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ゴブリンホイホイ
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魔物は洞窟などに住み着く事があり、定期的に駆除を行う。
洞窟は取り壊す事は無い、同族同士だと集まって生活をする事が多いので、わざと洞窟などを残しておき、そこで一網打尽にするためだ。
「ではこれから洞窟内に入る、ここは床に凹凸や、小部屋があって、小型の魔物がよく隠れているから気を付けろ、ミラは灯りを頼む」
「分かりました」
先頭にいるオリバーが、ボロボロになった扉を開け洞窟内に侵入する、そのあとミラが魔法を唱えると、薄暗かった洞窟内が一気に昼間のような明るさになった、この魔法『照明』というらしいが、光源自体を消す事が出来る魔法で、光の玉がプカプカ浮いて辺りを照らすということもなく、移動に邪魔にならない不思議魔法だ、時間があったら取りに行ってみたい。
「ハヤト、洞窟の中を進んでいる間、何か分からないこと、質問なんかがあったら答えるぞ」
おっ? なら聞いておこう
「洞窟なのに扉が付いているってのは、一体何故なんでしょうか?」
岩肌にぽっかりと穴が開いているのを想像していたのに、ボロいながらも扉があるのを疑問に思った。
「なんでも太古の大昔はこの洞窟を住居にしていたみたいだぞ、だから小部屋とかも沢山ある、前回の調査結果では扉はほとんど朽ちていたらしい‥‥しかし、今回扉は粗末ながらも修復されていた、ということはだ、今回はいるぞ」
隊長がそう言ったあと、意外と面倒見がいいブライが補足してくれた
「あいつらは馬鹿だけど多少は知恵があるからな、扉を直しておいて、他の魔物が入れないようにしておくんだよ、でな、そういう器用なことをするのはゴブリン位しかいないからな、だからこの奥にいるのは高確率でゴブリンってことになるな」
「緩衝地帯には、他の部族? 民族がいるって聞きましたけど、その人達って可能性は?」
「あいつ等はこんな洞窟になんかには住まないよ、それに東にはいないからな、いるのは西だ。大体は木の上に寝床を構えてるな、地面だと洞窟でも他の魔物に襲われるかもしんないからな、えーと、何だっけか? あの頭のデカい奴ら‥‥頭でっかちって呼んでるから忘れちまった」
「ヴァンギエル族、緩衝地帯西部、噂では深部にもいるらしいですよ」
「そう、それだよタウロン、あいつ等はホントに気持ち悪いからな、ヒュケイを狩って食ってるらしいし」
『ヒュケイ』の名前に少し反応してしまった、似たような召喚獣持ってるし
「ヒュケイ位しか食べるものが無いとか?」
「ちげーよ! あいつ等はヒュケイの足を好んでよく食うんだよ、ヒュケイってのは生きている人間も食うんだけどな、その時足で人の体をスゲー力で押さえつけるんだよ、肉が裂ける位のな、その力にあやかりたいみたいでな」
「足に特別な効果のある栄養分が含まれてるとか?」
「そんなのないわよー、そう思い込んでいる変な人達なの、いい? ハヤト、ハルツール国内にも少数、住んでいるんだけどね、絶対あの人達に近づいちゃだめよ、人をだましたり陥れたりするのが趣味なような人達だからね、あたし達もあの人達が住む場所には近づかないようにしているんだから」
「そうだなーあいつ等がいると治安も悪くなるからな、西側じゃーそんな奴らを政治の中枢に入れてる所もあるらしいけど、何考えてんだろうな、何にも考えてねぇーんだろうな」
ヴァンギエル族か、覚えておこう。
◇
洞窟の探索は順調に進み、最深部であろう場所までたどり着いた、太古の昔は住居だったらしい場所らしく、途中いくつもの扉があった、外にあった扉と違って中の扉はそんなには痛んでは無かった。
「結局ゴブリンとはここまで遭遇なしでしたね」
何というか、とんだ肩透かしだ。
「それでいいんだ、ゴブリンは基本臆病だからな、出会い頭、もしくは狩りの時以外は、人や魔物の声がすると逃げる習性がある、オスは外に出て狩りをしているだろうから、今この中にいるのは狩りをあまりしないメスや子供になるだろう、俺たちがここまで声を出して話をしながら来たのも、奴らを追い立てる意味もある、人の声を聴いた奴らは奥へ奥へと逃げていくんだ、そうすることで効率がよくなるからな」
「まとめてドーン! ですか」
「そうだ、あそこの壁を見てみろ、煤が付いているだろう? あそこがその場所だ」
隊長が指さす先には確かに壁や床、天井が黒く汚れていた
爆発でもさせるのかな?
洞窟内最後らしい小部屋があり、その中を覗いてみる
「ひっ!」
思わず声が出てしまった、中には何十匹というゴブリンがいた、メス? らしいゴブリンの後ろに小さなゴブリン、子供だろうか、それを庇うように前に立っている、その目は俺達を睨んでおり、手には石で出来たような刃物を持っている。
後ろにいる子供は大きな子が小さな子を守るように抱きかかえ、抱きかかえられている子は泣いているようだ。
ゴブリンとはいえ、こんな幼い子供まで殺さなければいけないのか? 確かにゴブリンは家畜を襲ったり人を襲ったりするかもしれない、しかし目の前にいるのは、怯えて泣いている幼い子とその母親じゃないか、! 確かに魔物だが、彼らを殺してしまうのは「人」としてどうなのか?
俺は人として、今このことに対し強い怒りを感じている。
ということは全く無い
むしろ早く殺してしまいたい、俺がこの部屋の中を見て情けない声を上げてしまったのは、あまりにも気持ち悪いからだ、一匹でも気持ち悪いのに何十匹も固まっていられると、おぇっ! となりそう、
例えていうなら、蛇が絡み合うように沢山いるとか、ゴキブリが大量発生しているとか。
最初にゴブリンをあっさり殺せたのも、「見た目」ということろが大きい
「殺せません!」
なんていう人は、ゴキブリを見ても殺さずそのままにしているような人だろう、正直そんな人とは友達にはなれそうもない、部屋に遊びに行ったらゴキブリで溢れてそうだし。
それにゴブリンにだけではなく、今まで遭遇した魔物自体なんかこう‥‥見てるとムカムカするというか‥‥何というか、とにかく始末したい!
「ハヤト、これからすることをよく見ておくんだ」
ええ! やっちゃってください!
隊長、ブライ、タウロンが部屋の前に立ち、一斉に部屋の中に向かって『火』の魔法を放つ、さながら火炎放射器のように、部屋の中からは悲鳴が聞こえてくる。
なるほどなー、こうやって火の魔法でやるから壁が煤だらけなのか。
汚物は消毒だー! をやり始めてから10分程が経過したころ。
‥‥ん?
3人は後ろにいる他の隊員にまで熱が伝わるような炎を出し続けている、形すら残らないように消し炭にする気だろう、少しでも残ったら帰ってきたゴブリンの餌になる可能性もある。
‥‥ あれ?‥‥これって‥‥
「ちょ、ちょっと隊長!?」
「駄目だよハヤト、かわいそうかもしれないけれど、こうしないと人や家畜が犠牲になったりすることもあるんだから」
隊長達を止めようとした俺を、ニーアが諭すような言い方をし目を伏せる、オリバーや『照明』の魔法で意識を集中し続けている、我が姉ことミラも、諦めろとか耐えなさい見たいな顔で俺を見つめる。
違うんです! 酸素! 酸素無くなりませんか!?
◇
「よし! やめぇ!」
隊長の声で魔法の発動を停止する、炎で焼かれた部屋の内部は壁や床、天井に赤みがさしておりかなりの高温であったことが分かる
俺はいまだに高温状態の部屋の入れるギリギリの場所まで足を進める、煙らしい煙は出てないが熱でちょっと目が痛い、そしてゆっくりと呼吸をしてみる
少し焦げ臭いけど苦しいってことは無いな
そして、ゆっくりと2回頷く
あれだけ長い時間炎が出ていたのに、呼吸が苦しくないってことはどういうことなんだろ? 通路には扉もあったし、区切られているはずなんだけどな、この部屋に空気穴でもあるのかな?
部屋を確認するため、ゆっくりと部屋の中を見わたす。
んーと‥‥、なさそうだ‥ね、何でだろ? サッパリ分からん!
そしてため息をついた。
「‥‥‥‥ハヤトここから出るぞ」
隊長にそう言われ
「ハイ」
と言って振り向いた、熱にやられた俺の目からは涙が少し出ていた。
「ハヤト‥‥」
◇
洞窟内からの引き上げ中、会話をしていたのは隊長と俺だけだった、他の隊員はお通夜のように黙り込み、一言も声を出さなかった。
「ハヤトお前の気持ちは分かるが‥‥誰かがやらなければならない仕事なんだ」
隊長は、この仕事は大事なんだと何度も静かに語りかけてきた、話しかけられている俺はそれどころではなかった、頭の中では小学校でした理科の実験のことで頭が一杯だ。
どうも納得が出来ない俺は、さっきからそればっかり考えていた、自分の考えに夢中で言葉数は少なくなるし、隊長の話に対しての返事もおざなりになる。
「分かってます」
抑揚もなく単調な返事だ、そしてそれが知らず知らずのうちに周りの空気を重くする。
◇
洞窟内から外に出てきて深呼吸を一つ、やっぱり外の空気は違うな、あの洞窟であったことは軍学校に帰ったら少し調べてみるか、試したいことも出来たし。
何て思っていたら、いきなりミラに正面から抱き着かれた
「えっ?お姉ちゃん?」
人前でそんな!
「ごめんねハヤト、辛かったでしょう‥‥」
とんでもない! 最高です!
「にへら」としただらしない笑顔になってしまった。
兜からはみ出したミラの細い髪の毛が俺の頬に掛かる、サラサラとした髪がこそばゆい、ミラは兜越しに優しくポンポンと叩くような感じで頭を撫でてくれていた、何故か少しだけ泣いているようだ。
ミラは洞窟内では照明の魔法に集中していたので、誰かに話しかけるなんてことは出来なかったが、洞窟を出たということで、その必要も無くなりこうして話をしている
「ハヤトは優しいからね」
なんのことだかサッパリだが、とりあえずお互いの軽鎧が邪魔すぎる、兜も!
「今日一日お前を見ていたが、お前は絶対に心が狂うような軍人にはならないだろう、ゴブリンを殺すことに対して楽しいと感じることは無かっただろう? お前の顔を見て俺はそう思った、だからハヤト、お前は大丈夫だ、安心しろ」
火柱を上げながら、笑顔で魔物に突撃していく隊長本人が言っても、説得力がないと思うがとりあえず
「はい」
とだけ返す、周りの隊員達も俺の笑顔(スケベ)を見て優しい笑顔になっていた。
この時何となく、ゴブリンを焼き払った辺りから、俺と他の隊員たちの温度差が違うような感じはしていたけど‥‥‥‥
・・・・・・
・・
その理由を知ったのは15年後、ニーアから教えてもらった、逆にその時俺の考えていたことを話すと、いい思い出が一つ消されたような顔をニーアはした。
洞窟は取り壊す事は無い、同族同士だと集まって生活をする事が多いので、わざと洞窟などを残しておき、そこで一網打尽にするためだ。
「ではこれから洞窟内に入る、ここは床に凹凸や、小部屋があって、小型の魔物がよく隠れているから気を付けろ、ミラは灯りを頼む」
「分かりました」
先頭にいるオリバーが、ボロボロになった扉を開け洞窟内に侵入する、そのあとミラが魔法を唱えると、薄暗かった洞窟内が一気に昼間のような明るさになった、この魔法『照明』というらしいが、光源自体を消す事が出来る魔法で、光の玉がプカプカ浮いて辺りを照らすということもなく、移動に邪魔にならない不思議魔法だ、時間があったら取りに行ってみたい。
「ハヤト、洞窟の中を進んでいる間、何か分からないこと、質問なんかがあったら答えるぞ」
おっ? なら聞いておこう
「洞窟なのに扉が付いているってのは、一体何故なんでしょうか?」
岩肌にぽっかりと穴が開いているのを想像していたのに、ボロいながらも扉があるのを疑問に思った。
「なんでも太古の大昔はこの洞窟を住居にしていたみたいだぞ、だから小部屋とかも沢山ある、前回の調査結果では扉はほとんど朽ちていたらしい‥‥しかし、今回扉は粗末ながらも修復されていた、ということはだ、今回はいるぞ」
隊長がそう言ったあと、意外と面倒見がいいブライが補足してくれた
「あいつらは馬鹿だけど多少は知恵があるからな、扉を直しておいて、他の魔物が入れないようにしておくんだよ、でな、そういう器用なことをするのはゴブリン位しかいないからな、だからこの奥にいるのは高確率でゴブリンってことになるな」
「緩衝地帯には、他の部族? 民族がいるって聞きましたけど、その人達って可能性は?」
「あいつ等はこんな洞窟になんかには住まないよ、それに東にはいないからな、いるのは西だ。大体は木の上に寝床を構えてるな、地面だと洞窟でも他の魔物に襲われるかもしんないからな、えーと、何だっけか? あの頭のデカい奴ら‥‥頭でっかちって呼んでるから忘れちまった」
「ヴァンギエル族、緩衝地帯西部、噂では深部にもいるらしいですよ」
「そう、それだよタウロン、あいつ等はホントに気持ち悪いからな、ヒュケイを狩って食ってるらしいし」
『ヒュケイ』の名前に少し反応してしまった、似たような召喚獣持ってるし
「ヒュケイ位しか食べるものが無いとか?」
「ちげーよ! あいつ等はヒュケイの足を好んでよく食うんだよ、ヒュケイってのは生きている人間も食うんだけどな、その時足で人の体をスゲー力で押さえつけるんだよ、肉が裂ける位のな、その力にあやかりたいみたいでな」
「足に特別な効果のある栄養分が含まれてるとか?」
「そんなのないわよー、そう思い込んでいる変な人達なの、いい? ハヤト、ハルツール国内にも少数、住んでいるんだけどね、絶対あの人達に近づいちゃだめよ、人をだましたり陥れたりするのが趣味なような人達だからね、あたし達もあの人達が住む場所には近づかないようにしているんだから」
「そうだなーあいつ等がいると治安も悪くなるからな、西側じゃーそんな奴らを政治の中枢に入れてる所もあるらしいけど、何考えてんだろうな、何にも考えてねぇーんだろうな」
ヴァンギエル族か、覚えておこう。
◇
洞窟の探索は順調に進み、最深部であろう場所までたどり着いた、太古の昔は住居だったらしい場所らしく、途中いくつもの扉があった、外にあった扉と違って中の扉はそんなには痛んでは無かった。
「結局ゴブリンとはここまで遭遇なしでしたね」
何というか、とんだ肩透かしだ。
「それでいいんだ、ゴブリンは基本臆病だからな、出会い頭、もしくは狩りの時以外は、人や魔物の声がすると逃げる習性がある、オスは外に出て狩りをしているだろうから、今この中にいるのは狩りをあまりしないメスや子供になるだろう、俺たちがここまで声を出して話をしながら来たのも、奴らを追い立てる意味もある、人の声を聴いた奴らは奥へ奥へと逃げていくんだ、そうすることで効率がよくなるからな」
「まとめてドーン! ですか」
「そうだ、あそこの壁を見てみろ、煤が付いているだろう? あそこがその場所だ」
隊長が指さす先には確かに壁や床、天井が黒く汚れていた
爆発でもさせるのかな?
洞窟内最後らしい小部屋があり、その中を覗いてみる
「ひっ!」
思わず声が出てしまった、中には何十匹というゴブリンがいた、メス? らしいゴブリンの後ろに小さなゴブリン、子供だろうか、それを庇うように前に立っている、その目は俺達を睨んでおり、手には石で出来たような刃物を持っている。
後ろにいる子供は大きな子が小さな子を守るように抱きかかえ、抱きかかえられている子は泣いているようだ。
ゴブリンとはいえ、こんな幼い子供まで殺さなければいけないのか? 確かにゴブリンは家畜を襲ったり人を襲ったりするかもしれない、しかし目の前にいるのは、怯えて泣いている幼い子とその母親じゃないか、! 確かに魔物だが、彼らを殺してしまうのは「人」としてどうなのか?
俺は人として、今このことに対し強い怒りを感じている。
ということは全く無い
むしろ早く殺してしまいたい、俺がこの部屋の中を見て情けない声を上げてしまったのは、あまりにも気持ち悪いからだ、一匹でも気持ち悪いのに何十匹も固まっていられると、おぇっ! となりそう、
例えていうなら、蛇が絡み合うように沢山いるとか、ゴキブリが大量発生しているとか。
最初にゴブリンをあっさり殺せたのも、「見た目」ということろが大きい
「殺せません!」
なんていう人は、ゴキブリを見ても殺さずそのままにしているような人だろう、正直そんな人とは友達にはなれそうもない、部屋に遊びに行ったらゴキブリで溢れてそうだし。
それにゴブリンにだけではなく、今まで遭遇した魔物自体なんかこう‥‥見てるとムカムカするというか‥‥何というか、とにかく始末したい!
「ハヤト、これからすることをよく見ておくんだ」
ええ! やっちゃってください!
隊長、ブライ、タウロンが部屋の前に立ち、一斉に部屋の中に向かって『火』の魔法を放つ、さながら火炎放射器のように、部屋の中からは悲鳴が聞こえてくる。
なるほどなー、こうやって火の魔法でやるから壁が煤だらけなのか。
汚物は消毒だー! をやり始めてから10分程が経過したころ。
‥‥ん?
3人は後ろにいる他の隊員にまで熱が伝わるような炎を出し続けている、形すら残らないように消し炭にする気だろう、少しでも残ったら帰ってきたゴブリンの餌になる可能性もある。
‥‥ あれ?‥‥これって‥‥
「ちょ、ちょっと隊長!?」
「駄目だよハヤト、かわいそうかもしれないけれど、こうしないと人や家畜が犠牲になったりすることもあるんだから」
隊長達を止めようとした俺を、ニーアが諭すような言い方をし目を伏せる、オリバーや『照明』の魔法で意識を集中し続けている、我が姉ことミラも、諦めろとか耐えなさい見たいな顔で俺を見つめる。
違うんです! 酸素! 酸素無くなりませんか!?
◇
「よし! やめぇ!」
隊長の声で魔法の発動を停止する、炎で焼かれた部屋の内部は壁や床、天井に赤みがさしておりかなりの高温であったことが分かる
俺はいまだに高温状態の部屋の入れるギリギリの場所まで足を進める、煙らしい煙は出てないが熱でちょっと目が痛い、そしてゆっくりと呼吸をしてみる
少し焦げ臭いけど苦しいってことは無いな
そして、ゆっくりと2回頷く
あれだけ長い時間炎が出ていたのに、呼吸が苦しくないってことはどういうことなんだろ? 通路には扉もあったし、区切られているはずなんだけどな、この部屋に空気穴でもあるのかな?
部屋を確認するため、ゆっくりと部屋の中を見わたす。
んーと‥‥、なさそうだ‥ね、何でだろ? サッパリ分からん!
そしてため息をついた。
「‥‥‥‥ハヤトここから出るぞ」
隊長にそう言われ
「ハイ」
と言って振り向いた、熱にやられた俺の目からは涙が少し出ていた。
「ハヤト‥‥」
◇
洞窟内からの引き上げ中、会話をしていたのは隊長と俺だけだった、他の隊員はお通夜のように黙り込み、一言も声を出さなかった。
「ハヤトお前の気持ちは分かるが‥‥誰かがやらなければならない仕事なんだ」
隊長は、この仕事は大事なんだと何度も静かに語りかけてきた、話しかけられている俺はそれどころではなかった、頭の中では小学校でした理科の実験のことで頭が一杯だ。
どうも納得が出来ない俺は、さっきからそればっかり考えていた、自分の考えに夢中で言葉数は少なくなるし、隊長の話に対しての返事もおざなりになる。
「分かってます」
抑揚もなく単調な返事だ、そしてそれが知らず知らずのうちに周りの空気を重くする。
◇
洞窟内から外に出てきて深呼吸を一つ、やっぱり外の空気は違うな、あの洞窟であったことは軍学校に帰ったら少し調べてみるか、試したいことも出来たし。
何て思っていたら、いきなりミラに正面から抱き着かれた
「えっ?お姉ちゃん?」
人前でそんな!
「ごめんねハヤト、辛かったでしょう‥‥」
とんでもない! 最高です!
「にへら」としただらしない笑顔になってしまった。
兜からはみ出したミラの細い髪の毛が俺の頬に掛かる、サラサラとした髪がこそばゆい、ミラは兜越しに優しくポンポンと叩くような感じで頭を撫でてくれていた、何故か少しだけ泣いているようだ。
ミラは洞窟内では照明の魔法に集中していたので、誰かに話しかけるなんてことは出来なかったが、洞窟を出たということで、その必要も無くなりこうして話をしている
「ハヤトは優しいからね」
なんのことだかサッパリだが、とりあえずお互いの軽鎧が邪魔すぎる、兜も!
「今日一日お前を見ていたが、お前は絶対に心が狂うような軍人にはならないだろう、ゴブリンを殺すことに対して楽しいと感じることは無かっただろう? お前の顔を見て俺はそう思った、だからハヤト、お前は大丈夫だ、安心しろ」
火柱を上げながら、笑顔で魔物に突撃していく隊長本人が言っても、説得力がないと思うがとりあえず
「はい」
とだけ返す、周りの隊員達も俺の笑顔(スケベ)を見て優しい笑顔になっていた。
この時何となく、ゴブリンを焼き払った辺りから、俺と他の隊員たちの温度差が違うような感じはしていたけど‥‥‥‥
・・・・・・
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その理由を知ったのは15年後、ニーアから教えてもらった、逆にその時俺の考えていたことを話すと、いい思い出が一つ消されたような顔をニーアはした。
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