるとはいえ、それは嬉しい
「それでその休暇に関係があるんですが━━」
ん? なにやら不安な方向に行きそうだ
「その休暇中に、以前話した武闘大会があるんです」
ほらね
以前、武闘大会に出場しろと言われた事がある。軍が主催している大会で、剣技の部と、召喚獣の部がある、ハルツールから広く参加者は募集され、一般人でも出場可となっている、
そして軍からも各部門に一人、出場することが決まっていた。
「それに出ろって? 嫌だよめんどくさい、せっかくの休暇なのに」
それでなくても2件のソルセリー案件があるのに、『何か作れ』と『私について来い』がある、正直、何もしないで過ごしたいが。
「なら、出ないということでいいですか?」
「お、おう‥」
なんか、やけにあっさり
「‥‥いいの?」
「はい、代わりの人は一応いますから、ハヤト隊長の後輩で、ポンドラスと言う名前の人ですよ」
「ああ、アイツが出るのか」
俺の代わりに欧米ズのポンドラスが参加になったようだ。
悪いね、変わってもらって、こっちも忙しいんだよ。
「剣技の部にはライカが出る事になってます、休暇と重なって丁度いいですから」
「そ、そう‥‥」
身内が出るのか‥‥となると応援に行かなきゃいけないの? めんどいな~、家で見てますってのは駄目?
「なら、応援に行かないとね」
「そうですね、でも応援に行くなら出場してみては?」
「嫌だ」
「そうですか、‥‥それとですね、今回の大会の主賓なんですが、来年から新しくハルツール代表の一人となる方が、主賓として招待される事になるんです」
「ふーん」
それはどうでもいいよ
「ハヤト隊長とも縁の深い、リテア・ネジェン次期代表です」
!
「っ! リ、リテア様が!!!」
「‥‥‥はい」
リテア・ネジェン・次期タスブランカ代表
俺が以前護衛を務めた見た目10歳程の幼女(実年齢は当時50歳越え)で、俺は軍人という事を隠し、『フェルド・ガーン』という偽名で護衛をした。
リテア様を狙う輩から何とか守る事は出来たが、完ぺきとは言い難い結果だった。
同じ館で働く人たちの多くが死亡し、その事でリテア様も心を痛まれていた。
俺が着用していた装備などは礼式用で、まともに守る事が出来ない物だったし、武器も細身の役に立たない物だった。
あの時まともな装備があれば‥‥とは思うが、今思うのも遅いし、あの時は身を明かす事も出来なかったので、どうしようもないと言えば仕方がない。
「‥そうですか、リテア様が‥‥ならばこのフェルド、リテア様の為に大会に出場しなければなりませんね」
「‥‥‥‥そう言うと思って、軍の枠は一応は2つ取ってありますので‥‥」
タクティアが何やら変な目で見ている気がするのですが‥‥
「流石はタクティアですね、用意周到と言いますか、先をよく見ている」
我が部隊の一番の切れ者、その頭脳にはいつも助けられましたが、今回もそのようです
「えっと‥‥‥ハヤト隊長、今からそれですか?」
「なんのことでしょうか?」
◆◇
リテア様の事は尊敬しています、リテア様以前にネジェン家の事を尊敬しているでしょう、タスブランカを治めるため、代々一族はタスブランカの為に尽くして来た。
困難な時期もあったでしょう、政治的に不安定な時期もあったと思います。それでもその土地のために尽くすネジェン家には賞賛以外の言葉は見つかりません。
そしてリテア様、あの方は10歳の時『生命の契約』をされました。
当時まだ子供で、遊びたい次期だったでしょう、それでも自身の自由を犠牲にしてまで、タスブランカのために尽くそうとするリテア様の姿に、私フェルドも思わず涙が流れそうでした。
そのような理由でリテア様の事を、私は尊敬しています。
それと、このフェルドというもう一人の自分、お姫様に使える騎士というポジションが気に入っているのも事実です、最初は興味がありませんでしたが、やって見ると癖になるものです。
◆◇
「それでは行ってきます、タクティア、後の事は頼みましたよ」
召喚獣ラグナの『収納』に食料の搬入が終了し、輸送任務に赴きます
「ええ、気を付けて下さい」
「うん、私は数日、ここを空けることになりますが、皆もタクティアの言う事をよく聞き任務に励んで下さい、ライカとエクレールもこの部隊にいる時間が長いのですから、よく皆をまとめるように」
「あ、はい‥‥」
「ああ‥‥」
「ソルセリーは癇癪など起こしては駄目ですよ、タクティアにあまり強く当たらないように、いいですね」
「え、ええ‥‥」
「ノースにデディ、タバル、オーバ、マースも、今日、貴方たちはこの後、飛行場の草むしりですが、草むしりも大事な仕事です、決して手を抜かないように」
「「「はぁ‥‥」」」
どうやら皆も私がいない間しっかりやってくれるようです、これで安心して輸送任務に赴く事が出来ます。
「はいよぉ~!」
鐙でコスモの腹を叩くと、コスモは上昇し始めました。
「それでは行ってきます」
軽く手を上げ、私は輸送先に向かいました。
数日隊長としてこの場を空けますが、彼らならしっかりやってくれるでしょう
「さて、物資を待っている人たちの場所に向かいましょうか」
「ヒヒ~ン!」
ハヤトが飛び立ち、残された隊員達は
いち早く困惑から復帰したエクレールが
「‥‥タクティア、あれはなんだ?」
「心の病のようなものでしょうか? ‥‥‥‥前の時よりも悪化してますが」
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