クロノスの子供達

絃屋さん  

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異変

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しばらくしてもマリッサは帰ってこなかった。
列車はいくつかの駅を通りすぎていたが、座席にはまだマリッサの荷物が置きっぱなしになっていた。
ゴーフルは旅先で出会ったイワンとその母親に付き添われていた。
「……ほんとにどうしたのかしらね」
イワンの母親もさすがに不安を口にした。
忽然と列車から消えたマリッサ。
「ぼく、やっぱり探してきます」
少し落ち着きを取り戻したゴーフルは、2人の元から離れてマリッサを捜索する事にした。
「私たちが降りる駅はまだ先だから、何かあったらここに戻ってきたらいいわよ」
イワンの母親が言う。
「ありがとう。じゃあ行ってきます」
イワンも着いていきたたがったが、そこは母親が押し留めた。
まず最初に、マリッサの荷物を確認したが手荷物を含め、無くなっているものは無かった。
とりあえず、ゴーフルは隣りの車両のトイレを目指す事にした。
トイレの扉は閉まっていたが、誰も入っていない表示が出ていた。
念のため扉を開けようと取っ手に手をかけようとすると急にその扉が開いた。
「あ、すみません」
中から出てきたのはマリッサだった。
「マリッサこんな所にいたの?」
「え、えーと、あなた誰?私の事を知ってるの?」
予想外の反応に、ゴーフルは思わず息をのむ。
「なに言ってるの、マリッサ!悪い冗談はよしてよ」
ゴーフルの言葉を聞いても、マリッサの表情は変わらない。
「ごめんなさいね。本当にあなたの事を思い出せなくて……あなたみたいな子、知り合いにいたかしら。マノンの友達にしては小さいし」
「マノン?マリッサ、ぼくは君の兄貴のゴーフルだ。2人でアイルランドに行く途中じゃないか」
「兄貴?私の兄さんは確かにゴーフルって名前だけど事故で死んだわ。あなた、そんな訳の分からない事をいって、どういうつもりなの」
マリッサは、ゴーフルの名を聞いて怒りだした。
「マリッサ、信じてよ」
「こんな幼い子供の兄さんなんていないわ。急いでるからそこをどきなさい」
マリッサは、ゴーフルを押し退けて通りすぎる。
「どういう事だ……マリッサに何があったんだ」
ゴーフルが呆然と立ちすくんでいるとマリッサと入れ違いにイワンと母親がこの車両に入ってきた。
「ママが見つかって、良かったわね。私達は次の駅で降りるから後側の車両に移るわね」
「どうしたんだよアーシャ?まぁ、いいや。とりあえず行くよ」
2人はそのまま反対側の車両に向かっていった。
ゴーフルは、我にかえってマリッサを追いかけた。
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