2 / 16
監獄の匣
#01 聞かせて
しおりを挟む
私には、幼い頃からの友達がいる
同じ街で育ち、同じ街で暮らした
しかし、この『匣』に来てからは一度も会っていない
元気にしているのだろうか...
その子の口癖は、「聞かせて」だった
私が悩んでいることを見透かしているようだった
会ったら、また「聞かせて」と言うのだろうか...
『匣』にラギ長官がいない間、私は自由だ。監視の目がないので、のんびりできる。しかし、身喰いの傷は癒してはならず、『匣』から出てもいけない。
厠へ行くことは、唯一許されている。ラギ長官曰く、「垂れ流しにされると困る」との事だ。
そんな、ラギ長官のいない間『自由時間』に、来客が訪れる
自由時間、いつものように私は、はだけた服装で鳶座りをしていた
檻の扉が、ガタガタと音を立てた
「チョル!元気にしてたか?」
檻越しに、懐かしい声と姿を感じた
あの子だ!
「酷い傷だな...。よくそれで生きれるな、尊敬するよ...」
彼 ー イーシュ ー は、私を見るなり顔を顰めた。
「そうだ!俺ん家、薬草育ててるからさ、持ってこようか?」
イーシュの家は、薬草を育てている
何にしろ、薬剤研究の家系だからだ
イーシュ本人は、軍隊を希望しているのだが...
「いや、いいよ...。この傷、治しちゃだめって言われてるし...」
私は、断った
「そっかー、じゃぁ仕方ないか...。無理に従わなくてもいいのに...」
イーシュは俯き、そう呟いた
「悩んでいることとかない?大丈夫?」
これはまさか...、あの展開...
「聞かせて」
ほらやっぱり...。しかし私は彼のこういう所が好きだ。
「...早くしないと、ラギ長官が来ちゃう...」
声を震わせて、私は言う
「なぁに、あんな奴、こうして、こうして、こうだ!俺のカンフー捌き、見せてやりたいわ!アチョー!」
イーシュは、寸止めの仕草をして見せた。なんか可愛い...
「傀儡!戻ったぞ!用足しは済ましたか!」
「あっ...、ごめん。来ちゃった...」
ラギ長官が戻ってきた
「俺の方こそごめん。また今度...」
イーシュは笑顔で手を振り、『匣』の階段を登っていった
久しぶりに聞いた「聞かせて」は、いつもより意味有りげだった
同じ街で育ち、同じ街で暮らした
しかし、この『匣』に来てからは一度も会っていない
元気にしているのだろうか...
その子の口癖は、「聞かせて」だった
私が悩んでいることを見透かしているようだった
会ったら、また「聞かせて」と言うのだろうか...
『匣』にラギ長官がいない間、私は自由だ。監視の目がないので、のんびりできる。しかし、身喰いの傷は癒してはならず、『匣』から出てもいけない。
厠へ行くことは、唯一許されている。ラギ長官曰く、「垂れ流しにされると困る」との事だ。
そんな、ラギ長官のいない間『自由時間』に、来客が訪れる
自由時間、いつものように私は、はだけた服装で鳶座りをしていた
檻の扉が、ガタガタと音を立てた
「チョル!元気にしてたか?」
檻越しに、懐かしい声と姿を感じた
あの子だ!
「酷い傷だな...。よくそれで生きれるな、尊敬するよ...」
彼 ー イーシュ ー は、私を見るなり顔を顰めた。
「そうだ!俺ん家、薬草育ててるからさ、持ってこようか?」
イーシュの家は、薬草を育てている
何にしろ、薬剤研究の家系だからだ
イーシュ本人は、軍隊を希望しているのだが...
「いや、いいよ...。この傷、治しちゃだめって言われてるし...」
私は、断った
「そっかー、じゃぁ仕方ないか...。無理に従わなくてもいいのに...」
イーシュは俯き、そう呟いた
「悩んでいることとかない?大丈夫?」
これはまさか...、あの展開...
「聞かせて」
ほらやっぱり...。しかし私は彼のこういう所が好きだ。
「...早くしないと、ラギ長官が来ちゃう...」
声を震わせて、私は言う
「なぁに、あんな奴、こうして、こうして、こうだ!俺のカンフー捌き、見せてやりたいわ!アチョー!」
イーシュは、寸止めの仕草をして見せた。なんか可愛い...
「傀儡!戻ったぞ!用足しは済ましたか!」
「あっ...、ごめん。来ちゃった...」
ラギ長官が戻ってきた
「俺の方こそごめん。また今度...」
イーシュは笑顔で手を振り、『匣』の階段を登っていった
久しぶりに聞いた「聞かせて」は、いつもより意味有りげだった
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
呪部屋の生贄
猫屋敷 鏡風
ホラー
いじめっ子のノエルとミエカはミサリをターゲットにしていたがある日ミサリが飛び降り自殺をしてしまう。
10年後、22歳になったノエルとミエカに怪異が襲いかかる…!?
中2の時に書いた訳の分からん物語を一部加筆修正して文章化してみました。設定とか世界観が狂っていますが悪しからず。
FLY ME TO THE MOON
如月 睦月
ホラー
いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
何度も母を殺す夢
真ん中のペダル
ホラー
冴えない高校生が大嫌いな母を何度も殺す夢のお話。毎回必ず母は死にますし、周りも巻き込まれたりするかもしれません。
少しばかり激しい表現があります。
カテゴリーなんなんだろうか……。
虫喰いの愛
ちづ
ホラー
邪気を食べる祟り神と、式神の器にされた娘の話。
ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。
三万字程度の短編伝奇ホラーなのでよろしければお付き合いください。
テーマは蛆虫とメンヘラ(?)
蛆虫などの虫の表現、若干の残酷描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
『まぼろしの恋』終章で登場する蝕神さまの話です。『まぼろしの恋』を読まなくても全然問題ないです。
また、pixivスキイチ企画『神々の伴侶』https://dic.pixiv.net/a/%E7%A5%9E%E3%80%85%E3%81%AE%E4%BC%B4%E4%BE%B6(募集終了済み)の十月の神様の設定を使わせて頂いております。
表紙はかんたん表紙メーカーさんより使わせて頂いております。
二つの願い
釧路太郎
ホラー
久々の長期休暇を終えた旦那が仕事に行っている間に息子の様子が徐々におかしくなっていってしまう。
直接旦那に相談することも出来ず、不安は募っていくばかりではあるけれど、愛する息子を守る戦いをやめることは出来ない。
色々な人に相談してみたものの、息子の様子は一向に良くなる気配は見えない
再び出張から戻ってきた旦那と二人で見つけた霊能力者の協力を得ることは出来ず、夫婦の出した結論は……
二番目の弱者
目黒サイファ
ホラー
いつも学校でいじめられているニシハラ君とボクは同じクラスメイトだ。ニシハラ君へのいじめは習慣化されていて、誰も止める人はいなかった。ボクも傍観者の一人である。深夜、ボクが町を徘徊していると、不気味な格好をしてニシハラ君を発見してしまった。そこから、ボクの日常が崩れていく。日常に潜む恐怖が顕現するショートショート集。※感想をお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる