ダーティマシーナリーの享楽

絃屋さん  

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裏の裏の裏

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「ワタシは娘を蘇らせたい。その為にはどうしても、死者の書が必要なのじゃ」
ソシエルが気を失った後、禁書管理館に現れたのはtypeFだけではなかった。
「あなたが黒幕って訳ですか」
アンは、男と距離をとりつつ対峙していた。
「この男を殺されたくなければ、書庫のシールドを解除しろ」
「お客様、土足で我が館に踏入ながらそんな要求には答えられません」
「お前たちに選択肢はない。早くよこせ」
「なにか勘違いしておられるようですが、この館にある禁書はただ持っているだけで使用できるものではありません」
「そんな事はわかっている。手に入りさえすれば解読し、かならず我が娘タージアを蘇らせてみせる」
「あなたが今殺そうとしているそのソシエル様こそ、ここの書物を使いこなせる天才なんですがねぇ」
「……」
男は少し悩んでいるようだった。
「我々が死者の書を渡したとしても、御主人様の命が保証される訳ではないですし。この取引は決裂です」
「くっ、タージア起きろ!」
男は倒れている機械人形に呼びかける。
「オトウ……サマ」
「ソウルスティール!」
立ち上がろうとする人形を再び抑え込む。
「やめろ、娘から離れろ」
「おやおや、おかしな事をおっしゃいますね。なるほど……この人形の中にまだあなたの娘の魂を残しているんですね」
「……」
「はぁ、とんでもないロリコン野郎かと思ったら死者の尊厳を踏みにじる糞野郎の方でしたか」
「黙れ、貴様らになにが解る!」
「私は幽霊ですよ。私にはこの娘の心の声が痛いほど伝わってきます」
「ワタシは、ワタシは……」
「貴方、さっきから娘の為を想ってると言いながら自分のエゴを押し付けているだけでは?」
アンは厳しい言葉を投げかける。
男はソシエルに向けていたナイフを床に落とす。
「お客様、それではこうしましょう。貴方の大切な娘タージアさんを私は人質にとります」
「!?」
「ソウルスティール!」
アンは、ソシエルの精神を取り出しtypeF、つまりタージアの中に放り込んだ。
「ばれたら処刑されるレベルの禁術ですが、緊急事態ですよね御主人様……そちらの肉体は空っぽです。今あなたの娘と御主人様は一蓮托生。」
「やめろ、やめてくれ!そんな汚らわしい魂を入れるな」
「可愛い娘が中年男と一心同体ですよ~さぁどうしますかぁ?」
さらにアンは畳み掛ける。
「この外道が!」
「では、こちらから提案しましょう。あなたの娘タージアの蘇生をうちの御主人様に託してみませんか?」
「なんだと!?」
「死者の書は使い方を一歩間違えば、地獄の蓋をこじ開けて魑魅魍魎をこの世に解き放つ結果になりかねません。最も成功率が高い選択はうちの御主人様に禁術を使わせる事ではないでしょうか」
「なるほど……」
「計画はこうです。今、御主人様はタージアさんの精神と混ざりあった状態です。必ずその心に触れ、情が移るはず」
「うむ」
「もしも、タージアさんが本当に蘇生を望むなら必ず御主人様は禁術を使う。それに賭けてみませんか?」
「……わかった、その提案をのもう」
「では、いったんこれを持ってお帰りください。死者の書のレプリカです」
「ワタシの愛しい娘を頼む」
「悪いようにはしません、そのつど写真で報告しますね」
「うむ」
男は説得に応じ、部屋から退出していった。
「さて、後始末が大変ですね」
アンは、言葉とは裏腹に怪しく笑うのだった。
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