ダーティマシーナリーの享楽

絃屋さん  

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犬も歩けば花にあたる

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「さぁエル様、しっかりお兄ちゃんとお手手をつなぎましょうね」
「そうそう、迷子になっちゃうよ」
慣れないスカートを気にしながら歩くソシエルの足取りは重い。
ただでさえ恥ずかしい格好をしているのに、街の人にそれを見られるのは苦痛だ。
「あらあら、可愛い兄妹ね」
そんな言葉や、向けらる視線にいちいち顔を赤らめる。
「どうしたの?お家ではあんなにお転婆だったのに」
「大丈夫だよ、しっかり手を握ってれば怖いひとは来ないから」
ポンは当然の事のように妹扱いをしてくる。
「そうですね、いざとなったらポンと私で返り討ちです」
禁書管理者は、常に革命思想家達に狙われる存在である。
彼らが、公僕の犬であることは勿論だが思想家達は検閲や表現の自由を抑圧する存在を毛嫌いしている。
特に裏崑崙で最近勢力を増しているのが郎花衆だ。
「クソ花どもが仕事を増やすから、趣味の読書がはかどらないです」
「アン、変なフラグ立てないで」
3人が歩いてると、知らない人はただの母親と兄妹に見える。
「まって、ちょっと」
「ん?どうしたのエル様?」
「ごめん、ごめん。ちょっと歩くの早かった?」
「いや、そうじゃなくって……その」
ソシエルは自身の状況をどう伝えればいいか分からなかった。
「慣れないお散歩で疲れちゃった?抱っこしてあげようか?」
アンが提案するのを、首を横にふり否定する。
「ちがうの、えーとね」
「分かったぁ、エルちゃんはママと手を繋ぎたかったんだね。ごめんねお兄ちゃん気付かなかったよ」
そう言ってポンが手を離すと、ソシエルはもう完全に1歩も動く余裕がない様子だった。
さきほどから、ソシエルは膝をすり合わせながら、手でスカートの前をギュッとおさえて身体を小刻みに震わせている。
そして、タイミングが悪いことに3人の前に敵が現れる。
「こんな所でお主達に会うとは何の因果か」
袈裟を着た坊主頭の男が、わざとらしく物陰からあらわれる。
「白々しいな、ストーカーの癖に何を格好つけている」
男はアンと面識があるらしく、既に敵意をむき出しにしていた。
「いやいや、今日あたり何か動きがあると踏んで見張っていたのだよ」
「認めやがったな生臭坊主め」
さらに、後方からもう一人目の下のクマが酷い女が姿を現す。
「はぁはぁ、政府の犬に天誅を!」
「僕は狐だけどね、お姉さん顔色悪いよ」
女は釘と木槌を手に、ポンに襲いかかってくる。
「死ね、死ね、死ねぇぇ」
「うわ、なんだよいきなり。危ないなぁ」
言葉とは裏腹に、余裕で身をかわす。
さらに、少し離れたビルの屋上にもう一人の刺客がいた。
拡声器のようなものを手にした学ランの若い男だ。
しかし、様子を見ているだけで今は手を出さない。
「ちっ、怪力女は今日は居ないのか、なんかちっさい娘がいるけど初めて見る顔だな」
男は当てが外れたのか、傍観を決め込むようだ。
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