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第2章 水着少女と夜更けの逢瀬
彼女を独り占めにする夜 ※
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「――美亜、起きてるか?」
「シュン君? うん、今開けるね」
俊平が美亜の部屋を訪ねたのは夜半前、皆が寝静まった頃のこと。
既に廊下の照明は消され、非常灯のみが点々と灯っている。そんな中で少し待っていると年代物の扉がギギィと音を立てて開き、ジャージ姿の可憐なハーフ美少女が顔を覗かせた。
「おつかれさま。ゴメンね、無理言って」
「大丈夫。俺も昼間ゆっくりさせてもらったし、夜は夜で思ったより早めに片が付いたしな。子どもらの寝つきが良くて助かったよ」
「朝から将棋、昼間は海、夜はバーベキューだもんね。イベント目白押しで、みんな疲れちゃったんだよ。……とりあえず、部屋に入って。ここも暑いし、ね?」
美亜に手を取られ、部屋の中へと招き入れられる。
その柔い指先は少しヒンヤリとして、俊平には心地よく感じられた。
知らず知らずのうちに鼓動が早くなっていたことに気づいたのは、そのときだった。
この密やかな逢瀬。
誘ったのは、美亜の方だった。
『私の部屋番号、シュン君は分かるよね?』
夕食時、子どもたちの世話もひと段落がついて、俊平は富永から託された話をいつ持ち掛けるか、そのタイミングをうかがっていた。
そんな折、隣に座った美亜が声を潜めて訊いてきたのだ。
『ああ、こないだ先生から回ってきた部屋割り表にあったからな。それがどうかしたか?』
『このあと、富永先生たちと飲むんでしょ。それが終わってからでいいから、部屋に来てほしいの。いいかな?』
『……お、おう。わかった』
彼女は俊平の返答に満足したように微笑んで、席を立つ。
その頬に仄かに朱が差していたのを、俊平は見逃すことができなかった。
(期待していい、のか……?)
そんな邪な考えが浮かんだのは否定できない。
やがて満足した子どもたちが捌け、なし崩し的に大人たちの酒宴が始まってからもそれは変わらず。頬を染めた美亜の表情ばかりが脳裏にちらついて、俊平はまともに酒の味もわからないほどだった。
「……あれ、どうしたんだ」
自分を待つ間、勉強でもしていたのだろうか?
壁際に据えられた机、色あせたスタンドランプが点きっぱなしなのに目が行く。すると、フッと部屋の明かりが消えた。
振り返ると、壁のスイッチに手を伸ばしている美亜。
彼女は唇をかみ、少しためらうように視線をさまよわせていたが、やがて意を決したようにジャージのジッパーを引き下ろした。
「お、おい!?」
美亜の思ってもみなかった行動に思考がフリーズし、視線をそらさねばならないことも忘れてしまう。遠くに聞こえる波のさざめきに消えいってしまいそうな微かな衣擦れの音さえ、今この時だけは妙に生々しく耳に残った。
時間にすれば、ほんの十秒ほどのストリップ・ショー。恥じらいの抜けきれない手つきでたどたどしくも成し終えると、美亜はそれがよく見えるように恋人の下へ歩み出た。
「どうかな、この水着。ちょっと頑張りすぎちゃったかもだけど」
「……おおぉ、美亜、それって」
スタンドランプが淡く照らしだした美亜の姿に、俊平は思わず息をのんだ。
彼女が身にまとっていたのは、水着だった。
それも昼に着ていた可愛らしいワンピースではなく、大人っぽい黒ビキニ。
張りのあるバストをふわりと包む大胆な三角形の布地に、下腹部から太ももまでのなだらかな曲線を際立たせるローライズショーツ。その腰紐も編み紐状になっており、透けるように覗いた白い地肌が際どい色気を醸し出している。
もしも昼間こんな水着を着ていたら、ビーチの視線は独り占めだっただろう。美亜のビキニ姿はそれほどまでにセクシーで、犯罪的といえるほど魅力に溢れていた。
「……あのさ、黙ってないでなんとか言ってよ」
唖然としたままの俊平に、唇を尖らせる美亜。
そんな拗ねた様子すらあまりにキュートが過ぎて、反射的に言葉が出てこない。
「ああ、いやごめん。……その、似合ってる、すごく。思わず見とれるぐらい可愛いよ。でも、昼間着てたやつと違うよな。もしかして俺に見せるために着てくれた、とか?」
「他に理由があると思う?」
「だよな。はは、ありがとう。嬉しいよ、本当に」
朝、清佳が別れ際に囁いた言葉の意味がようやく分かった気がした。
泳ぐための普通の水着とは別に準備した、俊平のためだけの特別な水着。
能天気なようでいて実は何事につけ考え込みがちな美亜のことだ。きっとこの水着を選ぶのにも、だいぶ悩んだに違いない。さっきから少しつっけんどんな物言いも、思った以上に大胆にビキニを身にまとう気恥ずかしさからくるものであるのは、彼女がジャージを脱いでからずっと目を俊平と合わせてくれないことに気づけば納得がいく。
そうまでして自分を喜ばせようとしてくれている。そのいじらしさが、思わず抱きしめたくなるほどに嬉しかった。
「あとはその、背中の方はこんな風になってるんだけど……」
まだ何か見せたいものがあるのか。美亜はそう言って、その場でくるりと背を向けた。
と、俊平はまたそこで驚く。一瞬、彼女が何も身に着けていないように見えたからだ。
もちろんそんなことはなかったけれど、後姿もまた悩殺的だった。トップスはうなじと背中の中ほどで一か所ずつ留まっているだけで、滑らかで傷一つない背中がほとんどむき出しも同然。ショーツにしても布面積が際どく、彼女のボリューム豊かな美尻を半分ほどしか隠していない。
その桃尻の食い込みを後ろ手で直しながら、美亜は俯き加減に苦笑を浮かべた。
「これ、ホルターネックっていうんだけどね。思ったより露出度高くて、買ってから少し後悔しちゃった」
「それで昼間は着なかったのか?」
「う、うん。流石に攻め過ぎだと思ったし、シュン君も逆に嫌がるかなって。……まあ、自意識過剰かもだけど」
「いや、そんなことないよ。それで正解。というか、こんな格好の美亜、他の男なんかに見せたくない」
ストレートな本音を吐露すると、美亜は目を丸くした。
そして冗談とでも受け取ったのか、プッと吹き出す。
「ふふっ、なにそれ。独占欲強すぎない?」
「引いたか? でも、美亜がこんなに可愛いのが悪い」
「いくらなんでも大げさだって~」
「大げさなもんか。それくらい今の美亜は可愛くて、魅力的なんだって」
現に昼間、清楚なワンピース水着でも鼻の下を伸ばしていたヤツはいたのだ。田舎のビーチにこんな大胆な水着姿の美少女が現れれば、少なくとも一人や二人、下心をもって声をかけてくる不届き者がいないとは到底思えない。
よからぬ妄想が俊平の心を波立たせ、知らず鼻息が荒くなる。
美亜はそんな彼をたしなめるように、恋人の唇にしなやかな人差し指を押し当てた。
「シュン君、そこまで」
「……んぐぅ」
「ありがと。そこまで言ってくれるなんて、正直思ってなかった。……でも、今はもうやめよ? あたしの水着姿、こうしてシュン君に独り占めさせてあげてるんだから」
「俺が、美亜を独り占め……?」
その言葉をかみしめるように呟くうち、少しずつ焦燥の熱が収まっていった。
「そうだよ。今のあたしはシュン君だけのもの。だから、大丈夫」
道場の子どもたちをあやすような声音が、すぐそばで穏やかに響く。
気づけば美亜は、腕を伸ばせば抱きしめられる距離にいた。
俊平を見上げてくる、灰青の双眸。妖しく潤んだその目尻は下がり切り、口の端から覗いた舌先は期待に満ちたように唇を湿らせていた。
彼女が何を待っているのかなんて、今更訊くまでもない。
跳ねる心音を悟られぬようにそっと肩を抱き、わずかに綻んだ唇に口づけを落とす。
軽く、触れるだけのキスだった。なのに、しっとりとして弾力のある美亜のリップは、それだけで後引くような甘い痺れと熱をもたらしてくれる。
「ん、はぁ……。やっぱり、ちょっとお酒くさ~い」
「悪かったな、酔っ払いで」
わざとらしく眉をひそめ、そんな軽口をたたく美亜。
けれどその言葉に反して、彼女の腕は絡みつくように俊平の首筋に回る。
「でも、キス遠慮するのはもっとイヤ。ね、もっとしよ?」
そう言って、今度は美亜の方から。
精一杯背伸びする彼女と抱き締めあって、二度、三度と唇を重ねる。
「ぁむ……ちゅ、る……んっ、はぁ、れろ……じゅ、ちゅうぅ……」
互いを探り合うような口づけは、次第に深く、濃密になる。
ごくごく軽い酸欠状態が訪れ、それは全身をめぐるアルコールと共謀し、俊平の脳内にもやをかけていく。思考は今や何事もなすすべを持たず、ただ本能からくる衝動だけが彼を支配し始めていた。
「ぁん、……あは、くすぐったいよぉ、シュンくぅん」
クーラーの調子が悪いのだろう。美亜の背中は、しっとりと汗ばんでいた。
ビキニブラの細い紐だけがかろうじて着衣であることを示す、ほとんど剥き出しの背中。その微かな凹凸をなぞるように手指を滑らせていくと、美亜はむずがゆがって甘えた笑い声をあげる。
(こんなすべすべできれいな背中も……)
そのまま手を下ろしていくと、今度は水着に包まれた豊かな尻に指先が触れる。
いつのことだったか、美亜はこの大きめなお尻が引け目だとこぼしていたことがあった。
けれど、力を入れるままに形を変えていく尻たぶの弾力を堪能していると、彼女がこんなにも魅力的な部位をコンプレックスに思っていることがかえって恐ろしいほどだった。
(こんなに柔らかくていやらしいお尻も……)
いや、それだけじゃない。
抱きしめ、肌を合わせるたびにダイレクトに伝わる、柔らかな身体の起伏も。
汗とシャンプーの交じった花のような髪の匂いも。
いつしか甘く色づいていく息遣いだって。
(これをみんな、美亜の全部を、俺が独占していいんだ……っ)
一つ一つ上げていけばキリがなくなる。そのすべてが本能を逆撫で、沸々と湧き上がってくる情欲を煽りたてる。
「シュン君? うん、今開けるね」
俊平が美亜の部屋を訪ねたのは夜半前、皆が寝静まった頃のこと。
既に廊下の照明は消され、非常灯のみが点々と灯っている。そんな中で少し待っていると年代物の扉がギギィと音を立てて開き、ジャージ姿の可憐なハーフ美少女が顔を覗かせた。
「おつかれさま。ゴメンね、無理言って」
「大丈夫。俺も昼間ゆっくりさせてもらったし、夜は夜で思ったより早めに片が付いたしな。子どもらの寝つきが良くて助かったよ」
「朝から将棋、昼間は海、夜はバーベキューだもんね。イベント目白押しで、みんな疲れちゃったんだよ。……とりあえず、部屋に入って。ここも暑いし、ね?」
美亜に手を取られ、部屋の中へと招き入れられる。
その柔い指先は少しヒンヤリとして、俊平には心地よく感じられた。
知らず知らずのうちに鼓動が早くなっていたことに気づいたのは、そのときだった。
この密やかな逢瀬。
誘ったのは、美亜の方だった。
『私の部屋番号、シュン君は分かるよね?』
夕食時、子どもたちの世話もひと段落がついて、俊平は富永から託された話をいつ持ち掛けるか、そのタイミングをうかがっていた。
そんな折、隣に座った美亜が声を潜めて訊いてきたのだ。
『ああ、こないだ先生から回ってきた部屋割り表にあったからな。それがどうかしたか?』
『このあと、富永先生たちと飲むんでしょ。それが終わってからでいいから、部屋に来てほしいの。いいかな?』
『……お、おう。わかった』
彼女は俊平の返答に満足したように微笑んで、席を立つ。
その頬に仄かに朱が差していたのを、俊平は見逃すことができなかった。
(期待していい、のか……?)
そんな邪な考えが浮かんだのは否定できない。
やがて満足した子どもたちが捌け、なし崩し的に大人たちの酒宴が始まってからもそれは変わらず。頬を染めた美亜の表情ばかりが脳裏にちらついて、俊平はまともに酒の味もわからないほどだった。
「……あれ、どうしたんだ」
自分を待つ間、勉強でもしていたのだろうか?
壁際に据えられた机、色あせたスタンドランプが点きっぱなしなのに目が行く。すると、フッと部屋の明かりが消えた。
振り返ると、壁のスイッチに手を伸ばしている美亜。
彼女は唇をかみ、少しためらうように視線をさまよわせていたが、やがて意を決したようにジャージのジッパーを引き下ろした。
「お、おい!?」
美亜の思ってもみなかった行動に思考がフリーズし、視線をそらさねばならないことも忘れてしまう。遠くに聞こえる波のさざめきに消えいってしまいそうな微かな衣擦れの音さえ、今この時だけは妙に生々しく耳に残った。
時間にすれば、ほんの十秒ほどのストリップ・ショー。恥じらいの抜けきれない手つきでたどたどしくも成し終えると、美亜はそれがよく見えるように恋人の下へ歩み出た。
「どうかな、この水着。ちょっと頑張りすぎちゃったかもだけど」
「……おおぉ、美亜、それって」
スタンドランプが淡く照らしだした美亜の姿に、俊平は思わず息をのんだ。
彼女が身にまとっていたのは、水着だった。
それも昼に着ていた可愛らしいワンピースではなく、大人っぽい黒ビキニ。
張りのあるバストをふわりと包む大胆な三角形の布地に、下腹部から太ももまでのなだらかな曲線を際立たせるローライズショーツ。その腰紐も編み紐状になっており、透けるように覗いた白い地肌が際どい色気を醸し出している。
もしも昼間こんな水着を着ていたら、ビーチの視線は独り占めだっただろう。美亜のビキニ姿はそれほどまでにセクシーで、犯罪的といえるほど魅力に溢れていた。
「……あのさ、黙ってないでなんとか言ってよ」
唖然としたままの俊平に、唇を尖らせる美亜。
そんな拗ねた様子すらあまりにキュートが過ぎて、反射的に言葉が出てこない。
「ああ、いやごめん。……その、似合ってる、すごく。思わず見とれるぐらい可愛いよ。でも、昼間着てたやつと違うよな。もしかして俺に見せるために着てくれた、とか?」
「他に理由があると思う?」
「だよな。はは、ありがとう。嬉しいよ、本当に」
朝、清佳が別れ際に囁いた言葉の意味がようやく分かった気がした。
泳ぐための普通の水着とは別に準備した、俊平のためだけの特別な水着。
能天気なようでいて実は何事につけ考え込みがちな美亜のことだ。きっとこの水着を選ぶのにも、だいぶ悩んだに違いない。さっきから少しつっけんどんな物言いも、思った以上に大胆にビキニを身にまとう気恥ずかしさからくるものであるのは、彼女がジャージを脱いでからずっと目を俊平と合わせてくれないことに気づけば納得がいく。
そうまでして自分を喜ばせようとしてくれている。そのいじらしさが、思わず抱きしめたくなるほどに嬉しかった。
「あとはその、背中の方はこんな風になってるんだけど……」
まだ何か見せたいものがあるのか。美亜はそう言って、その場でくるりと背を向けた。
と、俊平はまたそこで驚く。一瞬、彼女が何も身に着けていないように見えたからだ。
もちろんそんなことはなかったけれど、後姿もまた悩殺的だった。トップスはうなじと背中の中ほどで一か所ずつ留まっているだけで、滑らかで傷一つない背中がほとんどむき出しも同然。ショーツにしても布面積が際どく、彼女のボリューム豊かな美尻を半分ほどしか隠していない。
その桃尻の食い込みを後ろ手で直しながら、美亜は俯き加減に苦笑を浮かべた。
「これ、ホルターネックっていうんだけどね。思ったより露出度高くて、買ってから少し後悔しちゃった」
「それで昼間は着なかったのか?」
「う、うん。流石に攻め過ぎだと思ったし、シュン君も逆に嫌がるかなって。……まあ、自意識過剰かもだけど」
「いや、そんなことないよ。それで正解。というか、こんな格好の美亜、他の男なんかに見せたくない」
ストレートな本音を吐露すると、美亜は目を丸くした。
そして冗談とでも受け取ったのか、プッと吹き出す。
「ふふっ、なにそれ。独占欲強すぎない?」
「引いたか? でも、美亜がこんなに可愛いのが悪い」
「いくらなんでも大げさだって~」
「大げさなもんか。それくらい今の美亜は可愛くて、魅力的なんだって」
現に昼間、清楚なワンピース水着でも鼻の下を伸ばしていたヤツはいたのだ。田舎のビーチにこんな大胆な水着姿の美少女が現れれば、少なくとも一人や二人、下心をもって声をかけてくる不届き者がいないとは到底思えない。
よからぬ妄想が俊平の心を波立たせ、知らず鼻息が荒くなる。
美亜はそんな彼をたしなめるように、恋人の唇にしなやかな人差し指を押し当てた。
「シュン君、そこまで」
「……んぐぅ」
「ありがと。そこまで言ってくれるなんて、正直思ってなかった。……でも、今はもうやめよ? あたしの水着姿、こうしてシュン君に独り占めさせてあげてるんだから」
「俺が、美亜を独り占め……?」
その言葉をかみしめるように呟くうち、少しずつ焦燥の熱が収まっていった。
「そうだよ。今のあたしはシュン君だけのもの。だから、大丈夫」
道場の子どもたちをあやすような声音が、すぐそばで穏やかに響く。
気づけば美亜は、腕を伸ばせば抱きしめられる距離にいた。
俊平を見上げてくる、灰青の双眸。妖しく潤んだその目尻は下がり切り、口の端から覗いた舌先は期待に満ちたように唇を湿らせていた。
彼女が何を待っているのかなんて、今更訊くまでもない。
跳ねる心音を悟られぬようにそっと肩を抱き、わずかに綻んだ唇に口づけを落とす。
軽く、触れるだけのキスだった。なのに、しっとりとして弾力のある美亜のリップは、それだけで後引くような甘い痺れと熱をもたらしてくれる。
「ん、はぁ……。やっぱり、ちょっとお酒くさ~い」
「悪かったな、酔っ払いで」
わざとらしく眉をひそめ、そんな軽口をたたく美亜。
けれどその言葉に反して、彼女の腕は絡みつくように俊平の首筋に回る。
「でも、キス遠慮するのはもっとイヤ。ね、もっとしよ?」
そう言って、今度は美亜の方から。
精一杯背伸びする彼女と抱き締めあって、二度、三度と唇を重ねる。
「ぁむ……ちゅ、る……んっ、はぁ、れろ……じゅ、ちゅうぅ……」
互いを探り合うような口づけは、次第に深く、濃密になる。
ごくごく軽い酸欠状態が訪れ、それは全身をめぐるアルコールと共謀し、俊平の脳内にもやをかけていく。思考は今や何事もなすすべを持たず、ただ本能からくる衝動だけが彼を支配し始めていた。
「ぁん、……あは、くすぐったいよぉ、シュンくぅん」
クーラーの調子が悪いのだろう。美亜の背中は、しっとりと汗ばんでいた。
ビキニブラの細い紐だけがかろうじて着衣であることを示す、ほとんど剥き出しの背中。その微かな凹凸をなぞるように手指を滑らせていくと、美亜はむずがゆがって甘えた笑い声をあげる。
(こんなすべすべできれいな背中も……)
そのまま手を下ろしていくと、今度は水着に包まれた豊かな尻に指先が触れる。
いつのことだったか、美亜はこの大きめなお尻が引け目だとこぼしていたことがあった。
けれど、力を入れるままに形を変えていく尻たぶの弾力を堪能していると、彼女がこんなにも魅力的な部位をコンプレックスに思っていることがかえって恐ろしいほどだった。
(こんなに柔らかくていやらしいお尻も……)
いや、それだけじゃない。
抱きしめ、肌を合わせるたびにダイレクトに伝わる、柔らかな身体の起伏も。
汗とシャンプーの交じった花のような髪の匂いも。
いつしか甘く色づいていく息遣いだって。
(これをみんな、美亜の全部を、俺が独占していいんだ……っ)
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