幼児化騎士は☓☓☓しました。

元剣士は悪夢から覚めない

長年の鍛練で身につけた筋肉の鎧を脱ぎ捨てたライオットは自らの身体の軽さに驚いた。
手足を動かすが、まだ今の肉体に脳が追いつかない。
女が身にまとっていた女児服は、この辺りの民の者ではなかった。
短い丈の腰布はスカートではないもののヒラヒラとした装飾が施されていて戦闘には向かない。
ごわごわとした厚手の下着も歩きにくかった。
先ほどまでの酔いがいっきに覚めていき、手のひらで自分の顔や身体を触って現実を認識しようと試みる。
年齢は5～7くらいで身長は90センチくらいか。
最初に対峙した女児はさらに、幼かったのでもしかしたらもっと若いかもしれない。
「夢なら覚めてくれ」
と発した声はソプラノだった。
自宅に帰ったとして、なんと説明すればいいのだろう。
この身体では剣も振れない。
ライオットには、6つ離れた妹ガーネットがいた。
騎士として活躍しているライオットを尊敬し、憧れすら抱いているガーネットが今のライオットをみたら失望するに違いない。
そう考えるとライオットの足は重かった。
ライオットの不在や弱体化が世に知られれば周辺国との関係も崩れかねない。
いっそこのまま正体を明かさず英雄のライオットのまま行方不明になった方がいいのか。
ライオットは悩んだあげく、帰らない事にした。
王宮の近くには身寄りのない子供を集めた孤児院があると聞いていた。
正体を明かさず保護を求めるというのがライオットの選択だった。